クラミドフィラ・フェリス感染症(猫クラミジア症)

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クラミドフィラ・フェリス感染症(猫クラミジア症)とは?

 クラミドフィラ・フェリス感染症は以前、猫クラミジア感染症と呼ばれていた病気です。猫ヘルペスウイルス猫カリシウイルスと複合感染することの多い病原体で、感染すると化膿性の結膜炎鼻炎を起こして粘液性の目やにや鼻汁がみられます。呼吸器病の猫の2割~3割がクラミドフィラ・フェリスに感染しているとも言われています。
 この病原体は猫以外にも人やその他の哺乳類、鳥類にも感染することがあるので注意が必要です。

クラミドフィラ・フェリス感染症(猫クラミジア症)の原因

 原因はクラミドフィラ・フェリス(Chlamydophila felis)の感染です。主に感染した猫の目やにや涙などに接触することで他の猫に感染します。潜伏期間は 2 ~ 5 日間です。特に複数〜多頭飼育の家庭に多く見られます。
 単独では、あまり危険な病気ではありませんが、猫ヘルペスウイルス猫カリシウイルスなど他の呼吸器感染症と複合感染したり、肺炎を併発したりする場合には、脱水による体力の低下や呼吸困難から死に至ることもあります。特に抵抗力の弱い子猫(1歳未満の幼猫に多く見られる病気です)や老猫では注意が必要です。

クラミドフィラ・フェリス感染症(猫クラミジア症)の症状

 感染すると化膿性の結膜炎や涙目、鼻炎を起こして粘液性の目やにや鼻汁がみられます。結膜炎多くの場合片目からはじまるのがこの病気の特徴です。その後、両目に波及します。また、鼻汁、くしゃみがみられ、咳をすることもあります。症状が数週間にわたって長期化する場合が多くみられます。
 感染が気道にまで広がった場合には、化膿性の気管支肺炎を併発することもあり、呼吸器病の猫の2割~3割がクラミドフィラ・フェリスに感染しているとも言われています。
 また、発熱による元気消失食欲不振なども見られます。

クラミドフィラ・フェリス感染症(猫クラミジア症)の診断/検査

 確定診断には外部検査機関でのPCR検査や抗体検査などがありますが、通常は費用や時間の問題から、症状やグラム染色などで判断し治療をします。

クラミドフィラ・フェリス感染症(猫クラミジア症)の治療

 治療には、特定の抗生物質(ドキシサイクリン、クラブラン酸アモキシリン、フルオロキノロン系抗菌薬など)の点眼薬や内服が有効です。
 症状が良くなってくると、勝手に量を減らしてしまったり、中止したりする方がいますが、逆にこの病気を長引かせることになります。抗生物質を用いる際は、獣医師の指示通り(2週間以上〜4週間推奨)の量と期間を守って、病原体を完全にせん滅することが大切です。特にこの病気は症状がなくなってから2週間投与することが推奨されています
 その他必要に応じて点滴食欲不振に対する栄養補給などの対症療法を行います。
※抗生物質(特に、ドキシサイクリン)を口を開けて直接飲ませた際は、猫の食道に残ってしまうことがありますので、飲ませた後にスポイドなどで水を必ず(5ml以上)飲ませるようにしてください。

クラミドフィラ・フェリス感染症(猫クラミジア症)の予防

 クラミドフィラ・フェリスの予防ワクチンは現在国内で入手できなくなっています。
 クラミドフィラ・フェリスは人でも結膜炎を起こした例が報告されています。非常に稀な例ですのであまり過敏になる必要はないと思いますが、猫に触れた手指では直接目をこすらずに、石鹸での手洗いを忘れないようにしましょう。特に小さいお子さんや高齢者のいるご家庭では猫を触ったら手洗いをする習慣をつけさせましょう。
 もしクラミドフィラ・フェリスを猫の体内に残してしまうと、体内に潜伏したクラミジアが日和見感染(ひよりみかんせん=免疫力の低下に伴って病気が再発する)したり、他の猫の感染源となる、いわゆる「キャリアー」となる可能性がありますので、処方された薬は必ずきちんと飲ませきりましょう。

ねこを守ろう。

クラミドフィラ・フェリス感染症(猫クラミジア症)の看護/その他

 クラミドフィラ・フェリスはグラム陰性の細菌で、おもな標的は結膜で、感染すると結膜炎が好発します。1 歳齢未満の新生子猫にもっとも感染が蔓延しやすい病気です。クラミドフィラ・フェリスは基本的には宿主以外では生存することができず、感染が成立するには、猫同士での接触が必要になります。猫同士を無闇に接触させたり、キャットオーナー自体も見知らぬ猫に安易に触れ合わないにしましょう。
 クラミドフィラ・フェリスがズーノーシス(人獣共通感染症)となる疫学上の証拠はありませんが、人への感染はいくつか報告されていますので、注意が必要です。クラミドフィラ・フェリスが排泄される期間は感染後約 60 日間です、持続感染が生じる可能性もあります。

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参考文献・資料等
  1. 猫の診療指針Part3;61-62:クラミジア症
  2. 犬と猫の日常診療のための抗菌薬治療ハンドブック;91-106:呼吸器感染症
  3. 犬と猫の日常診療のための抗菌薬治療ハンドブック;131-139:眼感染症

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<1>ポーランドの猫の結膜嚢における細菌叢の特徴
<2>猫のクラミドフィラ症治療に対するアジスロマイシンの効果
<3>猫クラミジアおよびマイコプラズマ感染による猫上部気道感染症に対するプラドフロキサシンの効果
<4>アメリカ猫臨床家協会(American Association of Feline Practitioners)による猫の人獣共通感染症に関する2003年の報告
<5>飼育子猫に発生した致死的クラミジア感染症の1例

[WR2111,VQ2111:クラミジア]

この記事を書いた人

福山達也