特異的IgE(とくいてきあいじーいー)はアレルギーを引き起こす原因物質(アレルゲン)を特定するための検査です。これはアレルギーと一口に言っても様々なアレルゲンがあるからで、その反応はそれぞれの犬や猫で違います。
アレルギーを起こしている原因物質であるアレルゲンを見つけることはアレルギーの診断のみならず、アレルゲン除去や治療方針決定においても不可欠です。特異的IgE検査は血液を採取して外部検査機関(当院では現在、富士フイルムVETシステムズ株式会社を利用しています)に送り、アレルゲンを同定(有無や程度)してもらう検査がこの特異的IgE検査になります。
アレルギー検査(特異的IgE)
・アレルギー検査(特異的IgE)はどんな検査?
特異的IgEの陽性率は皮内試験(動物ではなかなか面倒です)に比べると低値=感度は劣りますが、特異性に優れているとされています。例えば、ダニに対するIgE抗体はダニだけに、スギに対するIgE抗体はスギだけに反応する性質があります。
特異IgE検査はIgE抗体のこのような性質を利用して、採取した血液(厳密には血清か血漿)から、どのアレルゲンに反応するIgE抗体を持っているかを見つける検査です。したがって、スギが陽性になったということは、スギ花粉がアレルゲンである可能性が極めて高いということになります。
・アレルギー検査(特異的IgE)で何が分かるの?
以下のようなダニ・カビ・虫・花粉・食物のアレルゲンに対するアレルギーの有無が分かります。環境1、環境2、食物は一緒にでも、それぞれでも検査可能です。例えば、食べ物のアレルギーがないか知りたい場合は「食物」だけを調べるということもできます。ただ、1回毎に採血料や送料などがかかりますので、症状や状態から検討します。
■環境1(ダニ・カビ・虫)
グループ | アレルゲン |
---|---|
ダニ | コナヒョウヒダニ※1(ハウスダスト) |
ヤケヒョウヒダニ※1(ハウスダスト) | |
ケナガコナダニ※2 | |
アシブトコナダニ※3(コナダニ) | |
サヤアシニクダニ※4 | |
カビ | アルテルナリア(ススカビ) |
クラドスポリウム(クロカビ) | |
アスペルギルス(コウジカビ) | |
ペニシリウム(アオカビ) | |
虫 | ノミ |
ゴキブリ | |
蚊 |
※1:コナヒョウヒダニ、ヤケヒョウヒダニはハウスダストの原因ダニです。衣服、布団、毛布、枕、座布団、絨毯等にも発生します。
※2:ケナガコナダニは広範囲の食品(特に湿った場所の貯蔵穀物:米、小麦、麦、あずき等とその加工品(小麦粉、ビスケット、きな粉等))に発生するほか、魚介類干物(煮干、鰹節等)、チーズ、粉ミルク、菓子等にも発生します。また、藁(わら)や畳(特に湿った畳)から大発生するダニです。
※3:アシブトコナダニは貯蔵食品(きな粉、かりん糖、味噌など)や家具などに発生する主要なダニで、真菌類(カビ)を食料にするダニで、ハウスダストからも高い頻度で発見されます。
※4:サヤアシニクダニは干魚、削り節、チーズ、ハム、小麦粉などやや限られた食品に発生するダニです。乾草、蜂の巣、ハウスダストにも見られます。
主な解釈
検査結果は、それぞれのアレルゲンに対して以下のような結果で報告されます。結果が高いほどアレルゲンである可能性が高く、重篤な症状を引き起こす危険性があります。ただし、なかにはIgE抗体が証明されても症状が認められないこともあります。
(ー)陰性
反応高度:0〜10(HERBU)
(+)弱陽性
反応高度:11〜25(HERBU)
検査結果が(+)弱陽性の場合、アレルゲンである疑いがあります。
(2+)陽性
反応高度:26〜50(HERBU)
検査結果が(2+)陽性の場合、アレルゲンの可能性が高いと思われます。
(3+)陽性
反応高度:51〜150(HERBU)
検査結果が(3+)陽性の場合、アレルゲンの可能性が非常に高いと思われます。
(4+)強陽性
反応高度:151以上(HERBU)
検査結果が(4+)強陽性の場合、大部分の動物がアレルギー反応を示すといわれています。
また、検査結果の上昇(例:前回は2+なのに今回は3+になったなど)はアレルギーの悪化を意味し、減少は改善を意味します。
検査は基本採血だけですので、採血用の細い針を刺すときにほんの少し痛みがあります。
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検査時間・日数
採血:5分程度(全項目を調べるには2ccほどの血液が必要になります。)
検査結果:外部検査機関に検査ですから結果が届くまで数日〜1週間程度かかります。
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注意事項
ー検査は事前にご相談いただいて、症状や状態などから検査項目などを決めますので、まずはご予約ください。
ーアレルギー検査を行う場合、ワクチン接種から8週間以上間隔を開けて行うことがいいかもしれません。
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参考文献・資料等
- 伴侶動物臨床指針 Vol.4; 56-65:I型アレルギーの検査
<1>米国における商業的研究施設のアレルゲン特異的IgE分析およびその後に推奨される免疫療法の一致性
<2>犬のアトピー性皮膚炎モデルを用いたイエダニの経口免疫療法の耐過性および臨床効果: 予備的研究
<3>自然発生性食事アレルギーに罹患した犬に対する新奇食(アミノプロテクト・ケア)の有用性評価に関する無作為対照盲検試験
<4>犬の主要高分子量ハウスダスト・マイト・アレルゲン(Der f 15)の特徴づけおよびクローニング
<5>84頭のアトピー犬におけるモノクローナルIgE抗体を用いたアレルゲン特異的IgEに関する皮内検査および血清検査の比較
<6>正常犬およびアトピー犬の皮膚におけるIgE介在性遅発性反応相における炎症性浸潤の特徴づけ
<7>自然発生した食物アレルギーの犬に対して、コーンスターチ、トウモロコシ、大豆、加水分解大豆食を経口試験した際の臨床的評価、および抗原特異的血清免疫グロブリンE反応性の評価
<8>ノミ刺傷過敏症: 肥満細胞の関与に関する新知見
<9>犬のアレルゲン特異的IgE抗体検査のために市販されている酵素免疫測定法の評価
<10>日本杉花粉(Cryptomeria japonica)に感作された猫における季節性鼻炎
<11>アレルギーの犬において、一般の予防的ワクチンあるいはアルミニウムアジュバント単独投与がアレルゲン特異性血清IgEとIgG反応に及ぼす影響