犬フィラリア症:犬糸状虫症

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

犬フィラリア症とは?

 犬フィラリア症は、犬糸状虫症とも呼ばれる白いそうめん状の寄生虫(犬糸状虫:Dirofilaria immitis ディロフィラリア イミティス)の感染によって発生する病気です。犬糸状虫は犬から犬へと直接伝播していくのではなく、蚊の存在を必ず必要とし、フィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を含む感染犬の血を吸った蚊が再び吸血することで感染します。
 犬糸状虫の成虫の大きさは大きい場合はメスで30cm程度、オスで15cm程度もあります。成虫は心臓(正確には心臓に帰ってきた静脈血を肺に送り出す血管である肺動脈)に寄生するため、循環障害と血管に対する傷害を引き起こします。これが原因となり犬糸状虫の症状が発生します。症状の重症度は、主に心臓の大きさと感染親虫の数に左右されますが、心臓の小さい小型犬では極少数の糸状虫感染によって重篤な症状に陥ることになります。フィラリアが寄生することで血液の流れが妨げられるために心臓・肝臓・腎臓等に障害を起こす寄生虫症で、死亡率の高い病気です。
 また、一般に犬フィラリア症と言われるので、犬だけに感染すると思われがちですが、猫や人にも感染します。日本では約100人のヒトの症例が報告されていますし、猫では感染すると犬より症状は重篤で、突然死などを起こします。愛犬や愛猫を守るベストの対策は予防薬や予防注射をすることです。

犬フィラリア症の原因

犬フィラリア症の生活環

犬糸状虫:(Dirofilaria immitis ディロフィラリア イミティス)の感染により起こります。フィラリアに感染している犬の体ではミクロフィラリア(L1)と呼ばれる幼虫が血液とともに全身をまわっています。蚊がこの犬から吸血することによって蚊の体内に入り込んだミクロフィラリアは2回の脱皮を行い、1mm程度に成長した感染幼虫(L3)となります。この蚊が他の犬を吸血した時に感染幼虫が犬の体内に侵入し、感染が成立します。 [▷血液中のミクロフィラリア動画]

犬の体内に入った感染幼虫は、1~2ヶ月の間は皮下組織や脂肪組織内で成長し、静脈内に進入してからは徐々に心臓へ移動します(L4:体内移行幼虫)。約100日後には心臓に到達して、心臓に移動してからは肺動脈で成長し、約6ヶ月で成虫(L5・成虫)になります。成虫になったフィラリアはたくさんのフィラリアの幼虫(ミクロフィラリア)を生みます。こうしてフィラリアは広がって行く事になります。つまり、感染している犬がいる限りフィラリア症は無くならないのです。


▲犬の血液中のフィラリア仔虫

犬フィラリア症の症状

 犬では、初期には気づかれずに進行するので要注意です。食欲低下や発咳(物が詰まったような咳と表現されます)が初期症状として見られ、散歩や運動不耐性(運動を嫌がる)、失神、異常呼吸などが見られます。症状が進むと血液循環障害を起こし、肺高血圧症、肝臓障害や腎臓障害なども併発して、削痩(痩せること)、低蛋白症、腹水、貧血、血色素尿(真っ赤なオシッコ) などが見られるようになり、重篤な場合には、慢性経過をとって死亡したり、突然死してしまいます

猫は主に呼吸困難・咳などの呼吸器症状を起し、突然死する場合もあります

人間に感染した場合、ほとんどが肺に感染し、そのために咳や血痰・呼吸困難などの症状が見られます。また、発熱や皮膚の肥厚がみられ、象のような皮膚になるなどの症状(象皮病)がみられます。

犬フィラリア症の診断/検査

 血液検査、血液(抗原)検査で感染を調べます。また、状態を把握するためにレントゲン検査超音波検査血液化学検査尿検査なども必要になります。

犬フィラリア症の治療

 投薬や成虫の外科的摘出、対処療法などを行いますが、この病気は現在確実な予防薬が開発されております。治療する病気と言うよりは予防する病気です

犬フィラリア症の予防

 予防薬や予防注射により確実に予防ができます。犬の体内に侵入した犬糸状虫はすぐに血管内に侵入するわけではなく、3〜4ヶ月程度皮下組織で発育・成長します。予防薬や予防注射はこの時期の感染仔虫を駆虫する薬です。つまり、予防薬は感染仔虫が犬の「体内に侵入することを予防する薬ではなく」、 感染仔虫が「血管内に侵入するのを予防する薬」であることを理解すべきです。
 また、予防薬の投与期間は蚊の発生期間が地域によって異なるため注意が必要です。さらに、フィラリア感染時の投薬による副作用が知られておりますので、予防薬を投与する前に、フィラリア感染の有無を検査することが重要です。フィラリア予防を始める際には、予防期間や検査などについてお気軽に当院にご相談ください。
 現在フィラリア症状予防薬には、錠剤、チュアブル、スポットオン(滴下型)、注射など様々なタイプがあります。お薬が飲ませられなくても滴下型や注射などもありますので、それぞれのワンちゃんに合わせてきちんと予防してあげましょう。

犬フィラリア症の看護/その他

 この病気は予防薬で100%予防可能です。しかし、昨今の温暖化やヒートアイランド現象によって気温の高い日が続き、蚊体内で仔虫の発育・成長が投薬期間以上に継続した場合は、投薬終了後に感染能力のある仔虫が蚊によって伝播される可能性があります。また、投薬をしたつもりで実は後で犬が吐き出してしまっている可能性はないでしょうか? これらの状況では、「予防薬を飲ませていたのにフィラリアになっている」かもしれません。できるだけ早く感染を知ることは今後の予防薬を決定するためにも重要な情報です。前年のフィラリア予防が確実にできたかどうかを判定するためにも、毎年一度は必ず血液(抗原)検査を行いましょう。
 フィラリアは心臓に寄生する寄生虫です。ですから寄生する全身の様々な臓器や器官に影響を与えます。また、フィラリアに寄生されると全身麻酔鎮静のリスクが高くなったり、様々な病気の治療に影響や制限が出ます。
 正直犬フィラリア症は昭和の病気です。もう都会ではほとんど見ない病気ですが、田舎ではまだまだドッグオーナーでも意識の低い人がいて、未だにフィラリア症を見かけます。フィラリア症はフィラリアに感染している犬の血を蚊が吸って、他の犬に感染させていきます。ですから、みんなが予防をすればうつす元がいなくなるのです。犬を飼育したらフィラリア予防をすることはドッグオーナーの最低限の常識だし、義務です
※また、せっかく採血するのですから、フィラリアの検査と一緒に血液検査を行い、年に一度内臓などのチェックを一緒に行うことをお勧めします。フィラリア検査と一緒に行えば、採血料などがかかりませんし、割安で検査できます。詳しくは当院にご相談下さい。

pets
動物医療保険をお持ちの方は診察前に保険証を提示してください!

ペット医療保険無料資料請求壱岐動物病院ではすべての動物医療保険がご利用いただけます。窓口精算が可能なのはアニコム損保、アイペットとなります。ペットも医療保険の時代です。ペット医療保険未加入の方はどなたでも下記から無料資料請求やオンライン見積もり、加入が可能です。ワンちゃんや猫ちゃんを飼育したら「フィラリア症」になる前にきちんと動物医療保険に加入しましょう。
※アニコム損保の動物医療保険に関する詳しい資料のご請求、お見積り、お申込みは下記バナーからどなたでも可能です。

オンライン見積もり・無料資料請求

library_books
参考文献・資料等
  1. Heartworm Guidelines -AHS-
  2. 犬の内科診療 Part2; 286-293:犬糸状虫症


<1>猫の糸状虫症: ABCDによる予防と治療・管理に関するヨーロッパのガイドライン
<2>Dirofilaria immitis(犬糸状虫)を実験感染させた犬におけるミクロフィラリア血症の季節性および日内変動
<3>ヨーロッパでフェレットに認められた幼虫の異所性体内移行を伴う原地性犬糸状虫感染
<4>リアルタイム蛍光共鳴エネルギー移動PCR法と融解温度曲線分析法を用いたベクターとなる蚊および犬における犬糸状虫の迅速な検出
<5>ハンガリーの人フィラリア症: 中央ヨーロッパにおける新しいズーノーシス
<6>猫の犬糸状虫症: 臨床再評価
<7>犬糸状虫の流行地域における家庭内猫への蚊の誘引
<8>超音波検査法を用いた猫における 犬糸状虫症の診断:43症例 (1985-1997)
<9>カナダにおける犬糸状虫検査について: それは有効なのか?
<10>犬糸状虫感染症から防御するため雑種犬に予防的に投与した持続放出型モキシデクチン注射薬の活性
<11>4頭のフェレットに対する心糸状虫成虫駆除を目的としたモキシデクチン(ProHeart 6)の使用
<12>猫の犬糸状虫感染症: 北イタリアで生活する無徴候の猫における血清学的調査
<13>犬糸状虫を実験的に感染させた犬における腎臓の超微細構造の変化
<14>中央イタリアの犬におけるDirofilaria (Nochtiella) repensのミクロフィラリアに関連した皮膚病
<15>フィラリア幼若虫の感染犬における月一回のフィラリア予防薬の効果
<16>イベルメクチンによる犬疥癬症治療における推奨される新しい治療プロトコール
<17>Dirofilaria immitis感染後に様々な間隔でイベルメクチンまたはミルベマイシンによる治療を開始した犬の反応について
<18>犬糸状虫(Dirofilaria immitis)の成虫感染が認められ、ミクロフィラリア血症の犬にミルベマイシンオキシムとスピノサドを経口的に併用投与した場合の効果
<19>致死的な犬糸状虫症に罹患した猫1頭における肺のマルチスライスコンピュータ断層撮影血管造影
<20>アメリカ合衆国とカナダにおける猫の犬糸状虫感染の血清陽性率、血清陽性に対する危険因子、および犬糸状虫予防薬の処方頻度
<21>臨床における病理学 猫の突然死の原因となったD immitisによる肺血栓塞栓症
<22>肺葉切除術を受けた、犬糸状虫感染犬におけるアナフィラキシー様反応
<23>全国狩猟犬クラブの会員における犬糸状虫症の予防の失敗に関連した危険因子
<24>犬の犬糸状虫予防の失敗が疑われる症例の発生に診断検査の精度と治療の効果が与える影響
<25>犬糸状虫が重度に寄生している犬52頭における2種類の犬糸状虫釣り出し装置の比較
<26>実験モデルおよび犬糸状虫感染犬での肺塞栓症の評価を目的としたコンピュータ断層血管造影
<27>実験的に犬糸状虫症に感染させた犬の発症前の時期および発症早期に関連したコンピュータ断層撮影上の変化
<28>5頭の犬における犬糸状虫による血性の喀痰-犬の糸状虫症におけるまれな症状
<29>ガラパゴス諸島のイサベラ島における犬猫の感染症
<30>犬の糸状虫性大静脈症候群に対する低侵襲外科治療の結果:42例(1999-2007)
<31>犬糸状虫症におけるボルバキア属菌の新しい役割
<33>犬糸状虫(Dirofilaria immitis)の成虫を実験的に感染させた犬におけるイベルメクチンとミルベマイシンオキシム
<34>猫2頭におけるDirofilaria immitis成虫の除去に対するニチノール・グースネック・スネアー(nitinol gooseneck snare)カテーテルの使用
<35>猫の犬糸状虫症:診断および管理
<36>猫の犬糸状虫症:病気の構造
<37>ハリケーン被災地域であるGulf Coastから輸出された犬猫における犬糸状虫、猫白血病ウイルス、および猫免疫不全ウイルスの血清陽性率
<38>犬および猫のイヌ糸状虫症:予防、治療、そして治療の合併症
<39>犬および猫のイヌ糸状虫症:生活環、病態生理学、そして診断
<40>犬糸状虫陽性猫における肺血栓塞栓症
<41>犬糸状虫症が流行している地域において飼育されている非在来種猫における自然発生性のDirofilaria immitis感染率
<42>少数の犬糸状虫が寄生した犬における、3種の犬糸状虫抗原検査キット製品の結果に関する比較
<43>犬および猫のフィラリア検査の最新情報

<<VMNオンデマンド>>

この記事を書いた人

福山達也