犬伝染性肝炎(CAV-1:犬アデノウイルス1型感染症)とは?
犬伝染性肝炎(いぬでんせんせいかんえん)とは、アデノウイルスの仲間の犬アデノウイルス1型(CAV-1)というウイルスの感染によって、おもに肝臓の炎症(肝炎)が起こるイヌ科動物の感染症です。このウイルスは世界中に分布しています。
感染動物の糞尿、唾液を介して経口、経鼻的に感染が成立します。特に1歳以下の犬では致死率が高い病気です。成犬では不顕性感染を示すことが多い病気です。
おもに嘔吐(吐く)や発熱、下痢などの症状が現れ、重症の場合は命に関わることもありますが、現在は有効なワクチンがあります。
犬伝染性肝炎(CAV-1:犬アデノウイルス1型感染症)の原因
原因は犬アデノウイルス1型の感染です。
このウイルスは感染した犬の分泌物(涙や鼻水、唾液尿、便など)のすべてに含まれ、これらを舐めたり、汚染された食器を使用することで感染します。
ウイルスは外部環境での抵抗力が強いため、室温でも一定期間は感染性を保ち、数日から数カ月生存することができます。したがって回復した犬の尿中に少なくとも6〜9ヵ月排泄され、ほかの犬への感染源となります。
犬伝染性肝炎(CAV-1:犬アデノウイルス1型感染症)の症状
この病気の症状は軽いものから重いものまで様々です。2~8日の潜伏期間を経て、軽症の場合は軽い発熱や鼻水が出る程度ですが、肝炎によっり、嘔吐や高熱(40℃前後:感染後4〜7日)、下痢、腹痛など一見すると他の病気と同じような症状を示します。
重度の場合は肝臓の機能不全による肝性脳症や低血糖からくる神経症状(無気力、虚脱、昏迷、昏睡、痙攣発作など)や、出血傾向(皮膚の点状〜斑状の出血、鼻血、下血など)が見られ、ときに脳炎が起こることもあります。
特にワクチン未接種の犬、とりわけ仔犬が感染した場合は、死亡するケースが多く見られます。また、他のウイルスと混合感染すれば致死率がより高くなります。致死率90%以上、多くは12~24時間以内に死亡するという報告もあるほどです。
なお、回復期にはブルーアイ(角膜が浮腫を起こし、青白く濁って見える)や前部ブドウ膜炎が見られます。これは通常回復していきますが、時に緑内障や角膜潰瘍に進行することがあります。
犬伝染性肝炎(CAV-1:犬アデノウイルス1型感染症)の診断/検査
通常はワクチン接種歴や症状、血液検査(肝酵素値の上昇)などから疑って治療を開始します。確定診断には外部検査機関に血液や尿を送って遺伝子検査や抗体検査などを行う必要があります。
犬伝染性肝炎(CAV-1:犬アデノウイルス1型感染症)の治療
犬伝染性肝炎の有効な治療薬はありません。そのためウイルス感染によってダメージを受けた肝臓の細胞が再生されるまでの間、積極的な点滴や輸血、食事療法などの支持療法をおこないます。
また、細菌による二次感染を防ぐため抗生剤の投与が行われることもあります。
犬伝染性肝炎(CAV-1:犬アデノウイルス1型感染症)の予防
犬伝染性肝炎はワクチン接種で予防できます。仔犬を飼い始めたらすぐに動物病院で健康診断を受け、適切なワクチンの接種時期や回数について相談するようにしましょう。また、成犬や老犬になってからも、定期的にきちんとワクチン接種を行いましょう。
犬伝染性肝炎(CAV-1:犬アデノウイルス1型感染症)の看護/その他
このウイルスは、環境中でも比較的強く,数日から数カ月生存することができます。そのため、感染犬との直接の接触がなくても感染してしまう危険があります。
感染した犬は、速やかに隔離し、分泌物や排泄物を徹底して消毒することが重要です。ただ、ウイルスは消毒にも比較的強く、アルコールや石鹸、クレゾールなどは無効です。アンモニウム塩以上の強さのものでは死滅し、56℃でも死滅するとされていますが、ウイルス量が多い場合は60℃で1時間加熱しても完全に死滅させることはできません。塩素系消毒薬が比較的有効です。
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参考文献・資料等
- 犬の内科診療 Part2; 250-255:犬伝染性肝炎