充血 Hyperemia Pallor

充血とは?

 

 充血とは、歯ぐき、結膜、舌、唇、外陰部などの粘膜が、通常より赤く見える状態を指します。犬や猫では、粘膜の色は全身の循環状態を反映する重要なサインです。

 運動後、興奮時、暑い環境では一時的に粘膜が赤く見えることがあります。一方で、熱中症、敗血症、ショックの初期、薬物や中毒、副腎皮質機能低下症、アレルギー反応、肥満細胞腫など、重大な病気のサインとして充血がみられることもあります。

 歯肉炎や結膜炎のように一部だけが赤い場合は局所的な炎症のこともありますが、歯ぐきや結膜など複数の粘膜が全体的に赤い場合は、全身状態の評価が必要です。

充血の原因

 

 充血の原因には、生理的な反応と病的な反応があります。

 生理的なものでは、運動、興奮、暑さ、高温多湿の環境などがあります。犬では体温を下げるためにパンティングを行い、その過程で口腔粘膜が赤く見えることがあります。

 病的な原因としては、熱中症、敗血症、重度の炎症、ショックの初期、発熱を伴う感染症、呼吸困難、中毒、薬剤の影響、副腎皮質機能低下症、アレルギー反応、肥満細胞腫などがあります。

 薬剤では、血管を広げる作用のある薬、鎮静薬、一部の心血管薬、アルコール摂取、麻酔中の換気異常などで充血がみられることがあります。また、一酸化炭素中毒やシアン化物中毒では、粘膜が鮮やかな赤色に見えることがあります。

充血の症状

 

 充血では、歯ぐきが赤い、結膜が赤い、舌や口の中が赤い、耳や皮膚が赤く見えるなどの変化がみられます。

 原因によっては、パンティング、体温上昇、元気消失、ぐったりする、呼吸が速い、心拍が速い、震え、嘔吐、下痢、ふらつき、意識の変化、発熱、皮膚の腫れや痒みなどを伴うことがあります。

 特に、暑い環境にいた後に歯ぐきが赤い、呼吸が荒い、ぐったりしている、体が熱い、嘔吐や下痢がある場合は、熱中症の可能性があります。また、充血しているのに毛細血管再充満時間が長い、脈が弱い、意識がぼんやりしている場合は、ショックや重度循環不全の可能性があり緊急性があります。

充血の診断/検査

 

 診断では、まず粘膜の色、毛細血管再充満時間、体温、心拍数、呼吸状態、脈拍、意識状態、脱水の有無を確認します。毛細血管再充満時間とは、歯ぐきを軽く押して白くなった後、元の色に戻るまでの時間です。通常は0.5〜2秒程度です。

 病歴として、運動や興奮の有無、暑い環境にいたか、発熱、嘔吐、下痢、呼吸困難、薬の使用、中毒物質への接触、アレルギーの可能性、皮膚のしこり、既往歴などを確認します。

 検査としては、血液検査、血液化学検査、尿検査、電解質検査、血糖値、炎症反応、血圧測定、レントゲン検査、超音波検査などを行うことがあります。副腎皮質機能低下症が疑われる場合は、コルチゾール測定やACTH刺激試験を検討します。中毒が疑われる場合は、状況に応じて毒物関連の検査や処置が必要です。

充血の治療

 

 治療は原因によって異なります。

 暑さや運動による一時的な充血で、全身状態に問題がなければ、涼しい場所で安静にし、呼吸や体温が落ち着くかを確認します。ただし、熱中症が疑われる場合は緊急対応が必要です。

 熱中症では、冷却、点滴、酸素投与、循環管理、臓器障害の評価を行います。敗血症や重度炎症では、感染や炎症の原因を調べ、点滴、抗菌薬、入院管理などが必要になることがあります。

 副腎皮質機能低下症、アレルギー反応、肥満細胞腫、中毒、薬剤の影響が疑われる場合は、それぞれに応じた治療を行います。薬剤が関係している可能性がある場合でも、自己判断で中止せず、必ず獣医師にご相談ください。

充血の予防

 

 充血のすべてを予防することはできませんが、熱中症や中毒などは日常管理でリスクを下げることができます。

 暑い時期は、日中の散歩を避け、室温と湿度を管理し、十分な飲水ができるようにしてください。車内放置は短時間でも非常に危険です。短頭種、高齢動物、心臓病や呼吸器疾患のある愛犬・愛猫、肥満の犬猫は特に注意が必要です。

 人用薬、アルコール、殺虫剤、農薬、毒性植物、薬剤、サプリメントなどは、愛犬・愛猫が届かない場所に保管してください。定期的な健康診断により、心疾患、内分泌疾患、慢性炎症、腫瘍などの早期発見につながります。

充血の看護/その他

 

 ご自宅で粘膜の充血に気づいた場合は、まず全身状態を確認してください。暑い環境にいた場合は、涼しい場所へ移動し、安静にさせてください。呼吸が荒い、体が熱い、ぐったりしている場合は、すぐに動物病院へ連絡してください。

 観察するポイントは、歯ぐきや舌の色、呼吸の速さ、体温、元気、意識状態、嘔吐や下痢の有無、皮膚の腫れや痒み、服用した薬や誤食の可能性です。写真や動画を撮れる場合は、診察時に役立ちます。

 充血は、単なる興奮や暑さによる一時的な変化のこともありますが、熱中症、敗血症、ショック、副腎疾患、中毒など命に関わる病気のサインであることもあります。赤い粘膜に加えて、ぐったりしている、呼吸が苦しい、体が熱い、意識がぼんやりしている場合は、様子を見ずに早急に当院を受診してください。

pets
動物医療保険をお持ちの方は診察前に保険証を提示してください!

library_books
参考文献・資料等
  1. Ettinger’s Textbook of Veterinary Internal Medicine 9ed CHAPTER 26: Hyperemia Pallor  [壱岐動物病院訳]

  •  


<1>

[WR21,VQ21:]

■VMN Live

この記事を書いた人

福山達也