便秘:Constipation

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便秘とは?

愛犬や愛猫が何日も排便をしていなかったり、排便時にいきんで苦しそうにしている姿を見かけたことはありませんか?それは「便秘(べんぴ)」と呼ばれる状態かもしれません。便秘とは、通常よりも排便の回数が減ったり、便が硬くなって出しづらくなったりすることで、排便が困難になる症状です。さらに進行すると「重度便秘」と呼ばれ、腸内に糞便が強く詰まり、自然には排泄できないほど深刻な状態になることもあります。便秘が長引くと、大腸が広がり「巨大結腸症」という慢性的な疾患へと進行することもあります。

便秘の原因

便秘には実にさまざまな原因が関係しています。脱水によって腸の中の水分が少なくなると便が硬くなり、腸の動きも鈍くなります。また、骨や被毛などの消化できないものを飲み込んでしまうと腸内で詰まりが生じることがあります。加齢による筋力の低下や、関節の痛みによる排便姿勢の制限、前立腺肥大などの物理的な圧迫も原因となります。神経の異常やホルモンバランスの乱れ、腸の動きが鈍る病気、薬の副作用なども便秘の背景には隠れています。愛犬・愛猫にとっての「排便」は、実はとても繊細で複雑な仕組みで成り立っているのです。

便秘の症状

便秘の典型的なサインは、数日間排便がみられない、何度もトイレに行くけれども便が出てこない、またはいきみながら痛がるなどの行動です。しかし、ペットオーナーが見落としがちなのは、食欲の低下元気の消失嘔吐体重減少といった全身症状が便秘に伴って現れることです。また、肛門から水っぽい粘液や血が混じった便が出ることもあり、これは一見「下痢」と誤解されやすい症状です。特に高齢の愛犬・愛猫では、こうした異変に早く気づくことが健康維持に大きく関わります。

便秘の診断/検査

動物病院では、まず詳しい問診と身体検査が行われます。そのうえで、血液検査血液化学検査尿検査腹部X線検査超音波検査などを通じて、便秘の重症度や背景にある病気を調べます。特にX線検査では、腸内に便がたまっているかどうか、骨盤の異常や腫瘍がないかなどが確認されます。慢性的な便秘や重度便秘が疑われる場合は、内視鏡による腸の観察や、必要に応じて組織の検査を行うこともあります。便秘の治療では、ただ便を出すだけでなく、その原因を明確にすることが非常に重要です。

便秘の治療

便秘の治療は、その原因や重症度によって異なります。軽度の場合は、食事の改善や水分摂取の増加、運動の促進で改善がみられることがあります。一方、重度の便秘では、浣腸や薬の使用、場合によっては全身麻酔下での手動による便の除去が必要になることもあります。慢性化している場合や、巨大結腸症に進行しているケースでは、外科手術によって一部の結腸を切除する治療も選択肢となります。治療の成功には、再発を防ぐための長期的な管理が欠かせません。

便秘の予防

便秘の予防には、何よりも「水分」と「運動」が大切です。特にドライフード中心の食生活をしている愛犬・愛猫では、水分摂取を意識的に増やすことが重要です。缶詰フードやぬるま湯を加えた食事、複数の水飲み場の設置などが有効です。また、骨や消化しづらいものを与えないよう注意し、ストレスや環境の変化が大きいときは排便状況をよく観察するようにしましょう。便秘になりやすい体質の子は、動物病院での定期的な健康チェックも効果的です。

便秘の看護/その他

日頃から便の回数や硬さ、色、においなどに注意して観察することが便秘の早期発見につながります。特に数日間排便がなかったり、いきむ様子がある場合には早めに動物病院にご相談ください。便秘が慢性化すると治療も複雑になりやすいため、早期の対応が予後を大きく左右します。自宅では、整腸作用のある食物繊維(カボチャなど)を食事に加えることも効果的ですが、自己判断で市販の下剤や浣腸を使用することは避け、必ず当院にごそうだんください。

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この記事を書いた人

福山達也