猫パルボウイルス感染症(FPV:Feline panleukopenia 猫汎白血球減少症)

猫パルボウイルス感染症(FPV:猫汎白血球減少症)の治療

 特異的で有効な治療法はなく、症状を軽減さる対処法が治療の基本です。二次感染に対して抗生物質の投与、脱水の改善のための輸液などの対症療法を行います。また、インターフェロンなどを使用したりします。
 だからこそ、事前にワクチン注射で予防するのです。
 特に多頭飼育している場合で、ワクチンを接種していないと最悪全滅ということもあり得ます。事実、壱岐島内でも家で飼っている猫全滅という話を聞きます。

猫パルボウイルス感染症(FPV:猫汎白血球減少症)の予防

 猫パルボウイルス感染症はワクチンにより予防できます。猫パルボウイルスに対するワクチンはコアワクチンとしてすべての猫への接種が世界で推奨され非常に効果的です。

 猫を飼育したら必ずワクチンで予防すべきです。このウイルスは環境中でチリやホコリに混じり長期間存在するので、感染猫の吐物や糞便等の取扱いに注意が必要です。塩素系の消毒薬で感染猫が使った食器、便器等を消毒する必要があります(できれば焼却処分するのが安全です)。通常のアルコール消毒やアンモニア消毒、煮沸消毒では効き目がありませんので無駄です。
 このウイルスは前述のように猫の体を離れて非常に長期間生き延びます。感染源に接触した人の衣類や靴を介して長距離移動することができ、いつ、どこで発生するかわかりません。そのため、完全室内飼育だからと安心はできません。また、特に子宮内感染、新生児の感染は、ワクチン接種をしていない母猫から起こります。だからこそワクチン接種が重要なのです。
 なお、お腹に寄生虫がいると症状を悪化させるといわれていますので、定期的な駆虫(虫下し)は症状の悪化を防ぐかもしれません。

猫パルボウイルス感染症(FPV:猫汎白血球減少症)の看護/その他

 もしもあなたの猫が、ワクチンを接種してなく、猫パルボウイルス感染が診断されたら、一番必要なのは、あなたが猫飼育に関する知識をきちんと身につけることです。

 このウイルスは非常に感染力が強く、死亡率が高いウイルスです。また、感染した猫は症状が収まっても、糞便中2ヶ月近くウイルスを排出します。感染猫は厳重に隔離して、回復後他の猫への感染を防止しなければなりません。そうしないと、回復した猫が本人は元気でも、他の猫の新たに感染源になります。だから怖いのです。
 特に多頭飼育の場合は、感染猫は隔離し、他の猫とは別の人が世話をする。それができないなら、感染猫は隔離し、他の猫の世話が全て終わってから、感染猫の世話をする。餌と水のボウル、寝具、トイレトレーなどの飼育器具は、洗浄と消毒が簡単なものか、使い捨てのもので、使用後は焼却する。
 すでに猫を飼育している場合、新しい猫を迎える場合は、必ず予防接種後に一緒にすることを心がけてください。「猫に予防注射は常識」です。感染してからでは遅いのです。室内飼育だから安心なんて思っている人が時々いますが、残念ながらこのウイルスは人などを介して外からも持ち込まれます。事実、当院での経験でも、生まれて一度も家から外に出ていないのに感染した猫が複数います。「完全室内飼育だから大丈夫」はあなたの単なる思い込みです。そして、室内に持ち込むのは出入りするあなたや家族であることを忘れないでください。
 猫パルボウイルスの人への感染は今のところ確認されていませんが、猿に致死的に感染したという報告があります。[5]

壱岐島内猫パルボウイルス感染アウトブレイク情報

2017-18 壱岐島での猫パルボウイルスの大流行
2017年冬〜2018年春にかけて壱岐島内で猫のパルボウイルスが大流行し、多くの地域猫は病院にも来ることなく命を落としました。最初の診断から壱岐島内ほぼ全域に広がるのはあっと言う間で、誰かがばらまいているのではないかとさえ思うほどの速さでした。治療により助かった猫ちゃんたちもいます。しかし、パルボウイルスは壱岐の島中に確実に残っていると思いますので、またいつ猛威を振るうかわかりません。多くの人がきちんと飼育している猫ちゃんにワクチンを接種していてくれれば大流行は防げた可能性が高いと思います。田舎はまだまだ意識の低い人が多いのですが、「猫を飼育したら定期的に予防注射をする!」これは最低限の義務だと思ってください。

2022 壱岐島での猫パルボウイルスの発生を確認
2022年2月、壱岐島内で猫パルボウイルスの感染を確認しました。

2023 壱岐島での猫パルボウイルスの発生を確認
2023年1月と7月、8月、9月、10月壱岐島内で猫パルボウイルスの感染を確認しました。(他院から12月に確認の連絡も受けています)
※特に石田地区、勝本地区、郷ノ浦地区で多く発生しています!要注意です!

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動物医療保険をお持ちの方は診察前に保険証を提示してください!

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参考文献・資料等
  1. 猫の診療指針Part3; 32-34:猫汎白血球減少症
  2. Feline Panleukopenia
  3. Feline panleukopenia
  4. Managing feline panleukopenia outbreaks in shelters
  5. Isolation and characterization of feline panleukopenia virus from a diarrheic monkey
  6. ABCD GUIDELINE for Feline Panleukopenia


<1>4種の新しい消毒薬の殺ウィルス効果
<2>猫汎白血球減少症ウイルスおよび犬パルボウイルスにより誘発されるウイルス中和抗体交差反応の特徴
<3>ガラパゴス諸島のイサベラ島における犬猫の感染症

[WR21,VQ21:]

この記事を書いた人

福山達也