肥満:Obesity

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

肥満とは?

 肥満は、愛犬・愛猫の健康に大きな影響を与える病気の一つです。肥満は単なる体重増加にとどまらず、心血管疾患、関節炎、糖尿病、呼吸器疾患など、さまざまな健康問題を引き起こします。さらに、肥満は寿命を短縮させるだけでなく、生活の質を低下させる可能性があります。適切な管理と治療を行うことで、これらのリスクを軽減し、愛犬・愛猫が健やかで幸せな生活を送れるようサポートすることが可能です。

 ペットオーナーの皆さんがまず認識すべきは「肥満は病気である」ということです。

肥満の原因

 

 肥満の主な原因は、エネルギーの摂取と消費の不均衡です。摂取カロリーが消費カロリーを上回ると、余剰のエネルギーが脂肪として蓄積されます。このエネルギーの不均衡を引き起こす要因として、以下のようなものが挙げられます。

1. 去勢・避妊手術後の代謝変化

 去勢・避妊手術を受けた愛犬・愛猫は、基礎代謝率が低下し、食欲が増加する傾向があります。この結果、カロリー摂取が消費を上回り、肥満のリスクが高まります。去勢・避妊手術=即肥満ではありませんが、特に、手術後に今まで通りのフードの質や量のままエネルギー摂取量を見直さない場合、体重が増加しやすくなります。

2. 過食と食事の質

 低繊維・高脂肪の食事、過剰なおやつの提供、自由採餌(常にフードを置いておくこと)などは、肥満のリスクを高めます。さらに、主にドライフードを与えることも肥満の要因とされています。

3. 運動不足

 屋内屋内飼育や飼い主の多忙により、愛犬・愛猫が十分な運動を行えない場合、エネルギー消費が低下し、肥満リスクが増加します。特に高齢の愛犬・愛猫では、活動量が自然に減少するため、注意が必要です。

4. 病気や薬剤の影響

 甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、糖尿病などの疾患や、一部の薬剤(抗てんかん薬やステロイド)も肥満の原因となります。

5. 飼い主の行動

 ペットオーナーの意識や行動も肥満に影響します。例えば、「太っている方が健康そう」という認識を持つ飼い主は、愛犬・愛猫に多くの食べ物を与える傾向があります。また、飼い主の年齢や収入も肥満リスクに関連するという研究結果があります。

肥満の症状

 肥満の症状は、初期段階ではペットオーナーが気付きにくい場合がありますが、以下のような兆候が現れることがあります。

 愛犬・愛猫が以前より運動を嫌がる、歩きたがらない、嗜眠が目立つ場合には肥満の可能性があります。また、多飲多尿や多食といった症状も肥満と関連することがあります。さらに、腰部のくびれがなくなり、体表に過剰な脂肪が感じられるようになった場合は要注意です。特に愛猫では、グルーミングが難しくなり、皮膚の状態が悪化することもあります。

 呼吸困難や跛行などの深刻な症状が現れる場合は、すでに肥満が進行している可能性が高いため、速やかに当院に相談してください。

肥満の診断/検査

肥満の診断には、以下の手法が用いられます。

1. 体重測定とボディコンディションスコア(BCS)の評価 
 体重測定は基本的な診断手法ですが、BCS評価も重要です。BCSは、愛犬・愛猫のシルエットや触診に基づき、5段階または9段階で評価します。9段階のスケールでは、スコア5が理想的で、スコアが高いほど肥満と判断されます。

2. 血液検査と尿検査 
 併発疾患(糖尿病や甲状腺機能低下症など)の有無を確認するため、血液検査や尿検査を行うことが推奨されます。これらの検査結果に基づいて、適切な治療計画を立てることが可能です。

3. 画像診断(必要に応じて) 
 超音波やX線検査などを用いて体脂肪量を測定することもあります。ただし、これらの検査は一般的な診療では実施されないことが多いです。

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この記事を書いた人

福山達也