犬ジステンパーウイルス感染症とは?
犬ジステンパーウイルスは人間の麻疹(はしか)とよく似たウイルスで、強い伝染力をもった病気です。とくに3歳未満の若い犬が感染すると死亡率が高く、回復しても後遺症が残ることがあります。犬のウイルス病としては最も恐ろしいもののうちの一つで、報告にもよりますが、発病率は25〜75%と高く、また感染した動物の死亡率も50〜90%と高いものです。
記録によれば、犬ジステンパーは18世紀に南アメリカからスペインにもたらされた後、ヨーロッパ全土に拡大し、現在では日本を含む全世界で発生がみられます。このウイルスはニホンオオカミの絶滅の原因ともなりました。
近年では野生化したアライグマなどからの犬への感染も問題になっています。
犬ジステンパーウイルス感染症の原因
犬ジステンパーウイルス(Canine distemper Virus:CDV)に感染することで起こり、潜伏期間は3~5日です。感染はジステンパーウイルスに感染している犬の鼻水、唾液、目やに、尿などに接触することで起こります。また、近距離では空気感染でもうつります。特に母犬の移行抗体が消失したての若い動物に感染しやすい病気です。
犬ジステンパーウイルス感染症の症状
ジステンパーの症状は感染年齢や時期により、若い動物を中心にみられる急性症状、それがいったん直ったかにみえたあとにみられる亜急性症状、さらに成犬になってからみられる慢性症状があります。
まず、急性症状は感染後約2週間でみられます。これに先だって感染後1週間くらいで第1回目の発熱がみられ、その後平熱に戻るので気づかれないこともあります。免疫力の強い場合はそのまま治ってしまいます。子犬や免疫力の弱い犬では、再び感染後2週間位で発熱がみられ、この時には食欲不振、鼻水(粘稠な膿様)や咳などの呼吸器症状、結膜炎、下痢、嘔吐などの消化器症状、脱水、衰弱がみられるようになります。中には皮膚炎(鼻や肉球の皮膚が硬くなりハードパッドと呼ばれる)やジステンパー脳炎と呼ばれる神経症状を示す場合もあり、神経症状を示すものは死亡することが多いので注意が必要です。
急性症状あるいはあまりはっきりした症状を出さずに急性期を過ぎた犬でも,数週間から何カ月経ってから神経症状を出す場合もあります。これが亜急性症状と呼ばれます。これは脳の中にウイルスが潜んでいたためで、6カ月齢より若い犬で、突然原因不明の痙攣などの神経症状がみられた場合には、ジステンパーの亜急性発症が疑われます。この時点で死亡することもあり、回復しても神経に障害が残ることがあります。
さらに慢性症状は、4〜8歳の中年齢の犬にみられるもので、徐々に進行して、ときに痙攣や麻痺起こします。また慢性発症の別の形は「老犬脳炎」と呼ばれるもので、6歳以上でみられ、精神的に沈うつ状態になり、眼がみえなくなり、頭を壁に押し当てたり、飼い主を認識できないようになったり、性格が変化したりします。まるで痴呆のようです。
犬ジステンパーウイルス感染症の診断/検査
ジステンパーは、別の消化器症状を起こす疾患(パルボウイルス感染症、コロナウイルス感染症、細菌感染、腸炎など)や、神経症状を起こす疾患(髄膜炎、感染症、中毒など)との鑑別が難しい場合があります。検査機関に依頼して血液や糞からジステンパーウイルスを検出する検査が必要になります。
犬ジステンパーウイルス感染症の治療
犬ジステンパーウィルスそのものに対する治療法はなく、症状により対処療法を行います。二次感染を防止するために抗生物質を投与したり、下痢をしている場合は下痢止めを投与したり、痙攣などの神経症状に対しても対症療法を行います。
犬ジステンパーウイルス感染症の予防
犬ジステンパーウイルスはワクチン接種で防げる病気です。
犬ジステンパーウイルスに感染してた場合は、感染の蔓延を防ぐために感染している犬を隔離し、環境(ケージや食器など)の消毒を行なうことが重要です。
犬ジステンパーウイルス感染症の看護/その他
都市部ではワクチン接種率の上昇により、大きな流行をみなくなってきた病気ですが、撲滅は難しいとされていますので、特にワクチン摂取率の引くい田舎では注意が必要な病気です。
犬ジステンパーウイルスは通常のアルコール(70%エタノール)や石鹸(逆性石鹸)といった消毒法で死滅するような弱いウイルスですが、寒い環境では動物の体外でも少しの間生存することができますので、注意が必要です。
また、飼育管理を良好にし、食事療法を行い、免疫力を高めることが重要です。
現在までのところ、犬ジステンパーウイルスが人に感染したという報告はありませんが、サルで致死的流行を起こすことが知られていて、人のウイルス受容体を理想できるように変異しているとの報告があります。[2][3]
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