鉄欠乏性貧血:Iron-Deficient Anemia

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鉄欠乏性貧血とは?

鉄欠乏性貧血とは、体内の鉄が不足することによって引き起こされる貧血の一種です。鉄は赤血球の主成分であるヘモグロビンの合成に必要なミネラルであり、酸素を全身に運ぶ重要な役割を担っています。鉄が不足すると、十分なヘモグロビンが作られず、結果として赤血球の数が減少し、酸素の供給が不十分になります。愛犬・愛猫が鉄欠乏性貧血になると、元気がなくなったり、運動を嫌がったりすることがあり、進行すると重篤な症状を引き起こすこともあります。

鉄欠乏性貧血の原因

鉄欠乏性貧血の主な原因は、慢性的な出血、栄養不足、または鉄の吸収障害です。慢性的な出血には、消化管潰瘍や腫瘍、寄生虫感染(ノミや腸内寄生虫)、長期間にわたる小規模な出血などが含まれます。愛犬・愛猫の血尿、黒色便(メレナ)、血便、鼻出血が続く場合は注意が必要です。栄養不足は、特に手作り食やバランスの取れていない食事を与えている場合に見られることがあり、成長期の子犬・子猫ではより顕著に影響を受けます。また、鉄の吸収障害は、慢性腸疾患や門脈体循環シャントなどの特定の病気によって引き起こされることがあります。

鉄欠乏性貧血の症状

鉄欠乏性貧血の症状は、貧血の進行度合いによって異なります。初期の段階では目立った症状がないこともありますが、進行すると粘膜の蒼白(特に歯茎や結膜)、元気消失食欲不振体重減少、頻呼吸や頻脈などが見られることがあります。また、異嗜(異常なものを舐めたり食べたりする行動)が見られることがあり、特にペットオーナーが気づきにくいポイントとなります。さらに、消化器症状として嘔吐下痢、血便が出ることもあります。慢性的に進行する場合は、毛ヅヤの低下や体重増加不良も見られることがあります。

鉄欠乏性貧血の診断/検査

鉄欠乏性貧血の診断には、血液検査血液化学検査が不可欠です。特に、ヘマトクリット(HCT)、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球ヘモグロビン濃度(MCHC)などの指標を確認することで、貧血のタイプを特定することができます。鉄欠乏性貧血では、小球性低色素性貧血が典型的に見られます。また、血清鉄、総鉄結合能(TIBC)、フェリチンの測定によって、体内の鉄貯蔵量を評価することが可能です。さらに、慢性的な出血の原因を特定するために、糞便検査超音波検査、内視鏡検査などが必要になる場合もあります。

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この記事を書いた人

福山達也