てんかん(癲癇)

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

てんかん(癲癇)とは?

 癲癇(てんかん)とは、発作的に繰り返される全身性の痙攣(けいれん)や意識障害を主な症状とする脳疾患で、繰り返し起こります。犬において最も一般的な発作の原因といわれています。てんかん発作の発症は5歳になるまでみられないこともありますが、一般に6ヶ月〜3歳齢の間に初めて起こることが多いようです(一次性てんかん)。
 犬ではの発症率は0.55〜2.3%ですから100頭に1頭程度、猫では0.3〜1.0%ですので、100頭に1頭以下くらいです。

てんかん(癲癇)の原因

 てんかんは大きく分けて、真性(一次性)てんかん 、症候性(二次性)てんかん、潜因性てんかんの3つに分けられます。
 真性(一次性)てんかんは原因不明で、遺伝的素因が関与するといわれています。これは「特発性てんかん」ともいわれます。「特発性」とは「原因がわからない」という意味です。犬のてんかんのほとんどはこの特発性てんかんです。特にアイリッシュ・セッター、イタリアン・グレーハウンド、イングリッシュ・フォックスハウンド、キースホンド、シェットランド・シープドッグ、シベリアン・ハスキー、ジャーマン・シェパード・ドッグ、トイ・プードル、パグ、ビーグル、ボストン・テリア、ポメラニアン、ミニチュア・ダックスフンド、ラブラドール・レトリバー、テリア系犬種(特にボストン・テリア、レークランド・テリア)、レトリバー系犬種は特発性てんかんの遺伝的な要素を持っていることが知られています[2]
 症候性(二次性)てんかんの原因は、脳腫瘍、脳炎、水頭症、外傷による脳障害など脳疾患の経過中起こるとされています。
 潜因性てんかんは、症候性てんかんが疑われるものの、各種検査上明らかな異常が認められず真性てんかんに見えるものとされています。

てんかん(癲癇)の症状

 発作には全身性の発作(大発作)と軽度な発作で意識が消失しないもの(小発作、部分発作)があります。発作の前兆としてみられる症状と発作の症状には次のようなものがみられます。発作の前兆は5〜30分ほど前から見られることが多いようです。
  • 飼い主にしがみつく
  • 不安で落ち着きがない
  • 怖がる
  • 流延(よだれが出る)
  • 口をくちゃくちゃさせる(チューインガム発作)
  • 手足や顔面等の一部に痙攣を起こす
  • 全身痙攣を起こす
  • 意識消失
  • 後弓反張(後ろにのけぞる)
  • 遊泳運動(手足を無意識にバタバタさせる)
  • 一定の所で自分の尾を追いかけてくるくる回る(テイルチェイシング)

発作中には、尿や便をもらしてしまうこともあります。発作が起きると一時的に意識がなくなることもありますが、通常は数秒〜数分(3分未満)で終わり、その後は何事もなかった様に過ごします(ここがポイントです)。

 重度の場合は短い間隔で何度も発作を繰り返したり、長く続く発作(5分以上)となる事があり、これはてんかん重積と呼ばれ大変危険ですので、すぐに当院にご連絡頂くか、獣医師の診察を受けてください。

てんかん(癲癇)の診断/検査

 てんかんを診断するための専用の検査というのはありません。てんかんという病気の重要な定義は「発作」が繰り返し起きることです。1回だけの発作でてんかんを疑うことはできますが、それだけで、てんかんの診断はできません。てんかんを診断するためには、てんかん以外の病気を除外するためにいろいろな検査を行う必要があります(除外診断)。

国際獣医てんかん特別委員会(IVETF)てんかん問診票※てんかんかな?と思った方は上記問診票にご記入いただき、ご来院下さい。てんかん診断の助けになります。

国際的なガイドラインでは、まず、第1段階として問診で病歴として、
●24時間以上あけて2回以上のてんかん発作起こしたか?
●初めててんかん発作を起こした年齢が6ヶ月から6歳までの間か?
(6ヶ月以前であれば先天的な異常が、6歳を超えてくるとてんかんだけでなく、脳腫瘍など他の発作原因も考慮する必要があります)
●発作が起こっていない時には他に問題がないか?
を確認し、一般身体検査、神経学的検査、血液検査血液化学検査尿検査糞便検査などを行います。

 次に、第2段階として、上記第1段階の検査で特筆すべき異常が見られなかったら、食前食後の胆汁酸測定を行い、脳脊髄液検査、脳CTあるいは脳MRI検査を行います。
 そして第3段階として脳波検査を行う必要があり、これにより「てんかん」が診断されますが、獣医療領域では脳波検査は一般的でなく、できる施設も限られていて、通常は費用や設備の問題からすべてを行う前に仮診断でてんかんの治療が行われることがほとんどです。

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この記事を書いた人

福山達也