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胆嚢破裂とは?
胆嚢破裂とは、胆嚢の壁が損傷し、胆汁が腹腔内に漏れ出す状態を指します。胆汁は本来、肝臓で生成され、胆嚢に蓄えられた後、食事の消化を助けるために小腸へ分泌されます。しかし、胆嚢が破裂すると、胆汁が腹腔内に広がり、重篤な炎症である胆汁性腹膜炎を引き起こします。この状態は放置すると命に関わるため、迅速な診断と治療が必要です。
胆嚢破裂の原因
胆嚢破裂の原因は多岐にわたります。最も一般的な原因として、胆嚢炎や胆嚢粘液嚢腫が挙げられます。胆嚢炎は胆嚢の細菌感染や胆汁のうっ滞によって引き起こされ、炎症が進行すると胆嚢壁が脆弱化し、破裂のリスクが高まります。胆嚢粘液嚢腫は、胆汁の成分が異常に変化し、ゼリー状の物質が胆嚢内に蓄積することで胆嚢が膨張し、最終的に破裂する可能性があります。
その他の原因として、胆石が胆嚢や胆管を塞ぐことで胆嚢内圧が上昇し、壁が破裂することがあります。また、交通事故や転落などの外傷による直接的な損傷、胆嚢捻転、腫瘍、寄生虫の感染、手術後の合併症なども考えられます。
胆嚢破裂の症状
胆嚢破裂の症状は、進行の程度や合併症の有無によって異なりますが、主に以下のような兆候が見られます。
初期の段階では、元気消失、食欲不振、嘔吐がみられます。進行すると腹部の痛みが強まり、ペットオーナーが抱き上げようとすると嫌がることがあります。腹部が膨らんで見えることもあります。また、胆汁の漏出により黄疸が現れることがあり、これは目や耳の内側、歯茎が黄色く変色することで確認できます。
重篤な状態になると、発熱または低体温、脱水、呼吸の速まり、頻脈、虚脱、ショックといった症状が見られることがあります。ペットオーナーが気付きにくい症状として、軽度の食欲不振や元気消失があり、これが進行すると重篤な状態に陥ることがあるため、注意が必要です。
胆嚢破裂の診断/検査
胆嚢破裂の診断には、詳細な身体検査と画像診断が不可欠です。まず、触診により腹部の痛みや腫れを確認します。血液検査・血液化学検査では、炎症の有無を示す白血球の増加や、肝酵素(ALT、AST、ALP、GGT)の上昇、ビリルビン値の異常が見られることがあります。確定診断には超音波検査が有効で、胆嚢の形状異常や胆汁の漏出、腹腔内の液体貯留を確認します。また、レントゲン検査では腹部の不透過性の変化が見られることがあります。さらに、腹腔穿刺による腹水の採取と分析が行われ、腹水中のビリルビン濃度が血清ビリルビンの2倍以上である場合、胆汁性腹膜炎が強く疑われます。CT検査を実施することで、胆嚢の損傷部位をより詳細に評価することも可能です。
胆嚢破裂の治療
胆嚢破裂の治療には、外科手術が必要不可欠です。一般的には、破裂した胆嚢を摘出する胆嚢摘出術が行われます。手術前には、輸液療法や抗生物質投与による状態の安定化が重要です。
手術では、胆汁が漏れ出た腹腔内を十分に洗浄し、感染のリスクを最小限に抑えます。胆管に損傷がある場合は、胆道分流術が必要になることもあります。術後は、集中的な管理が必要となり、抗生物質の継続投与や点滴治療が行われます。
予後は、早期に診断し適切な治療を行えば良好ですが、胆汁性腹膜炎を併発している場合や、敗血症に進行している場合は慎重な経過観察が必要です。特に、敗血症性胆汁性腹膜炎の致死率は高く、迅速な対応が生存率向上に繋がります。
胆嚢破裂の予防
胆嚢破裂を予防するためには、胆嚢の健康管理が重要です。定期的な健康診断を受け、胆嚢の異常がないかチェックすることが推奨されます。胆嚢粘液嚢腫や胆石が発見された場合は、経過観察の上、必要に応じて早期の外科治療を検討します。
また、高脂肪の食事は胆汁の流れを滞らせる可能性があるため、バランスの取れた食事を心がけることが重要です。肥満も胆嚢疾患のリスク要因となるため、適切な体重管理を行いましょう。
胆嚢破裂の看護/その他
術後の自宅での管理では、愛犬・愛猫の活動を制限し、傷口の感染を防ぐために清潔を保つことが大切です。ペットオーナーは、食欲の変化、嘔吐、腹部の腫れや痛み、黄疸の有無を注意深く観察し、異常があればすぐに動物病院を受診することが求められます。
また、手術後は徐々に食事を再開し、消化の良い食事を与えるようにしましょう。獣医師から処方された薬は指示通りに投与し、定期的な診察を受けることで、回復状況を適切に把握することが重要です。
胆嚢破裂は緊急性の高い疾患ですが、早期発見と適切な治療により、多くの愛犬・愛猫が回復することができます。日頃から健康管理に注意し、異変に気付いたら早めに当院にご相談ください。
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参考文献・資料等
- Diagnostic reasoning in internal medicine: a practical reappraisal
- Textbook of Veterinary Internal Medicine 8th ed.
- Anicteric gallbladder rupture in dogs: 5 cases (2007-2013)
- Anicteric Gallbladder Rupture with Elevated Bile Acids in Abdominal Effusion in a Dog with Cholecystitis
- Preoperative serum C-reactive protein concentration can be used to detect gallbladder rupture in dogs with gallbladder mucocele
- Gallbladder Mucocele: Variables Associated with Outcome and the Utility of Ultrasonography to Identify Gallbladder Rupture in 219 Dogs (2007-2016)
- Long-term survival of dogs treated for gallbladder mucocele by cholecystectomy, medical management, or both
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