前十字靭帯断裂症

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

前十字靭帯断裂症とは?

 前十字靭帯断裂(ぜんじゅうじじんたいだんれつ)とは、膝関節の内部にある前十字靱帯と呼ばれる靭帯が切れてしまう病気です。前十字靭帯(ぜんじゅうじじんたい)は、大腿骨(太ももの骨)と脛骨(けいこつ:すねの骨)を結びつけている靱帯です。前十字靭帯の役割は、
  1. 大腿骨に対して脛骨が前に飛び出さないようにする
  2. 膝の過剰な伸展を防ぐ
  3. 脛骨が内側にねじれれないように支える。
などのがあります。そのため前十字靭帯が断裂して切れてしまうと、膝関節が不安定になり跛行など様々な問題が生じてきます。
 秋田犬、ウェルシュ・コーギー、キャバリア・キングチャールズ・スパニエル、ゴールデン・レトリーバー、柴犬、ニューファンドランド、フラットコーテッド・レトリーバー、ヨークシャー・テリア、ラブラドール・レトリーバー、ロット・ワイラーなどに起こりやすいとされています。
 一般的には中年齢以降の犬で発症しやすい病気ですが、大型犬種は2歳以下の若齢でも起こることがありますし、猫でも稀に起こりますので注意が必要です。
 前十字靭帯断裂は一般に急性断裂と慢性断裂、さらに完全断裂と部分断裂に分けられます。

前十字靭帯断裂症の原因

 前十字靭帯断裂の原因は主に、激しい運動(急なジャンプやダッシュ、ターンなど)、肥満による膝関節への過度の負担、事故(外傷や打撲)などです。また、歳を重ねることにより靭帯が弱くなったりすることも原因の一つと考えられます。特に小型犬では、膝蓋骨脱臼がある場合も靭帯に負担がかかるために前十字靭帯断裂が起こりやすくなります。

前十字靭帯断裂症の症状

 主な症状は跛行と疼痛です。
 急性部分断裂の場合は、後肢跛行、完全に後肢をあげるといった歩行異常症状が数日現れ、その後通常の歩行に戻ることもあります。
 慢性化すると半月板損傷が起こったり、変形性関節疾患を発症し、激しい痛みを感じ、常に跛行したり、時折つま先のみ着地したり、後肢をずっと上げたままの状態にしていることもあります。また、立ったり座ったりがつらそうな様子も見られます。

前十字靭帯断裂症の診断/検査

 前十字靭帯断裂を疑った場合、問診、身体検査、視診、触診などを行います。特に、前十字靭帯断裂の診断には脛骨前方引き出し試験、脛骨圧迫試験という触診が行われます。
 さらに一般的にはまずレントゲン検査を行います。また、最近では超音波検査、CT、MRIなどにより詳しく診断が行われることもあります。

前十字靭帯断裂症の治療

 治療は、症状の重症度、靱帯の状態、体重、運動量、費用、オーナーの希望などによって異なりますが、一般的には、内科的治療(保存療法)と外科的治療があります。体重の軽い小型犬や猫では保存療法が選択される場合もありますが、半月板損傷や変形性関節疾患を発症している場合、体重がだいたい8kg以上の場合には手術が適応されることが多くなります。
●内科的治療(保存的)
狭い空間で運動を制限し、安静にして、鎮痛剤の投与やレーザー療法などによる疼痛の緩和、体重管理(特に肥満の場合)などを行います。軽症の場合、内科療法で症状が緩和され、良好な生活を送れるケースもありますが、症状が重度な場合や内科的治療を行って症状の改善がみられない場合などは、外科療法を行います。
●外科的治療
外科療法では、手術により、切れた靱帯の整復、靱帯の再建手術などが行われます。手術方法にはさまざまな方法があり、適応時期や手術方法が異なります。
 外科的治療を行う場合は、全身麻酔のリスク、手術後の安静期間や術後ケアの方法、手術費用、リハビリの期間や費用などについて十分に検討して行う必要があります。

前十字靭帯断裂症の予防

 日頃からジャンプや急なターンなど激しい運動を避け、膝への負担を減らすために、適切な食餌管理で肥満を防止することが重要です。
 室内飼育では、落下などの事故を防ぎ、床がフローリングなどの硬くてすべりやすい場合は、膝への負担がかかりやすいので、絨毯やマットを引くなどするとよいでしょう。
 足の裏の毛が伸びている場合は滑らないようにするために定期的にトリミングサロンで短くカットしてもらうと良いでしょう。
 膝蓋骨脱臼(パテラ)を発症している場合には前十字靱帯断裂を起こしやすいとされていますので、特に注意しましょう。また、前十字靭帯断裂が疑われるような症状が見られた場合は早めに当院にご相談いただくか、獣医師の診察を受けましょう。

前十字靭帯断裂症の看護/その他

 動物病院で処方されたお薬はきちんと飲ませ、指定された注意事項(運動制限など)や再診、リハビリはきちんと行い、一日も早い回復に努めましょう。
 手術後は良好な回復のために、筋肉をしっかりとつける、関節の動く範囲を改善させることを目的としてリハビリを行う必要があります。その場合はCCRPなどきちんとした資格を持った獣医師、獣医看護師、PTなどの指導の下で行いましょう。
 今のところ、どの手術方法を用いても変性性関節炎の進行を完全に抑えることはできないといわれています。また、反対側の肢に同じように発症することも少なくありません。そのため症状が改善しても経過観察や関節に負担をかけないような生活が大切です。

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参考文献・資料等
  1. 犬の跛行診断; 133-165:膝関節およびその周囲の異常に対する跛行診断
  2. 獣医整形内科;74-85:股関節と膝関節のSnap Diagnosisと診断の流れ


<1>英国における犬の前十字靱帯断裂発生に対するシグナルメントの影響
<2>Tibial Plateau Levellingの変法を用いた膝蓋骨脱臼および前十字靱帯断裂併発症例の管理
<3>犬の前十字靭帯損傷の治療としての脛骨粗面前方転移術の短期間および8~12ヶ月後の結果
<4>犬の膝関節
<5>骨関節症のバイオマーカーを使用した脛骨高平部水平骨切術による治療の有効性についての研究
<6>前十字靭帯切断術と膝関節固定術後の骨および筋肉組織の変化
<7>イヌの骨関節症の治療としてヒアルロン酸を静脈内投与した後の関節滑液および血清の検査
<8>犬の前十字靱帯再建術後の膝関節の安定性に対する関節周囲組織の効果
<9>犬の前十字靱帯損傷: 病態生理学、診断、および治療
<10>犬の膝関節手術後の周術期疼痛管理を目的としたメロキシカム静脈内投与の評価

この記事を書いた人

福山達也