乾性角結膜炎(KCS)

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

乾性角結膜炎(KCS)とは?

 乾性角結膜炎(かんせいかくまくえん)はKCS(Keratoconjunctivitis sicca)とも呼ばれ、人でいうドライアイといわれ、涙量の減少や涙の性質が悪くなって角膜や結膜が乾き、障害を起こす病気です。眼の表面が乾くことにより、結膜の充血や角膜の炎症や傷、色素沈着などを引き起こします。重度になると失明することもありますので注意が必要です。
 犬での罹患率は1%程度と言われていますので、100頭に1頭はかかる病気です。特に、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・ブルドッグ、ウェスト・ハイランド・ホワイト・テリア、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、シー・ズー、ブルドッグ、ボストン・テリア、パグ、ミニチュア・シュナウザー、ヨークシャー・テリアなどではよくみられ、中でも、パグとヨークシャー・テリアは、先天性の乾性角結膜炎も起こりやすい犬種と報告されています。猫での発生は少ないようです。

乾性角結膜炎(KCS)の原因

 乾性角結膜炎の原因については、先天性(涙腺の形成不全など)、特発性(原因が不明のもの)、自己免疫性疾患、眼瞼炎、涙腺の炎症、神経性(涙腺を支配する神経の外傷や疾患)、医原性(チェリーアイ手術時の瞬膜切除など)、外傷、薬物誘発性(サルファ剤、アトロピンなど)、ジステンパーウイルス感染、寄生虫、糖尿病甲状腺機能低下症副腎皮質機能亢進症などさまざまなものが考えられますあります。このうち免疫介在性と特発性のものが一般的だといわれています。

乾性角結膜炎(KCS)の症状

 目の表面の乾燥、眼脂(目ヤニのこと、特に油っこく粘稠性がある)、結膜の充血・浮腫、角膜の充血、色素沈着(眼の表面に黒い色素が入る)・潰瘍、眼瞼の痙攣などがみられることがあります。また、重度になると、視力の障害や消失に至ることもあります。
 また、角膜が常に乾燥しているので、目をくすったり気にしたりすることも多く、角膜潰瘍にもなりやすくなります。

乾性角結膜炎(KCS)の診断/検査

 問診や視診を行い、一般に各種眼科検査(涙液量測定:シルマー涙試験で15mm/分以下)、角膜染色、スリットランプ検査など)を行います。時に原因を突き止めるには血液検査血液化学検査尿検査なども必要になるかもしれません。

乾性角結膜炎(KCS)の治療

 乾性角結膜炎を引き起こす全身的な病気があれば、まずそちらの治療を行いますが、一般的には状態に応じて、目の洗浄や点眼薬・眼軟膏により治療を行います。点眼薬としては人工涙液、免疫抑制剤、二次感染の予防のための抗生物質、粘液溶解剤など、状況に合わせて数種類を組み合わせて使用します。また角膜潰瘍がある場合はその治療を行います。
残念ながら完治するケースは稀で、生涯治療が必要になることがほとんどです。そのため、人工涙液や点眼薬などで状態をコントロールしながら上手く付き合っていくことが必要となります。

乾性角結膜炎(KCS)の予防

 乾性角膜炎の明確な予防方法は特にはありませんが、好発犬種は、特に注意が必要で、早期発見・早期治療が重要です。疑わしい症状がみられた場合は早めに当院を受診してください。
 ご家庭では、目の周囲を清潔に保つ事も状態の悪化を防ぐために重要です。

乾性角結膜炎(KCS)の看護/その他

 乾性角膜炎は定期的な検査と治療の継続が必要です。涙液量の改善がみられたら、眼軟膏または点眼などの回数を減らしていきますが、中止するとほとんどが再発してしまいます。
 ご家庭では人工涙液など眼球表面の保湿を心がけてください。

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参考文献・資料等
  1. 犬の内科診療 Part2; 380-388:乾性角膜炎
  2. 犬と猫の日常診療のための抗菌薬治療ハンドブック;131-139:眼感染症


<1>乾性角結膜炎に罹患した犬における上強膜シクロスポリン徐放性インプラントの適用: 予備研究
<2>イヌジステンパーウイルス誘発性乾性角結膜炎
<3>犬のToxoplasma Gondiiに関連した角結膜炎
<4>第三眼瞼切除における犬の眼表面への影響
<5>犬の乾性角結膜炎: 229症例の再評価による疾患の傾向
<6>乾燥性角結膜炎の犬においてタクロリムス0.02%水溶性懸濁剤の局所適用が涙液産生に及ぼす影響
<7>犬の乾性角結膜炎および慢性表在性角膜炎に対する局所ピメクロリムスの効果: 試験的研究の結果
<8>涙点閉塞術を利用した犬の乾性角結膜炎の治療
<9>エトドラクの投与に関連した犬の乾性角結膜炎:211例(1992-2002) 

この記事を書いた人

福山達也