犬コロナウイルス感染症(CCV)とは?
犬コロナウイルス感染症は、犬コロナウイルス(CCV)によって起こるウイルス性の感染症です。消化管に感染し、下痢や嘔吐の症状をおこします。但し、犬パルボウイルス感染症ほど重篤となることは少なく、成犬が犬コロナウイルスに感染しても通常は1週間程度で回復したり、症状の出ない不顕性感染で終わることも少なくありません。しかし、仔犬が感染した場合、激しい胃腸炎を起こし、ひどい場合には死に至ることもあります。
また犬コロナウイルス感染症は、犬パルボウイルス感染症と混合感染することが多く、その場合はより重篤な症状となり、死亡する危険性がより高まります。
人の呼吸器疾患で問題になる、SARS、MERS、新型コロナウイルス(2019-nCoV)は同じコロナウイルス科ですが、ベータコロナウイルス属で、犬のコロナウイルスはアルファコロナウイルス属ですので、型が違います。現時点(2020年7月)で新型コロナウイルス(2019-nCoV)に関して世界で猫や犬のPCR陽性や抗体陽性が確認されていますが、重篤な症状を起こした報告はありません。
犬コロナウイルス感染症(CCV)の原因
原因は犬コロナウイルス(canine coronavirus:CCV)の感染です。ウイルスの形状が太陽から吹き出すコロナに似ていることからこのように呼ばれています。
このウイルスに感染している犬の嘔吐物や糞便などを口から取り入れることで感染します。
犬コロナウイルス感染症(CCV)の症状
仔犬が感染した場合、下痢、嘔吐、元気消失、食欲不振などの症状が現れ、激しい胃腸炎を起こします。糞便はオレンジ色をおびた粥状で悪臭を放ち、血便となることもあります。症状がひどい場合には死に至ることもあり油断はできません。またこの犬コロナウイルス感染症は、犬パルボウイルス感染症と混合感染することが多く、その場合は重篤な症状となり、死亡する危険性がより高まります。
成犬では一般に無症状なことが多いのですが、下痢が長引く場合は脱水症状を起こし、さらに犬パルボウイルスと混合感染することで、症状が重くなり死にいたる場合もあります。
犬コロナウイルス感染症(CCV)の診断/検査
通常はワクチン接種歴や症状などから疑って治療を開始します。確定診断には外部検査機関に血液や糞便を送って遺伝子検査、抗体検査などを行う必要があります。
犬コロナウイルス感染症(CCV)の治療
犬コロナウィルスそのものを排除するような治療法はなく、症状により対処療法を行います。
下痢をしている場合は下痢止の投与、脱水時には点滴による治療などを行い、その他二次感染防止のために抗生物質などを投与します。また、飼育管理を良好にし、食事療法を行い、免疫力を高めます。
犬コロナウイルス感染症(CCV)の予防
犬コロナウィルス感染症はワクチン接種で防げる病気です。
仔犬を飼い始めたらすぐに動物病院で健康診断を受け、適切なワクチンの接種時期や回数について相談するようにしましょう。また、成犬や老犬になってからも、定期的にきちんとワクチン接種を行いましょう。
※現在流通している犬用ワクチンがSARS、MERS、新型コロナウイルス(2019-nCoV)に対する交叉的な防禦能を示すというエビデンスは全く存在しません。
犬コロナウイルス感染症(CCV)の看護/その他
多頭飼育をしている場合には、他の感染症と同様に感染した犬の速やかな隔離と徹底した消毒を行う必要があります。
マレーシアで肺炎を起こした人から犬のコロナウイルスが検出されたという報告があります。今後広がるのかが注視されています。[1]
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参考文献・資料等
<1>コンパニオンアニマルにおけるコロナウィルス感染: ウイルス学、疫学、臨床的および病理学的特徴
<2>フェレット、猫、犬、および様々な動物におけるSARSコロナウイルス2に対する感受性について
<3>オーストラリアンドッグにおける犬コロナウイルス
<4>イヌコロナウイルスに対する新しい犬由来改良生ウイルスワクチンの効果
<5>犬における非定型犬コロナウイルスの検出と同定のためのPCR法
<6>ガラパゴス諸島のイサベラ島における犬猫の感染症
[WR2105,VQ2105:]