ペルメトリン中毒

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ペルメトリン中毒とは?

 ペルメトリン中毒は猫の中毒の中でも最も多く報告されている中毒の一つで、昆虫の駆除によく使われるピレスロイド系の化学物質に属します。大抵は犬用のノミ・ダニ駆除剤として市販されている薬剤を猫に使用したために起こります。その他、農作物、芝生、家畜などにも殺虫剤として頻繁に使用され、多くの動物のにとってはた安全ですが、猫には強い毒性があります。

ペルメトリンを含む製剤は主に、犬用のスポットオン ノミ・ダニ駆除剤、ノミ取りシャンプー、ノミ駆除スプレー、ノミよけ首輪、ハエ取り紙、蟻の駆除剤などに含まれていますので、注意が必要です。

ペルメトリン中毒の原因

 ピレスロイド系殺虫剤であるペルメトリンに対する中毒です。最も一般的なケースは、キャット・オーナーが誤って犬用のノミ取り剤を猫に使用した場合です。キャット・オーナーは、犬用の薬剤は量が多いので、猫に少量塗れば大丈夫だろうと考えているのかもしれませんが、残念ながらそうではなく、ペルメトリンを少量塗っただけで猫の体調が悪くなることがあります。
 猫がペルメトリンにさらされるもう一つの方法は、ペルメトリンを含むスポットオンを最近使用した犬に接触することです。ペルメトリンは犬の皮膚や被毛にしばらく留まり、猫が毛づくろいをしたり、犬にすり寄ったり、あるいは同じ家具に座ったりすると、中毒を起こすことがあります。

ペルメトリン中毒の症状

 振るえ、痙攣発作、ふらふらするなどの神経症状のほか、高体温、流涎(涎が出ること)などが見られることもあります。あまり一般的ではありませんが、呼吸困難や失明なども報告されています。

 犬用の殺虫剤を用いた場合、数滴で中毒を起こし、1〜3時間、あるいは数日(時には72時間まで中毒の徴候が見られないこともあります)で中毒症状が起こり、約10~40%が死亡すると報告されています。

ペルメトリン中毒の診断/検査

 一番重要なのは問診です。全身状態を把握したり、他の病気との鑑別を行うために、一般身体検査、血液検査血液化学検査尿検査などが必要になります。

ペルメトリン中毒の治療

 痙攣発作が見られる場合は、抗けいれん薬を投与します。その他、点滴などの対症療法を行うのが一般的です。数日間は入院が必要になるでしょう。

 また、可能であれば皮膚についた薬剤は洗浄します。

ペルメトリン中毒の予防

 犬用の製剤を勝手に猫に使ったり、猫用の製剤を犬に使ったりしないようにしましょう。動物病院業界には「猫は小さなな犬ではない!」という格言があります。猫と犬はまったく違う動物であることを認識してください。猫が体内で特定の化学物質や薬物を分解する方法に関して、猫の肝臓には、化学物質を無害な形に分解するタンパク質(酵素)がないため、化学物質が猫の体内に蓄積され、深刻な病気を引き起こす可能性があります。このような薬物代謝の違いから、犬には安全な薬物や製品を猫に使っても大丈夫だと考えてはいけないのです。犬に安全な薬剤が猫にも安全だとは限りません。

 薬物中毒に関しては、動物や子供の手の届くところに薬を置かない。薬箱などは簡単に開けられないようにすることを日頃から心がけて下さい。

ペルメトリンに関しては、犬との共同生活で犬に塗布したものへの接触でも見られるようですの、犬猫共同飼育している方は犬にペルメトリン製剤を用いることを避けましょう。特にオンラインショッピングの場合は、十分に注意してください。 多くの製品説明には有効成分が含まれておらず、警告があっても小さな画像では気づかないかもしれません。

犬がペルメトリンを含むノミ取り薬で治療された場合、72時間は猫に近づけないようにする必要があります。

ペルメトリン中毒の看護/その他

 薬を誤飲したと思ったら、できればその薬の箱や包装などを持参していただけると解決策や解毒剤が速やかに分かることがあります。

 誤ってペルメトリンを塗布、あるいは接触した場合は、速やかにぬるま湯で拭き取るか、洗浄して早急に当院にご連絡下さい。大多数の猫は、迅速な治療により、完全に回復します。しかし、重症の猫、特にコントロールが難しい発作を起こした猫は、予後が悪いものです。

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参考文献・資料等
  1. 猫の臨床Part1.367
  2. 伴侶動物のための救急医療.171-172
  3. Permethrin poisoning


<1>猫におけるペルメトリン中毒に対する補助療法としての脂肪乳剤静脈内投与の無作為化比較臨床試験
<2>猫のペルメトリン中毒: 42症例の回顧的研究
<3>ロンドンの獣医中毒情報サービス(VPIS)に報告された猫のペルメトリン・スポットオン中毒の臨床効果と転帰
<4>ネコのペルメトリン中毒

この記事を書いた人

福山達也