下痢:Diarrhea

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

下痢とは?

小腸性下痢と大調性下痢の鑑別 下痢(げり)とは、水分の多い液状あるいは液状に近い便が排泄される状態です。ただ、一般には、これに加えてやや柔らかい便(軟便)、量が多くなった便、頻繁に便をするなどという場合も下痢と言われます。下痢はまず、大きく急性の下痢と慢性の下痢に分けられます。ここ数日以内に下痢をするようになった場合が急性の下痢で、2週間以上も続くようになったものが慢性の下痢です。

 次に、下痢の原因箇所によって、小腸性か大腸性(もしくはその区別がつかないこともあります)に分けられます。

下痢の原因

 下痢は食事、腸の炎症、細菌やウイルス、寄生虫の感染、異物、腫瘍、薬物、ストレスなどさまざまな原因で起こります。

下痢の症状

 症状は下痢ですが、軟便など柔らかいものから水様のもの、血液が混じった血便など状態は様々です。下痢の状態をできるだけ詳しく獣医師に伝えることは診断の手助けになります。また、スマートフォンなどで下痢の写真を撮影したり、容器などに入れて持参していただけると診断の助けになります。

 便の様子は、軟便なのかそれとも下痢なのか、あるいは水のような便なのか、下痢便の量は多いかどうかも重要です。一般に小腸に問題がある場合には多く、大腸の問題の場合は普通か少な目なものです。また、1日何回くらい下痢をするのかも診断の助けになります。小腸の場合はやや回数は多く、大腸の場合は量は少なくても回数が非常に多いのが特徴です。これらを伝えていたいただけると診察の助けになります。

下痢の診断/検査

 急性の下痢で元気も食欲もある場合には、小腸性でも大腸性でもそれほど深刻な病気はありませんので、検査としては、身体検査と糞便検査程度を行うのが一般的です。

壱岐動物病院糞便スケール
壱岐動物病院糞便スケール
 しかし下痢が2週間以上続いている慢性の場合や、急性でも元気がない、熱がある、嘔吐や腹痛などの全身症状を伴っている場合にはより深刻な病気などが疑われますので、全身を調べるための血液検査血液化学検査尿検査レントゲン検査超音波検査、時には造影検査、内視鏡、CT、グラム染色検査、便の細菌培養、ウイルス検査ホルモン検査などより広範囲の検査が必要になります。特に高齢の猫では甲状腺機能亢進症が多いのでT4を測定することは重要です。
 「下痢」というだけでも原因を突き止めるのは大変なことがあります。急性でも激しい症状がある場合や慢性下痢の動物については多くの検査が必要です。診断も難しいことがあるということを知っておいてください。このような場合、検査にはかなりの時間と費用がかかることを理解してください。※診察の時に、どのくらいのウンチの硬さかをこのページの「糞便スケール」の番号(スコア)で知らせて頂ければ、診断の手助けになります。

下痢の治療

 急性で元気があり、他に症状がなければ、原因をつきとめるために検査などをするのは時間と費用がかかってしまうため、通常は対症療法で下痢止め(例:ディアバスター®錠)や整腸剤(例:ビオイムバスター®錠、Slab51など)、処方食、脱水に対しては点滴治療・経口補液剤どで様子を見ます。
 急性でも全身状態が悪いとか対症療法で改善が見られない、慢性下痢(2週間以上下痢が続いている)の場合には正しい検査、診断に基づいて原因に対処します。治療法は原因により様々です。
 よく急性の下痢で抗生物質を処方されている動物を見かけますが、当院では急性の下痢で抗生物質を処方することは滅多にありません。事実報告でも急性下痢に対する抗生物質の効果は期待できないというものがほとんどです[3][4]。むしろ食餌を改善したりプレバイオティクス、プロバイオティクス製剤などを用いるほうが効果的です。もちろん抗生物質を使わなければいけない下痢もありますが、下痢の場合に毎回安易に抗生物質が処方されているようであれば理由を尋ねたほうがいいと思います。抗生物質の安易な使用は耐性菌(抗生物質の効かない菌)の出現につながる可能性がありますので、特に最低でもグラム染色なども行われていなければ??と思ったほうがいいでしょう。

▲上記の食物アレルギー用療法食は当院でも処方可能です。当院での診察・診断・処方後オンラインでのご購入となります。詳しくは当院にお尋ね下さい。

▲上記の療法食は当院でも購入可能です(注文の場合もあります)し、オンラインでのご購入可能です。必要な方は専用の病院コードを発行致しますので、当院受付でお申し出ください。
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▶なお、当院では下痢の治療に、許可を得て海外から輸入した薬剤(日本未発売などの理由)を用いることがありますので、ご了承下さい。

下痢の予防

 まず、日頃からきちんとしたペットフードを適正に与え、ワクチン[]で予防できる病気を予防することは基本です。また、下痢や軟便になったら、よく愛犬や愛猫を観察し、重大な問題、あるいは長く続く問題があれば、早めに当院にご相談下さい。

 動物病院に行くかどうかの目安は、激しい下痢をしているか、1日に何回も下痢していれば、体から水分などが急速に失われます。それだけで病院に行く必要性があります。次に、全身症状があるかということです。元気消失食欲がなく、下痢している場合や嘔吐、腹痛もある場合には、様々な病気が疑われます。その他、下痢の中に多くの血が混じっている場合、下痢便が黒い場合、異物を飲み込んだり中毒の可能性がある場合はすぐに当院にご連絡下さい。
 慢性的に下痢や軟便が続く場合はプロバイオティクスサプリメントを試してみるのもいいと思います。フォーティフローラ[犬用猫用]、など処方いたしますので、お申し出ください。

■こんな下痢はすぐに当院にご相談下さい。

01 激しく下痢をする。
02 何回も下痢をしている。
03 元気も食欲もない。
04 下痢だけでなく、嘔吐も見られる。
05 下痢に血が多く混じっている。便が黒い。
06 脱水して皮膚に張りがなく、目がくぼんでいる。
07 下痢の回数は少ないが、数日以上続いている。
08 下痢していて、徐々に体重が減ってきた。
09 下痢に虫がいる。
10 中毒の可能性がある。

下痢の看護/その他

 下痢は回数が多かったり、慢性の場合には水分や栄養などを多く失います。ご自宅では動物用の経口補液剤を補助的に用いるとよいでしょう。当院で販売しておりますので、お買い求め下さい。たかが下痢と思い込んでの素人療法は避けて(絶対に人間用の薬は家庭では飲ませないでください)ください。

 下痢の場合、軽度の脱水で自分でお水が飲める場合は、動物用の経口補液剤(電解質サポート)を処方致しますので、水ではなくそちらを使ってください。これは病気の時や熱中症予防などにも使えますので、常備されておくといいと思います。
【使用方法】
・電解質サポート1袋(29g)を、ぬるま湯(約50℃)約500mlに溶かし、約530mlの電解質補助液として使用します。
・冷蔵庫で約24時間保存可能です。

最近は、下痢や嘔吐で自己判断でネットで購入した薬剤や処方食を使う方がいますが、往々にして間違った薬の量や期間だったり、間違った処方食を選択したりと状況が悪くなります。きちんとした診断と処方を受けましょう。

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ペット医療保険無料資料請求壱岐動物病院ではすべての動物医療保険がご利用いただけます。窓口精算が可能なのはアニコム損保、アイペットとなります。ペットも医療保険の時代です。ペット医療保険未加入の方はどなたでも下記から無料資料請求やオンライン見積もり、加入が可能です。ワンちゃんや猫ちゃんを飼育したら「下痢」になる前にきちんと動物医療保険に加入しましょう。
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参考文献・資料等
  1. 小動物臨床における診断推論.53-68
  2. 伴侶動物治療指針 Vol.1;119-127:犬と猫の慢性下痢の治療
  3. Pharmaceutical Prescription in Canine Acute Diarrhoea: A Longitudinal Electronic Health Record Analysis of First Opinion Veterinary Practices
  4. Effect of amoxicillin-clavulanic acid on clinical scores, intestinal microbiome, and amoxicillin-resistant Escherichia coli in dogs with uncomplicated acute diarrhea
  5. Proposal for rational antibacterial use in the diagnosis and treatment of dogs with chronic diarrhoea


<1>フェレットの下痢に対する臨床家の見通し
<2>慢性下痢の猫に対する診断および治療法のアプローチ
<3>猫における慢性小腸疾患の診断:100例(2008-2012)
<4>出血性下痢症に罹患した犬における軽度から中程度の脱水に対する治療のための経口電解質液に関する評価
<5>正常な糞便あるいは下痢便をする、フロリダ州の動物保護施設にいる猫において同定された腸病原体
<6>そりレース犬における下痢の罹患率および腸管病原菌
<7>慢性下痢の犬における腹部超音波検査の診断的有用性
<8>超音波検査所見、臨床活性インデクス(CIBDAI)、および慢性腸症の犬の診断における比較
<9>プロバイオティクス大便連鎖球菌SF68が、アニマルシェルターに保護されている犬猫の下痢の存在に与える影響<10>ビーグル犬の慢性下痢に対する食事とタイロシンの効果
<11>犬におけるタイロシン反応性慢性下痢
<12>動物シェルターにおける犬の下痢に関する疫学的評価
<13>下痢をしている犬に対する一般的な診断的糞便検査の評価
<14>分泌性下痢の病理生理学において腸の神経系が持つ役割

この記事を書いた人

福山達也