逆くしゃみ:Reverse Sneeze

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逆くしゃみとは?

逆くしゃみとは、愛犬・愛猫が鼻咽頭や後鼻腔に刺激を受けたときに、閉じた声門に対して強い吸気努力を伴い、発作的な呼吸音を生じる現象です。通常のくしゃみが前鼻腔の刺激により前方へ強い呼気を発生させるのに対し、逆くしゃみは後方の刺激によって急激な吸気が促され、発作時には首を伸ばし頭を後方に引く姿勢をとることが特徴です。この症状は主に犬に見られるものですが、猫でもまれに発生することがあります。

逆くしゃみの原因

逆くしゃみは、愛犬・愛猫の鼻腔、咽頭、あるいは副鼻腔への何らかの刺激が引き金となって発生します。具体的には、アレルギー反応や環境中のほこり、化学物質、タバコの煙などの刺激物が影響する場合や、草や植物の破片などの異物が侵入することによって引き起こされることが知られています。また、鼻炎や感染症、腫瘍、解剖学的異常(短頭種特有の気道閉塞など)も原因となり得ます。特に犬ハイダニが原因の場合もあり、これらの寄生虫による刺激が逆くしゃみの発作を誘発するため、適切な管理が重要となります。

逆くしゃみの症状

逆くしゃみの発作は、急激かつ強い吸気音を伴って現れ、発作中は愛犬・愛猫が首を伸ばし、頭を後方に傾けるなどの特徴的な姿勢を示すことが多いです。発作の持続時間は通常数秒から数分程度で、発作後はすぐに元の呼吸状態に戻ることがほとんどですが、その際の呼吸音は大変大きく、ペットオーナーの方々が呼吸困難と誤解されることもあります。さらに、逆くしゃみとともにくしゃみや鼻汁、いびきのような呼吸音が認められる場合もあり、これらは基礎となる鼻腔や咽頭の異常、あるいは他の呼吸器疾患が影響している可能性を示唆するため、普段の呼吸状態の変化に十分ご注意いただく必要があります。

さらに、発作の様子を携帯電話などでビデオ撮影しておくと、獣医師が診断する際の重要な手がかりとなり、より正確な判断に役立つため、可能であれば撮影しておくことをおすすめします。

逆くしゃみの診断/検査

逆くしゃみの診断は、ペットオーナーの方から得られる病歴や発作の様子の観察、愛犬・愛猫の臨床所見の確認をもとに行われます。発作が短期間で収まる一過性の現象である場合には、特に詳細な検査を行わずとも診断がつくことが一般的ですが、もし発作の頻度が高くなったり、持続時間が長引いたり、または他の呼吸器症状が見受けられる場合には、口咽頭検査や後鼻鏡検査、レントゲン検査などを実施して、異物の存在や鼻腔・咽頭の解剖学的異常、さらには基礎疾患の有無を確認することが求められます。これらの検査は、愛犬・愛猫の状態を正確に評価し、適切な治療方針を決定するために重要な役割を果たします。

逆くしゃみの治療

逆くしゃみ自体は一過性であり、発作が自然に収まることがほとんどであるため、通常は特別な治療を必要としません。発作が起こった際には、軽く喉の部分をマッサージしたり、両方の鼻孔を一時的に閉じることで嚥下を促し、痙攣を和らげる方法が有効な場合もあります。しかし、愛犬・愛猫に逆くしゃみが頻繁に発生し、その背景にアレルギーや感染症、解剖学的な問題、または犬ハイダニなどの寄生虫が疑われる場合には、その原因に対する治療を優先する必要があります。場合によっては、抗ヒスタミン薬やコルチコステロイドの使用が検討され、個々の症例や症状の重症度に応じた適切な治療法が選択されます。全体として、基礎疾患がなければ逆くしゃみの予後は良好で、治療は最小限で済むことが多いです。

逆くしゃみの予防

逆くしゃみそのものに対する直接的な予防策は確立されていないものの、愛犬・愛猫の鼻腔や咽頭に刺激を与える要因をできるだけ除去することが、発作の頻度を低減させる上で有効です。特に、犬ハイダニなどの寄生虫が原因の場合は、動物病院で処方されるノミ・ダニ駆除剤を定期的に使用することで、これらの寄生虫の感染を防ぎ、結果として逆くしゃみの発作を抑制する効果が期待できます。また、環境中のほこりや化学物質、タバコの煙などの刺激物にも注意を払い、室内の清浄化や適切な換気を心がけることが重要です。

逆くしゃみの看護/その他

ペットオーナーの方々は、愛犬・愛猫が逆くしゃみを起こした際には焦らず落ち着いて対処することが大切です。発作中は、無理に制止するのではなく、軽く喉をマッサージするか、一時的に鼻孔を閉じることで嚥下を促す方法を試みると良いでしょう。また、発作の頻度や持続時間、さらにはくしゃみ、鼻汁、異常な呼吸音などのその他の症状について、日々の変化を記録しておくことが推奨されます。これらの情報は、獣医師による診察の際に基礎疾患の有無を判断するための重要な手がかりとなるため、早期発見や適切な治療につながります。さらに、愛犬・愛猫の生活環境を整えるために、室内の空気清浄や定期的な掃除、十分な換気などを心がけることが、刺激物の除去やアレルゲンの低減に寄与し、逆くしゃみの発生リスクを下げる助けとなります。

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この記事を書いた人

福山達也