脂漏性皮膚炎

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脂漏性皮膚炎とは?

脂漏性皮膚炎(しろうせいひふえん)とは皮脂腺の異常分泌や代謝性の異常あるいは体質など先天的な皮脂腺の異常から起こったり、アレルギーなどの基礎疾患が原因となって皮膚の角化が更新してべたつきやフケが見られる皮膚炎です。皮膚には細菌などの微生物やアレルゲン、紫外線など、さまざまな外部の刺激から最前線で体を守り、さらに内側からの潤いをキープするバリア機能が備わっています。特に犬の皮膚はヒトよりも薄く、非常にデリケートで、このバリア機能が低下すると皮膚の状態が悪くなり、乾燥しすぎたり脂っぽくなったりしてしまいます。この状態を脂漏症(しろうしょう)とよびます。

犬では特にアメリカン・コッカー・スパニエル、ゴールデン・レトリバー、シー・ズー、ジャーマン・シェパード・ドッグ、プードル、ラブラドール・レトリバー、ビーグル、ドーベルマン・ピンシャー、ラブラドール・レトリバーなどがなりやすいとされています。

脂漏性皮膚炎の原因

脂漏症には様々な原因がありますが、大きく分けると2つのタイプに分類されます。1つは遺伝的に皮膚の角化(ターンオーバー)がうまくいかない場合です。ターンオーバーとは、表皮を校正する細胞の大部分である角化細胞ができてから役割を終えて垢やフケとなって剥がれ落ちるまでの課程のことです。このターンオーバーがうまくいかない代表的な犬種としては、アメリカン・コッカー・スパニエル、イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、ウエストハイランド・ホワイト・テリア、バセット・ハウンド、ダックスフンド、シャーペイ、シー・ズー、プードル、ラブラドール種などが挙げられます。このタイプは脂漏症を完治させることは難しく、体質として脂漏症と付き合っていく必要があります。

もう1つは体質とは関係のない、後天的な要因でターンオーバーがうまくいかなくなってしまうタイプです。具体的には甲状腺ホルモンや副腎皮質刺激ホルモン、性ホルモンなどホルモン分泌量異常によるもの。食事中の脂肪分の不足や質により皮脂の量が減ってしまったり、ミネラルやビタミンの不足により皮膚に必要な栄養が足りないもの。その他、アレルギー、寄生虫、真菌感染、薬の副反応、あるいは誤ったスキンケアが行われているといったものが挙げられます。

脂漏性皮膚炎の症状

脂漏性皮膚炎の主な症状は激しい痒みや、ベタつき、フケ、脱毛、発疹、紅斑、かさぶたなど様々です。また、体臭が強くなるのも特徴の一つです。脂漏性皮膚炎は大きく分けると「油性(ベタついたもの)」と「乾性(カサカサしたもの)」に分けられます。

油性の場合、皮脂が過剰になり、皮膚や被毛はベタベタと湿気ていて油っぽく、黄色っぽい油性の分泌物の塊が皮膚や被毛に付着していることがあります。

一方、乾性では、皮膚が乾燥してカサカサしていて、油っ気がなく、異常にフケがでます。

どちらも痒みのため掻いたり、舐めたりを繰り返してしまいます。

脂漏性皮膚炎の診断/検査

 脂漏性皮膚炎かどうかは視診でほぼわかりますが、原因を追求するためには、問診、身体検査、各種皮膚科検査、血液検査血液化学検査ホルモン検検査などが必要になることがあります。

脂漏性皮膚炎の治療

脂漏症を治療する場合、ターンオーバーがうまくいかない理由の一つとして基礎疾患の関与があります。例えば、甲状腺ホルモン(甲状腺機能低下症)や副腎ホルモン(副腎皮質機能亢進症)、性ホルモンなどによる基礎疾患、細菌による膿皮症や寄生虫、真菌感染、アトピー性皮膚炎などを治療、あるいはコントロールすることが大切です。基礎疾患を管理することで脂漏症の管理もしやすくなることがあります。遺伝的に体質が関与している場合、または原因を治療している間はスキンケアや飲み薬による管理、環境管理、食事管理などを組み合わせて行います。

脂漏性皮膚炎にはマラセチアという真菌(酵母)が関与していることが多くあります。マラセチアはもともと皮膚に存在する常在菌なので、すべてをなくすことは不可能です。ですので、薬用シャンプーすることで増えすぎてしまったマラセチアの数を減らし、マラセチアのエサとなる脂も洗い落とします。脂漏の重症度に応じてシャンプーの種類や頻度を決めます。また、脂漏性皮膚炎に対応したシャンプーは脂を落とす作用が強いので、必要な皮脂まで洗い流し皮膚バリア機能を弱らせないよう、コンディショナーなど保湿剤を使用することも推奨されています。セラミドなどが配合された1回使い切りタイプのものや、気軽に使えるスプレータイプのコンディショナーなど様々なものがありますので、使い勝手に合わせて選択します。

シャンプー療法について
局所的な皮膚疾患(ある一部分や数カ所小さな病変)には外用薬を処方することがありますが、動物の皮膚疾患の治療には薬用シャンプーをよく用います。それは、皮膚の性質や毛があるために、広範囲に皮膚疾患がある場合、外用薬(塗り薬)よりも効果的で費用対効果が高く、薬を舐めてしまうことも防げるためです。そのため、皮膚疾患のある場合はトリミングサロンを併設した動物病院を受診すると良いでしょう。

その他、増えすぎたマラセチアに対して抗真菌薬を使用したり、痒み止め、抗炎症剤、サプリメントなどを用いたりします。

皮膚は表面にある脂質バリアで、 皮膚の健康を維持します。その脂質バリアの機能を維持するためにPCSO- 524含有サプリメントを用いるのも補助治療の一つです。

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アンチノールは、PCSO-524を含むニュージーランドのきれいな海で育ったモエギイガイから新鮮な状態で熱をかけずにオイル抽出した脂肪酸(DHAやEPAなどのオメガ-3脂肪酸を含む91種に及ぶ脂肪酸が含まれています)の製品で、熱をかけていないので、脂肪酸の働きを十分発揮できるとされています。実は我が家の愛犬も飲んでおります。
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脂漏性皮膚炎の予防

食生活などを含めた生活習慣の改善、環境の改善が予防に繋がると考えられています。副食(おやつ)が多い食事などを避け、バランスの取れた良質のペットフードと新鮮な水を与えるようにして、温度、湿度など生活環境を整えてあげましょう。脂漏症性皮膚炎は高温多湿で悪化します。そのため、梅雨時や夏場は、クーラーや除湿機で温度と湿度を管理しましょう。冬場は暖房が効きすぎていると皮膚が乾燥して、かえって症状が悪化することがあるので注意が必要です。

太った体型は、余計なしわが多くでき、こすれたり、蒸れることで皮脂の過剰分泌を招き、マラセチアの増殖を促し、脂漏症を悪化させることがあります。太りすぎの場合は、食事管理でダイエットすることも必要になります。

ノミ・ダニはきちんと動物病院で処方される製剤を使い、確実に予防することが大事です。

また、被毛の多い、長毛の場合は暑い時期に蒸れないようこまめなトリミングや短めにカットすることで不快感の軽減、その他の皮膚病の予防に繋がります。

皮膚の変化に早く気づけるように日頃からスキンシップをしてこまめに皮膚などチェックしていきましょう。犬が体を痒がる、皮膚が脂っぽい、体臭が気になる、フケが多いなど、それまでとは明らかにおかしい症状がみられるの場合は、なるべく早めに当院にご相談ください。

定期的なトリミングによりプロのトリマーさんに皮膚や被毛を見てもらうことは早期の発見に重要です。特に動物病院併設トリミングショップは皮膚病発見や予防、治療に強い味方になります。

定期的なシャンプーは非常に効果的ですが、シャンプー剤の選択と間隔が重要になります。ご自宅でシャンプーされる場合は動物病院で処方される薬用シャンプーを用い、トリミングに出す場合はそのシャンプーを持参して洗ってもらうとよいでしょう。

※当院併設のトリミングショップBOW-MEOWでも薬用シャンプーをお受けしておりますが、当然、店内感染防止のため、混合ワクチン接種などの条件があります。詳しくはこちらをご参照ください。

脂漏性皮膚炎の看護/その他

体質的な脂漏症の場合は治りません。一度症状が改善しても、繰り返すことが多く、一生付き合っていかないといけないことになります。脂漏症の治療で最も重要になるのがスキンケアですが、シャンプーやコンディショナーの選び方や洗い方、頻度などが重要になります。定期的に獣医師の診療を受けて、皮膚の状態をチェックしてもらう必要があります。脂漏症性皮膚炎では耳の中も脂っぽくなり、耳の痒みを伴う外耳炎も一緒に起こすことが多くあります。耳洗浄や点耳薬などを用いて外耳炎も治療する必要があります。

シャンプー後のドライヤーのかけすぎは皮膚が乾燥し、かえって皮脂の分泌を刺激し脂漏を悪化させることがあるので、できるだけタオルドライのみとするか、もしくはドライヤーを使用する場合は冷風にし、温風の場合はできるだけ皮膚から離して使用しましょう。

自宅でのシャンプーポイント!(※動物病院で処方されるきちんとした薬用シャンプーを用いましょう)

  1. まず、地肌を濡らします。30〜35℃程度のぬるま湯で、シャワーヘッドはできるだけ地肌に近づけ、頭から遠い部分からかけ始めましょう。
  2. シャンプー剤は直接皮膚につけづ、まず別容器にスポンジなどでよく泡立ててから全身に塗り込むように使用しましょう。泡で洗うイメージが大事です。
  3. 泡を全身に塗布したら乾かないように、濡れたタオルでくるみ、最低5分、できれば10分間はそのままにして薬用シャンプーの効果が出るのを待ちます。
  4. その後、人肌以下のぬるま湯(32〜33℃程度)でよく洗い流してください。特に指の間などにシャンプーが残らないように1本1本丁寧にすすぎましょう。
  5. 吸水性の高いスポンジタオルなどで十分に水分を拭き取ってください。
    ※コットタオルにアレルギーのある子もいるので注意してください。
  6. ドライヤーで乾かす場合は、温風を使用しないで、冷風を使い風乾することを心がけましょう。温度調節ができる場合はできるだけ低めの温度で風乾しよう。皮膚が乾燥したり、温度が上がると痒みが増します。

シャンプー以外でできること

  1. 定期的なトリミング
    定期的にプロのトリマーさんにトリミングしてもらい、被毛は適当な長さに保ちましょう。皮膚病があるときには特に動物病院併設のトリミングサロンが有効です。
  2. 日常的にブラッシング
    抜け毛や下毛はブラッシングにより早めに取り除きましょう。
  3. こすれる箇所は清潔に
    顔のシワの間、首の付根、脇の下、足先、しっぽの付け根、内股などこすれる部分は特に皮膚病が起こりやすいので、清潔にしましょう。
  4. 定期的な耳のお手入れ
    皮膚病がある動物は外耳炎にもなりやすい傾向があります。定期的にきちんと手入れしましょう。外耳炎は特に予防と早期の治療が重要です。
  5. 保湿ケアーで肌の水分をキープ
    皮膚バリアを整えて、肌の乾燥を防ぎ、肌の水分をキープすることが皮膚病には重要です。動物病院で処方される保湿剤などを用いましょう。

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参考文献・資料等
  1. 伴侶動物治療指針 Vol.10; 319-330:脂漏性皮膚炎
  2. 犬の内科診療 Part1; 390-392:マラセチア皮膚炎(脂漏性皮膚炎)


<1>イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルの原発性脂漏症:14症例の回顧的研究
<2>コッカー・スパニエル、ウエスト・ハイランド・ホワイト・テリア、そしてバセット・ハウンドにおける原発性角化異常(特発性脂漏症)にエトレチネート(チガソン)を使用した治療

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この記事を書いた人

福山達也