うちの子のフシギ Vol.10:猫はどうして暑いのに日なたで寝るの?

暑い夏の日。
エアコンの効いた部屋があるのに、
なぜか窓辺の日なたで気持ちよさそうに眠っている猫。

見ているこちらは、
「そんなところで暑くないの?」
と心配になってしまいます。

ところが猫にとって、
私たちが「ちょっと暑い」と感じる温度が、
必ずしも同じように暑いとは限りません。

今回は、猫が暖かい場所を好む理由と、
夏に気をつけたい「快適な暖かさ」と「危険な暑さ」の違いを
見ていきましょう。

猫は「暖かい場所」が好き?

猫と暮らしていると、
日なた、毛布の上、こたつの近くなど、
暖かい場所を選んで休んでいる姿をよく見かけます。

これには、猫の体温調節の特徴が関係しています。

動物には、
「熱的中性域(thermoneutral zone)」
と呼ばれる温度範囲があります。

これは、体温を維持するために余分なエネルギーを
あまり使わずにすむ環境温度の範囲です。

猫の熱的中性域は、人が一般的に快適と感じる室温よりも
高いことが知られています。

そのため私たちには
「そんな暖かいところで大丈夫?」
と感じられる場所でも、
猫にとっては心地よいことがあります。

日なたは猫にとって「天然の暖房」

日光が当たる場所では、
床や猫の被毛が暖められます。

そこで休むことで、
猫は自分自身でたくさんの熱を作らなくても、
外から熱を受け取ることができます。

つまり日なたは、
猫にとって利用できる
「暖かい休息場所」のひとつ
と考えることができます。

猫が窓から差し込む日光を追いかけるように
寝る場所を移動していくのも、
こうした快適な場所選びの一例かもしれません。

では、真夏でも暑くないの?

ここは誤解しないようにしましょう。


暖かい場所を好むことと、
暑さに無制限に耐えられることはまったく別です。

猫にも当然、暑すぎる温度があります。

そして暑くなれば、
猫はより涼しい場所へ移動したり、
姿勢を変えたりすることで、
自分にとって快適な環境を選ぼうとします。

そのため家庭では、
「猫は暖かいところが好きだから」と
部屋全体を暖かくしてしまうのではなく、
猫自身が暖かい場所と涼しい場所を選べる環境
を用意することが大切です。

猫自身に「選ばせる」ことが大切

猫の環境づくりで重要なのは、
私たちが「ここが快適だろう」と
一つの場所を決めてしまうことではありません。

日なたが好きなら日なたへ。
暑くなったら日陰へ。
さらに涼しい場所が欲しければ別の部屋へ。

その日の気温や時間帯、猫自身の体調によって、
快適な場所は変わります。

猫が自分で選択できるよう、
温度の異なる複数の休息場所を
用意してあげるとよいでしょう。

猫の環境についてのガイドラインでも、
安全で快適な休息場所を確保し、
猫が環境を選択できるようにすることは
大切な考え方のひとつとされています。

エアコンを嫌がる猫もいるけれど……

夏になると、
「エアコンをつけると猫が別の部屋へ行ってしまう」
という話を聞くことがあります。

だからといって、
「猫には冷房が必要ない」という意味ではありません。

冷たい風が直接当たる場所を避けている場合もありますし、
その猫にとって設定温度が低すぎる可能性もあります。

大切なのは、
エアコンの風を直接当てることではなく、
暑い日に室内全体が危険な高温にならないよう管理しながら、
猫自身が居場所を選べるようにすることです。

「日なたで寝ているから大丈夫」とは限りません

普段から日なたを好む猫を見ていると、
「猫は暑さに強いから大丈夫」
と思ってしまいがちです。

しかし、猫も高温環境では
熱中症(heatstroke)を起こす可能性があります。

特に、閉め切った部屋、車内、サンルーム、
物置や温室など、
猫が自分で涼しい場所へ移動できない環境は危険です。

夏は室温を確認するとともに、
新鮮な水をいつでも飲めるようにして、
日陰や涼しい休息場所も確保しておきましょう。

こんな様子があれば注意

猫が暑い環境にいたあとに、
次のような変化がみられた場合は注意が必要です。

  • 口を開けて激しくハアハアしている
  • 大量のよだれが出ている
  • ぐったりしている
  • ふらつく、倒れる
  • 嘔吐や下痢がある
  • 反応が鈍い、意識状態がおかしい

こうした症状は熱中症などの緊急状態で
みられることがあります。


涼しい場所へ移動させ、
速やかに動物病院へ連絡してください。

高齢猫や病気の猫では特に注意

猫が自分で快適な場所を選べることは大切ですが、
すべての猫が同じように上手に移動できるとは限りません。

高齢猫や運動機能が低下している猫、
体調を崩している猫では、
暑くなっても涼しい場所まで移動しにくいことがあります。

こうした猫では、
飼い主さんが室温や寝床の温度をより注意深く確認してあげましょう。

まとめ

暑い日に、日なたで気持ちよさそうに眠る猫。

私たちには不思議に見えますが、
猫は人間よりも暖かい環境を快適に感じることがあり、
日なたは暖かい休息場所のひとつになります。

でも、
「暖かい場所が好き」=「暑さに強い」ではありません。

猫にとって大切なのは、
暖かい場所、日陰、涼しい場所などの中から、
そのとき自分が快適な場所を選べること。

日なたでのんびりしていた猫が、
しばらくすると冷たい床へ移動している――。

そんな何気ない行動も、
猫が自分にとって心地よい環境を選んでいる姿なのかもしれません。


参考文献・資料

  1. Ellis SLH, Rodan I, Carney HC, et al.
    AAFP and ISFM Feline Environmental Needs Guidelines.
    Journal of Feline Medicine and Surgery.
    2013;15(3):219-230.
  2. Taylor S, St Denis K, Collins S, et al.
    2022 ISFM/AAFP Cat Friendly Veterinary Environment Guidelines.
    Journal of Feline Medicine and Surgery.
    2022.
  3. Feline Veterinary Medical Association.
    Meeting the Physical and Emotional Needs of Indoor Cats.
    Position Statement. 2025.
  4. Cornell Feline Health Center.
    Feline Heat Safety.
    Cornell University College of Veterinary Medicine.


※猫が快適と感じる環境には個体差があります。
本記事は一般的な情報を提供するものであり、
個々の猫の診断に代わるものではありません。
暑い環境で開口呼吸、ぐったりする、ふらつくなどの異常が
みられた場合は、速やかに壱岐動物病院へご相談ください。

この記事を書いた人

福山達也