体重増加:Weight Gain

体重増加とは?

 体重増加とは、愛犬・愛猫の体重が以前より増えている状態を指します。原因として最も多いのは脂肪の蓄積、つまり肥満ですが、体重増加のすべてが肥満とは限りません。

 体重は、脂肪や筋肉などの体組織が増えることでゆっくり増える場合もあれば、腹水、胸水、皮下浮腫などの体液がたまることで短期間に増える場合もあります。数週間から数か月かけて徐々に増える場合は肥満や内分泌疾患が疑われ、数日から数週間で急に増える場合は体液貯留や腫瘍などの病気が隠れていることがあります。

 犬猫では、理想体重を10%以上超えると過体重、30%以上超えると肥満と考えられます。肥満は単なる体型の問題ではなく、健康、寿命、生活の質に影響する病気のひとつです。

体重増加の原因

 体重増加の最も多い原因は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ることによる肥満です。フードの量が多い、おやつが多い、人の食べ物を与えている、運動量が少ない、避妊・去勢後に太りやすくなった、加齢により活動量が減った、関節疾患などで動きにくいといった要因が関係します。

 また、薬の影響で食欲が増え、体重が増えることもあります。代表的には、ステロイド剤、一部の抗けいれん薬、ホルモン剤などがあります。

 病気が原因となることもあります。犬では甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、インスリノーマなど、猫では副腎皮質機能亢進症や巨人症などが体重増加に関係することがあります。腹腔内腫瘍、腹水、胸水、皮下浮腫、心疾患、肝疾患、炎症性疾患、タンパク漏出性疾患などでも体重が増えて見える場合があります。

体重増加の症状

 体重増加では、体が丸くなる、腰のくびれが分かりにくくなる、肋骨が触れにくくなる、首や背中に脂肪がつく、腹部が大きくなる、動きが鈍くなる、散歩を嫌がる、疲れやすい、階段や段差を嫌がる、呼吸が荒くなる、暑さに弱くなるなどの変化がみられます。

 内分泌疾患が関係している場合は、多食、多飲、多尿、パンティング、皮膚が薄くなる、脱毛、色素沈着、被毛の質の変化、元気低下、寒がるなどを伴うことがあります。

 腹水や胸水など体液がたまっている場合は、急にお腹が張る、呼吸が苦しそう、横になるのを嫌がる、元気や食欲が低下するなどの症状がみられることがあります。急激な体重増加や呼吸の異常を伴う場合は、早急な診察が必要です。

体重増加の診断/検査

 診断では、まず現在の体重、過去の体重記録、体重がどのくらいの期間で増えたかを確認します。短期間で急に増えたのか、数か月かけて徐々に増えたのかは、原因を考えるうえで非常に重要です。

 身体検査では、体重測定、体格スコア、筋肉量、腹部の張り、浮腫、心音、呼吸音、皮膚や被毛の状態、関節や歩行の状態などを確認します。体格スコアでは、肋骨が触れるか、腰のくびれがあるか、腹部の引き締まりがあるかを評価します。

 必要に応じて、血液検査、血液化学検査、尿検査、甲状腺ホルモン検査、副腎機能検査、血糖値検査、レントゲン検査、超音波検査、心臓超音波検査などを行います。腹部の腫瘤、臓器の腫大、腹水、胸水、副腎の異常、心疾患などを確認するために画像検査が必要になることもあります。

 来院時には、現在のフード名、1日の給与量、おやつの量、人の食べ物の有無、運動量、体重の記録、服用中の薬やサプリメントの情報をお持ちください。

体重増加の治療

 治療は原因によって異なります。

 肥満が原因の場合は、適切な減量計画を立てます。急激な食事制限ではなく、現在の体重、理想体重、年齢、病気の有無、運動量に応じて、フードの種類や給与量を調整します。必要に応じて、減量用療法食を使用することもあります。

おやつや人の食べ物を減らすことも重要です。おやつを完全に禁止するのではなく、1日の総カロリーに含めて管理します。多頭飼育では、他の犬猫の食事を食べていないかも確認します。

 甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、心疾患、腹水、腫瘍、関節疾患などが原因の場合は、それぞれの病気に応じた治療を行います。薬剤が原因と考えられる場合でも、自己判断で中止せず、必ず獣医師にご相談ください。

体重増加の予防

 体重増加の予防には、日頃の体重管理が最も大切です。フードは目分量ではなく、計量カップやキッチンスケールで量を測って与えてください。おやつ、人の食べ物、歯みがきガム、投薬用のおやつなどもカロリーに含めて考える必要があります。

 避妊・去勢後は必要カロリーが変化し、太りやすくなることがあります。手術後は食事量やフードの種類を見直すことをおすすめします。高齢になると活動量が低下しやすいため、若い頃と同じ量を食べているだけでも体重が増えることがあります。

 定期的な体重測定と健康診断により、体重増加や病気のサインを早期に発見できます。特に、急な体重増加、腹部膨満、多飲多尿、皮膚や被毛の変化、呼吸の異常がある場合は、早めにご相談ください。

体重増加の看護/その他

 ご自宅では、体重、食事量、おやつの量、飲水量、排尿回数、便の状態、運動量を記録してください。毎日でなくても、定期的に体重を測ることで変化に気づきやすくなります。

 減量は、家族全員でルールを統一することが重要です。誰かがこっそりおやつを与えていると、なかなか体重は減りません。食事を欲しがる場合は、回数を分ける、知育トイを使う、低カロリーのおやつを少量にするなどの工夫が有効です。

 急激な減量は体に負担をかけることがあります。特に猫では、急な絶食や極端な食事制限は危険です。必ず獣医師と相談しながら、安全なペースで体重管理を行いましょう。

 体重増加は、単なる「太った」だけでなく、病気のサインである場合もあります。気になる増え方や体型の変化がある場合は、早めに動物病院へご相談ください。

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参考文献・資料等
  1. Ettinger’s Textbook of Veterinary Internal Medicine 9ed CHAPTER 20: Weight Gain [壱岐動物病院訳]


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この記事を書いた人

福山達也