グラム染色は、1884年にデンマークの学者ハンス・グラムによって発明された細菌類を色素によって染色する方法の一つで、細菌を分類する基準となる検査方法です。抗菌薬の決定や、治療効果の判定に大きな根拠となる重要な検査で昨今、世界中で抗菌剤(抗生物質など)の効かない耐性菌が問題になっていますが、その原因の一つは闇雲な抗菌剤の乱用にあると言われています。ある海外での調査では、動物病院で処方される抗生物質の約50%は不必要だったり、誤った種類が処方されているという結果が出ています。グラム染色を行うことで、より原因菌に近づくことができ、効果的な抗菌剤を選択できる可能性が高くなります。
但し、残念ながら動物病院ではあまり行われていない検査とされています。当院では耐性菌予防のためにも積極的にグラム染色を行っています。
グラム染色検査:Gram staining
・グラム染色検査はどんな検査?
膿、糞便、尿、喀痰(動物では採取が難しい)などを採取して、細菌感染の存在とその細菌の大まかな分類をする検査です。
グラム染色によって細菌類は大きく、紫色に染まるグラム陽性菌、紫色に染まらず赤く見えるものをグラム陰性菌というふうに2種類に分類します。
グラム陽性菌(ブドウ球菌) | グラム陰性菌(大腸菌) |
さらにその形から球形をした球菌、細長い形をした桿菌に分類するが一般的です。
グラム染色を行うことで、病気の原因となっている細菌をグラム陽性球菌、グラム陽性桿菌、グラム陰性球菌、グラム陰性桿菌の4つのグループに分けられます。これにより原因となっている菌を特定したり、厳密に特定できなくても大体予測したりすることができ、効果的な抗菌剤を選ぶ手助けになります。
・グラム染色検査で何が分かるの?
前述のように細菌が存在した場合、グラム陽性、グラム陰性がわかり、さらにその形から球菌、桿菌に分類できます。これにより大まか菌の推定と効果的な抗菌剤の目安をつけることができます。
主な解釈
本来なら細菌感染が疑われた場合、培養検査や感受性試験という検査を全てに行いたいのですが、それでは時間と費用が膨大にかかってしまいます。かといって大まかな菌の予測もなしにできるだけ多くの菌に効果のある抗菌剤を最初から使うことが耐性菌の出現の一つの原因だと言われています。そこで、病院内でも比較的安価で迅速にできるグラム染色が推奨されているのです。もちろんグラム染色をしたからといって全ての菌が分かるわけではありません。しかし、あるていどの目安をつけることができ、闇雲に抗菌剤を用いることを予防できます。
(1)グラム陽性球菌
ブドウ球菌、腸球菌、連鎖球菌 など
(2)グラム陽性桿菌
あまり見られません。
(3)グラム陰性球菌
ナイセリア、モラクセラ、パスツレラ(球桿菌)など
(4)グラム陰性桿菌
大腸菌、プロテウス・ミラビリス、緑膿菌、シュードモナス(緑膿菌以外)、エンテロバクター、クレブシエラなど
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検査時間
染 色:10分程度
検査結果:院内検査なら15分程度
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注意事項
ー採取する材料によっては判定できないこともあります。
ー抗菌剤を用いる場合、より詳しくは細菌培養検査、感受性試験などを行うことが推奨されます。
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動物医療保険をお持ちの方はグラム染色検査前に保険証を提示してください!
壱岐動物病院ではすべての動物医療保険がご利用いただけます。窓口精算が可能なのはアニコム損保、アイペットとなります。ペットも医療保険の時代です。もちろん「グラム染色検査」も保険適応されます。
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参考文献・資料等
- 抗菌薬適正使用マニュアル
- 抗菌薬インターネットブック
- 第2版 感染症診断に役立つグラム染色
- 愛玩動物における 抗菌薬の 慎重使用の手引き 2020
- 抗菌薬の薬理学的な考え方と指標
- Reduced rates of antimicrobial resistance in Staphylococcus intermedius group and Escherichia coli isolated from diseased companion animals in an animal hospital after restriction of antimicrobial use
- 犬と猫の日常診療のための抗菌薬治療ガイドブック
- アンチバイオグラム作成ガイドライン
- Multidrug-resistant staphylococcal skin infections
- グラム染色を用いた感染症診療支援について
- Antibiotic Use Guidelines for Companion Animal Practice
- Recommendations for approaches to meticillin-resistant staphylococcal infections of small animals: diagnosis, therapeutic considerations and preventative measures.
- Antimicrobial use Guidelines for Treatment of Respiratory Tract Disease in Dogs and Cats: Antimicrobial Guidelines Working Group of the International Society for Companion Animal Infectious Diseases
- INTERNATIONAL SOCIETY FOR COMPANION ANIMAL INFECTIOUS DISEASES (ISCAID)
- 原田 和記先生による抗菌剤セミナー「犬と猫の抗菌薬治療のために備えておく必須知識」 第1回 ここから始まる!抗菌薬治療に必要不可欠な知識
- 原田 和記先生による抗菌剤セミナー「犬と猫の抗菌薬治療のために備えておく必須知識」 第2回 臨床上必要なグラム陰性菌の特徴を一気におさらい 〜腸内細菌科細菌 + 緑膿菌
- 原田 和記先生による抗菌剤セミナー「犬と猫の抗菌薬治療のために備えておく必須知識」 第3回 臨床上必要なグラム陽性菌の特徴を一気におさらい 〜ブドウ球菌、腸球菌、連鎖球菌〜
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