てんかん(癲癇)

てんかん(癲癇)の治療

 てんかんの原因が分かる場合には、その治療を行ないます。また、てんかんに対しては抗てんかん薬の投与により発作を抑えることができます。注意して頂きたいのは、抗てんかん薬はてんかんを治すための薬ではなく、発作を起こりにくくするための薬です。薬の投与回数や量などは発作の頻度や状態などによって異なります。また、抗てんかん薬にはいくつかの種類があり、効果を見ながら量や種類を調整する必要もあります。時にはすべての抗てんかん薬でも効果がない場合があります。

注意:多くの抗てんかん薬は催奇形が報告されているので、妊婦さんやこれから妊娠を考えている方は扱わないようにしてください。また、投与している動物のオシッコはペットシーツにしみこませて処分するようにしてください。

 2019年6月より特発性てんかんの栄養管理をサポートする専用ドッグフードが国内でも発売されました。薬と併用することで14%で発作がなくなり、48%で発作が半減、71%で発作頻度が減少したと報告されていますので、使ってみる価値はあると思います。

▲上記のてんかん用療法食は当院でも処方可能です。仔犬、成犬、老齢犬などすべてのライフステージで使用可能です。当院での診察・診断・処方後オンラインでのご購入となります。詳しくは当院にお尋ね下さい。

てんかん(癲癇)の予防

 原因不明のてんかん発作の発症を完全に防ぐことは難しいと思われます。そのため、発作の回数の減少や発作の持続時間の短縮、発作の程度を軽減することを目的として、抗てんかん薬でコントロールしていきます。
 反復(繰り返し起こる)するてんかん発作は、脳の損傷が蓄積されて、発作を重ねるごとに重症化する傾向がありますので、けいれんを起こした場合は早急に当院にご相談頂くか、獣医師の診察を必ず受けてください。発作が3ヶ月に1回以下にコントロールできれば寿命に影響はないとする報告がりますのでまずは診察を受けることが重要です。

てんかん(癲癇)の看護/その他

 てんかんを持っていると認知症が発症しやすいとの報告があります。また、何度も起こるてんかん発作を治療しないと、脳の損傷が蓄積されて、発作を重ねるごとに重症化する傾向があります。

 抗てんかん薬の投薬を行っている場合、発作が現れなくなっても、独断で投薬を中止しないようにしましょう。投薬期間や投薬時間、投薬量などをきちんと守ることが重要となります。勝手に薬を止めると症状が悪化する可能性がります。通常、抗てんかん薬は生涯飲ませなければなりません。

 抗てんかん薬でコントロールができている状態(目標は1ヶ月以上てんかん発作が起こらない状態(可能であれば3ヶ月以上)をキープできるかどうか)であれば予後は良好となりますが、重積発作が続くような状態の場合は予後が不良となることがあります。

 てんかん発作は、ストレスなどの精神的な問題、天候などの周囲の環境が引き金となって発生することもあるといわれます。ストレスなど負担をかけないよう生活することも大切です。

てんかん発作の種類を見分ける重要な点は、発作中に意識があるかどうか?、全身のけいれんを起こしているのかどうか?の2点です。また、発作が起こった場合以下のような事柄を記録しておいていただけると診断や治療の助けになります。

  • 発作は何月何日何時何分頃はじまり、何時何分頃終わったか?(または何分くらい続いたか?)
  • 発作を起こした時は何をしていたか? 発作を起こす前に普段と変わった行動をとったか?
  • 発作中は意識はあったか?(声をかけて動物が反応するか観察する)
  • 発作の後はどうなったか?
  • 回復するのに何分くらいかかったか?
    ※余裕があれば発作の状況をスマートフォーンなどで動画を撮影して見せてもらえると診断に役立ちます。

 次のような場合は早急に当院にご連絡いただくか、獣医師の診察を受けてください。
 ▷群発発作:24時間以内に2回以上の全身性痙攣発作が起こる。
 ▷てんかん重積:”休み”なく2回以上の発作が起こる、または1回の発作が5分以上続く。

毎年3月26日はAnimal Purple Dayと言って動物のてんかんを知ってもらう日です!

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動物医療保険をお持ちの方は診察前に保険証を提示してください!

library_books 参考文献・資料等

  1. International Veterinary Epilepsy Task Force Consensus Reports
  2. International Veterinary Epilepsy Task Force’s current understanding of idiopathic epilepsy of genetic or suspected genetic origin in purebred dogs
  3. 伴侶動物治療指針 Vol.7; 154-158:犬の特発性てんかんに対するゾニサミド療法
  4. 犬の内科診療 Part1; 473-478:てんかん重積
  5. 猫の臨床指針 Vol.3; 196-201:てんかん
  6. 特発性てんかん
  7. Investigating the potential for seizure prediction in dogs with idiopathic epilepsy: owner-reported prodromal changes and seizure triggers
  8. Treatment Plans for Routine and Refractory Canine Epilepsy
  9. Risk factors associated with short-term mortalityand recurrence of status epilepticus in dogs


<1>.原発性てんかんが疑われた猫の治療および長期的なフォロー・アップ
<2>.特発性てんかんの犬における必須脂肪酸補給の効果: 臨床的試み
<3>.癲癇重積状態の後にクリューバー・ビューシー症候群様の行動と辺縁系の両側性壊死を示した犬(2005)
<4>.フェノバルビタール治療を行った癲癇犬の血清中アルカリフォスファターゼ分画プロファイル
<5>.犬の難治性特発性てんかんに対するゾニサミド療法に関する前向き研究
<6>.発作を起こした小動物患者に対する緊急処置
<7>.犬のてんかんの薬物的管理
<8>.犬の難治性特発性てんかんに対するゾニサミド治療
<9>.健康なビーグルに対する臭化カリウムの高用量経口投与後における臭化物の薬物動態学および毒性
<10>.猫の発作の管理について

[WR21,VQ21:]

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この記事を書いた人

福山達也