仔猫と一緒に暮らすための基本

・思わぬところに危険がいっぱい?

好奇心旺盛な仔猫の周辺には、人間があまり意識しないところに危険なものがたくさん潜んでいます。

仔猫を飼育しはじめるにあたり、人間の赤ちゃんと住んでいる気持ちで、危険なものがないかどうか視線を下げて周囲を見渡してください。

仔猫の習性

仔猫の習性でいちばん目につくことは、遊び好きなことでしょう。ちょっとしたことにも好奇心をよせ、飽きもせずに一日中走りまわります。仔猫とはそんな印象です。動物の子どもたちは、遊びをつうじて将来必要となる行動を身につけてゆきますが、その動作は、基本的には多くの感覚に支えられているものです。仔猫の習性といっても、成猫に通じるものですし、さまざまな感覚は、成長につれて発達してゆくものですから、ここではまず最初に、猫に備わった感覚につい知っておきましょう。

仔猫の感覚

どの動物にも視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、平衡感覚、といった感覚が、生きるために備わっています。猫にももちろんあります。その猫の感覚はどの程度の発達ぶりなのでしょうか。生まれたばかりの仔猫は、まだ目も閉じてい、耳孔もふさがっています。そのため、もっぱら嗅覚と触覚に頼って生存しています。

■嗅覚
猫は犬に比べれば、嗅覚的に劣っています。しかし、全く鈍いわけではありません。仔猫は出生時から嗅覚の発達はよく、いったん乳頭に吸いつくと、その匂いをすぐ覚え、自分専用の乳頭を定めるほどです。猫の鼻面は短いので、犬ほどの嗅細胞はありませんが、私たちに比べれば約四、五倍も多い、ほぽ6700万個の嗅細胞をもっています。

■聴覚
猫の聴覚はなかなか優れています。猫の耳はよく動かせるので、音源をつきとめるのに便利です。私たち人間は、15〜16キロヘルツぐらいの音までしか聞きとることはできませんが、猫たちはもっと高い音も聞きとることができます。これは、ハンターとしての猫の獲物に対する特性といえるでしょう。

猫の獲物は主としてネズミ類ですが、ネズミたちは私たちの耳には聞こえない、40キロヘルツもの高い音をたてます。これを猫は聞きつけられるのです。猫は100キロヘルツぐらいまでの音を聞きとれるとみられています。私たちも人間は年をとると耳が遠くなりますが、実は猫も同じです。猫の耳の老化は予想以上に早いようで、四歳半の猫は、もう一歳の猫より聴力が劣るそうです。

■視覚
視覚は聴覚と共に、猫にとっては大切な感覚です。生まれたときに閉じていた目は、8〜12日目頃から開きはじめ、3週齢から1カ月齢頃には、視力もしっかりとして、位置の確認もすっかりできるようになります。猫の大きい目は顔の正面についていて、これはものを立体的にみるのに役立ち、狩りをするには有利です。
猫の目の特徴は、明暗に対して敏感なことです。猫の目には、網膜の近くに夕ペタムといわれる、光を反射させる壁板をもち、わずかな光でもここで反射させて網膜を刺激することができます。猫たちは、私たちが必要とする光量の1/6の光で、ものを見ることができます。
しかし、ものの形を正確に見定める視力は、あまりいいとはいえません。写真のフィルムでもそうですが、高感度のフィルムは、解像力が悪いものです。猫の目には明暗に敏感な細胞が多いし、レンズを調節する毛様体の発達も悪く、調節力に劣り、タペタムの反射は像をぽやけさせます。
猫は、2〜6mぐらい先の距離にあるものを、最もよく見分けられるといわれていて、ピントはもっと近い、75cmぐらいのところがもっともよく合うのだともいわれています。どちらにしても猫は近視眼です。しかし、これは元来、遠くの獲物を追いかけて捕えるハンタータイプではなく、近くまで接近して一気にとびかかる猟法ですから、2〜6mもの距離感があれば、それで充分なので、問題ありません。
また、猫も視力は、私たちのざっと1/10程度だといわれていますが、動くものを見つける能力は遥かに優れています。1秒間にわずか4mm動くだけのものでも、猫は見逃さないと言われます。
仔猫の視力は、開眼と共に急速に発達してゆきます。生後2カ月もすれば、ほぽ親と同程度となり、生後4カ月ぐらいまで発達します。
視力を発達させるには、光の刺激が必要なので、いつまでも仔猫を暗がりにおくのはよくありません。生まれて3カ月ぐらいまで、暗がりにおかれた仔猫は、視力障害をきたします。光がもっとも大切なのは、仔猫が巣から外へ出はじめる1カ月齢前後の頃です。
ところで、猫は色がわかるのでしょうか? 猫の目には色の識別に関係のある細胞が、少ないけれど存在しますので、色がわからないとは言い切れません。行動的に猫が赤色を他から区別するのは、誰でも観察できるとされています。実験的にはオレンジと青、赤と青は区別することが分かっていますが、猫の生活にとって、色はそれほど重要なものではなさそうです。

■味覚
猫はわりに保守的なところがあり、幼いときに食べなれた食物に固執するところがあります。げっ歯類、サル、クマ、犬など、甘味を好むものは多いのですが、猫は甘味に対してはあまり鋭敏ではありません。しかし、猫の舌の神経腺維は、水分中のイオンの変化に敏感に反応するので、水の微妙な味はひょっとするとわかるかもしれないとされています。カルキくさい水道水は、「不味い」と思っているかもしれません(だからといってミネラルウオーターをあげてはいけません。尿路結石の原因になることがります)。

■触覚
猫の皮膚は触られたり、圧迫されたりするのを感じとります。これら触刺激を知るものを、触受容器といいます。とても微細な触受容器は、物に触れやすい口先や四肢の末端にたくさん分布しています。
猫の体は毛でおおわれていますが、普通の毛の他に、太くて長い触毛といわれる毛も生えています。触毛は眉の部分、頬、上唇部、下顎、手首のうら側などにありす。この触毛の根元は血管や神経に富み、ゆるく皮膚と結びついていて、知覚が敏感です。猫は触毛に2mgの重さがかかっても知ることができると言われています。またわずかな風で、それらが押されてもわかります。
猫の上唇部に生えている触毛は、ひげといわれ、長くて立派でよく目立ちます。ひげは猫の気分によってビンと張られたり、タラッとなっていたりします。このヒゲは切ってはいけません。猫はこのヒゲで自分が通り抜けられるかの幅を計測しています。

■平衡感覚
猫の平衡感覚と運動能力の素晴らしさは、皆さんご存知だと思います。特に高所から落ちても空中で姿勢をたて直して着地するのには、だれしも感嘆してしまいます。この平衡感覚は、実は早い時期に完成されます。仔猫が巣内で動きはじめる3週齢頃に現われはじめ、33〜48日頃にでき上がるそうです。巣から出はじめの仔猫は、まだ周辺の地理に不案内ですし、自分の位置の確認や危険箇所の把握も不充分なので、よく高所から落ちたりすることもあるでしょう。そんなとき、優れた平衡感覚は生命を救うことになります。
はじめは落下するとき、着地点を目で確認することが必要ですが、なれれば目を閉じていても体勢をたて直せます。体勢のたて直しは、まず頭を正位置に正し、前足を体にひきつけて、前躯をひねり、後躯を元に戻すようにします。後躯の動きは尾でバランスをとりつつ、正常に着地できるように微調整します。猫のこの落下時の運動は、0.1秒強から0.5秒内でやってのけますから、150cmぐらいのところでも、時間的には充分です。
でも、この平衡感覚と落下時の負傷は別問題です。いくら正常位で着地しても、地面が硬いコンクリートだったり、あまりに高いところから落下した場合、室内飼育で筋腱が鍛えられていない場合、カルシウム不足のような栄養障害猫などの場合は、骨折が生じます。
また、真っ逆さまに墜落した場合も、ケガをしてしまいます。猫の平衡感覚は、つい試してみたくなるものですが、子供が、高いところから猫を投げ落としたりしないように、気をつけてください。
また、マンションに住んでいる人も気をつけなければなりません。はしゃいだ仔猫が、窓から勢い余って飛び出すという事故が、起こらないとは限らないのですから…。高所から落ちて事なきを得た例では、38m以上の例があるそうですが、運がよかったというべきでしょう。

check
仔猫と一緒に暮らすためのポイント

  • 駐車場やシャッター、玄関ドアなどは常に閉めておく。
  • ストーブなどの熱を発する物には注意する。
  • 電気コード類はカバーなどをする。(仔猫は噛んで感電したりします)
  • 空き缶などはすぐに廃棄し、小さなおもちゃは隠す。(誤飲のもとになります)
  • 紐状(ひも、毛糸、釣り糸など)は、飲み込まないように仔猫の周辺から遠ざけておく。
  • タバコを控える。(タバコは子供やペットに非常に悪影響です)
  • 浴槽には常にフタをし、浴室のドアは必ず閉めておく。
  • 洗剤、台所用品、車の不凍液などの液体は舐めることができないように片付ける。
  • 毒性のある植物は片付ける。特に猫は観葉植物を噛じる習性があるので注意する。
    アイビー、西洋キョウチクトウ、フィロデンドロン類、ディフェンバキア、テッポウユリ、カラジウム、アザレア、シャクナゲ、ツツジ、月桂樹、ユリノキ、ヤドリギなど


▲猫に安全な環境の作り方