脱毛

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

脱毛とは?

脱毛とは体のあるエリアにおいて被毛(ひもう)が通常より減少した状態です。また、被毛の数は正常でも長さが短くなった場合もいいます。脱毛は掻痒(そいよう:かゆみのこと)とならび皮膚病に見られる最も多い症状のうちの一つです。

通常被毛は活発に毛が伸びる成長期を経て、退行期に入り、休止期になり抜け落ちるというサイクルを繰り返します。このサイクルが何らかの理由でうまく回らなくなり、抜け落ちたままになると脱毛になります。

脱毛は先天的(生まれつき)起こるっているものと、後天的(後から起こるもの)に分けられます。また、同時に痒みがあるのかないのか、どのエリアが脱毛しているのかなども重要になります。

脱毛の原因

 脱毛は非常に様々な原因により起こります。糖尿病[犬編猫編]、甲状腺機能低下症甲状腺機能亢進症副腎皮質機能亢進症、成長ホルモン不全、性ホルモン関連などホルモンの分泌不全により起こります。これらは痒みがなく、左右で同じ様に脱毛するのが特徴です。その他、アレルギー、心因性(特に猫)、家族性の遺伝、腫瘍、周期性、毛包形成不全、狂犬病ワクチン接種後、毛刈り後、ノミなどの寄生虫、スポットオンタイプのノミ駆除剤などによっても起こります。

脱毛の症状

 脱毛は病気の名前ではなく、症状の名前ですので、一番の症状は「脱毛」です。ただ、脱毛とともに、痒みがあるのか、体を擦っているのか、舐めてはいないか、毛を引っ張って抜いていないかなどは病気を診断するうえで有益な情報になりますので、それらの症状も知らせてい頂けると診断の助けになります。

脱毛の診断/検査

 一般に、視診、被毛検査を行います。原因としてホルモンが疑われる場合はホルモン検査の他、血液検査血液化学検査尿検査が必要になるかもしれませんし、細菌や真菌に関する検査や培養検査、皮膚の一部を切り取って病理組織学検査を行う場合もあります。
 腫瘍による脱毛の疑いがある場合は、全身を精査する必要があります。

脱毛の治療

 治療は、原因により様々です。ホルモン不足の場合はホルモン(例:甲状腺ホルモン剤)を投与して補充します。ホルモンが過剰な場合は、ホルモンを低下させるような内科療法を行います。
 その他、循環血液改善剤、免疫抑制剤、免疫調整剤、サプリメントなどを用いることもあります。
※当院では脱毛症の治療に必要に応じて海外から輸入したサプリメント(メラトニン)を用いることがありますので、ご了承ください。

脱毛の予防

 原因にもよりますが、基本的にはありません。脱毛が起こった場合は早期に当院にご雑談ください。

脱毛の看護/その他

 脱毛は様々な原因により起こります。ですから原因をつきとめるまで多くの検査や時間、費用が必要になることもあります。そのため、費用対効果の観点から、高額な検査を避け、診断的治療と言って考えられる脱毛の原因に対して試験的に薬剤を投与することもあります。

 脱毛に対する治療は効果が見られるまで時間がかかることがあります。効果が見られるまで8〜12週間が一つの目安となります。

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参考文献・資料等
  1. 小動物臨床指針;35-37
  2. 伴侶動物治療指針 Vol.2; 64-69:犬と猫の脱毛症の鑑別診断
  3. 猫の臨床指針 Vol.3; 167-171:脱毛症・デルマドロール



<1>犬のパターン脱毛症におけるダーモスコピーの有用性: 記述的研究
<2>犬の非炎症性脱毛症: 一般的および確定的な組織学的特徴に関する包括的評価
<3>猫2頭に認められたディーゼル油誘発性脱毛
<4>心因性脱毛症の猫における塩酸クロミプラミンの効果: 予期的研究
<5>自傷および過剰グルーミングを起こしたシャムネコの1例
<6>脱毛症に罹患した犬における性ホルモン濃度
<7>5頭のワイマラナーにおける毛包形成不全症
<8>糖尿病の犬における皮膚疾患: 45症例(1986-2000)
<9>慢性脱毛症および掻痒症の猫
<10>臨床における病理学 犬における狂犬病ワクチン接種後の脂肪織炎
<11>心因性脱毛症が疑われた猫における基礎的病態
<12>参照ポイント 犬の成長ホルモン反応性脱毛

この記事を書いた人

福山達也