聴診器について

皆さんは動物病院に来られた時に「聴診器」をよくご覧になると思います。動物病院では予防注射や病気のときなど必ずと言っていいほど聴診をします。個人的には動物病院で一番使われる獣医療機器の一つだと思っています。

聴診器が発明されたのは1800年代はじめのフランスです。当時は木の棒に耳あてをつけたようなものだったそうです。それから約200年がたち、現在では多くのメーカーからいろんなタイプの聴診器が発売されています。実は聴診器って例えれば指輪やネックレスなど「宝石」みたいなんですよ。一見するとどれも基本は同じ形のようにみえますが、微妙にデザインや素材が違ったり、ノンブランドから人気ブランドまであり、人により好み(ない人もいるか。。w)があるんです。価格もノンブランドで2,000円程度(たぶんこんなのは病院の血圧測定くらいにしか使わないと思いますが。。。)から10万越えとかまでそれこそピンきりです。

私が学生時代からづっと愛用してるのは「リットマン」というメーカーです。値段は忘れましたが、当時は円も安く非常に国内では高価だったのを覚えています。とうてい学生にはおいそれと買えません。。。ですから最初の1本(そういえば、私達は聴診器を1本2本と数えます。。。)は先輩がアメリカ研修に行く時にお願いして大学生協みたいなところで日本よりはるかに安く買ってきてもらったのを覚えています(たぶん向こうの学生に学割で買ってもらってたような。。。)。そして今度は自分がアメリカ研修に行く時に頼まれた分を抱えて帰ってきた記憶があります。当時の麻布大学外科教室にはそんな伝統がありました。。。「無理をしてでもちゃんとした聴診器を買え」「いい聴診器でたくさん聞いて耳をつくれ」とよく言われたものです。やはり音ですから、スピーカーのいいのからいい音が出るのように、いい聴診器からはいい音が聞こえるということになるかなと思います。

実はワンちゃんや猫ちゃんの心音の聴診は人に比べるとやや難しいんです。なぜなら人にくらべ心拍数が早いからなんです。音と音の間が短いということは前後とか間にある異常音を聞き分けるのが大変になるからなんです。だからこそ獣医さんにはいい聴診器を使って欲しいなと思います。あまりこだわりのない先生に出会うと正直「その聴診器で聞こえますか?」と言いたくなります。。。まあ、安いスピーカーだって音は聞こえますからね。。。心拍数はかるだけならどんな聴診器でもいいかも。。。でも、自分が病院行ったらこだわりのある聴診器を使ってる先生に心音聞いてっほしいなと思います。

そして、皆さんに一つお願いがあります。獣医さん(もちろんお医者さんも)が聴診している時には話をしないでほしいんです。やはり微妙な音を聞き分けるには静かな環境が必要になるからなんです。

今回はちょっとした聴診器のお話でした。今度、病院や動物病院に行かれたらあなたの主治医がどんな聴診器を使っているのかな?って見てみてください。

この記事を書いた人

福山達也