皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)とは?

皮膚に糸状菌(しじょうきん)・真菌(しんきん)が感染し、皮膚炎を起こす病気です。一般的に、糸状菌・真菌はカビと言われます。特に免疫力が低い状態の動物や幼齢動物に感染しやすい傾向があります。その脱毛の様子が円形に拡がっていくことから、「リングワーム」とも呼ばれます。

様々な動物に感染し、中にはヒトにも感染するものもあり「人と動物の共通感染症(ズーノーシス」で、感染した動物と接触することで皮膚炎を起こすことがありますので注意が必要です。

犬では特にヨークシャー・テリアでの発生が多いとされています。また、免疫力の関係か?年齢的には、若齢と高齢に多く見られます。

皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)の原因

 皮膚真菌症は、皮膚や被毛に糸状菌・真菌(カビ)が感染することで起こる病気です。原因となる菌として、Microsporum(約70%)、Trichophyton、Edidermophyonなどがあります。これらの真菌は土壌などの環境中に常在しており、接触することによって感染します。
 通常は感染して症状が出ることはまれですが、幼齢であったり、不衛生な飼育環境、ストレスなどでは免疫力が低下している場合などには感染し易くなります。

皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)の症状

 症状は全身にみられますが、顔や頭部、四肢に発症することが多く、痒みの少ない円形脱毛、発赤、フケやかさぶたといった他の皮膚病と区別しにくい特徴に乏しい症状が見られます。
 細菌の二次感染が起こるまでかゆみはあまりありません。症状を出さないで、無症状で保菌している場合もあります。
 人での症状も多様です。皮膚に円形・不整形の白っぽい輪ができたり、小さい水泡や赤み・脱毛・痒みなどが見られます。

皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)の診断/検査

 一般的な皮膚の検査と共に、被毛の検査あるいはウッド灯検査、真菌培養、生検(病理組織検査)などを行い診断します。時にはPCR検査が必要になることもあります。

皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)の治療

 抗真菌剤の外用薬の塗布や内服、他に、患部の毛刈りや抗真菌シャンプーによる薬浴治療をする場合もあります。症状が改善するまで1〜数ヶ月かかることが多いようです。途中で治療を勝手に中断しないようにしましょう。
※当院では皮膚糸状菌症の治療に必要に応じて海外から輸入した国内未発売の薬剤(ケトコナゾール)を用いることがありますので、ご了承ください。ケトコナゾールを処方された場合、このお薬は空腹時は吸収が悪いので、必ず食事と一緒に与えてください。

皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)の予防

 感染した動物との接触をさけましょう。また、感染した動物の抜け毛やフケからも感染することがありますので、衛生的な環境を保つよう心がけましょう。真菌の種類によっては兎や齧歯類,ハリネズミなどからも感染しますので、接触には注意しましょう。
 多頭飼育のブリーダー、ペットショップ、シュエルターでは発症が多いとされています。また、不衛生な動物病院、トリミングサロンでの感染も考えられるので、注意が必要です。
 定期的なシャンプーやトリミングなどで皮膚を清潔に保つことが重要です。ただし、シャンプーをしすぎると悪影響が出る場合もあるので健康であれば月に1〜2回で十分です。

皮膚糸状菌症(皮膚真菌症)の看護/その他

 この病気は、同居の動物についても検査や治療が必要になります。きちんとすべての動物を治療しないと繰り返しになります。
 ヒトに痒みや円形脱毛などの皮膚症状が現れた場合は、病院(皮膚科)を受診するようにしてください。

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library_books 参考文献・資料等

  1. 犬・猫の皮膚糸状菌症に対する治療指針
  2. 犬の内科診療 Part1; 384-389:皮膚糸状菌症
  3. 新伴侶動物治療指針 Vol.1; 212-218:犬と猫の皮膚糸状菌症〜WAVD コンセンサスガイドラインに基づいた治療〜


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この記事を書いた人

福山達也