犬フィラリア症:犬糸状虫症

犬フィラリア症の治療

 投薬や成虫の外科的摘出、対処療法などを行いますが、この病気は現在確実な予防薬が開発されております。治療する病気と言うよりは予防する病気です

犬フィラリア症の予防

 予防薬や予防注射により確実に予防ができます。犬の体内に侵入した犬糸状虫はすぐに血管内に侵入するわけではなく、3〜4ヶ月程度皮下組織で発育・成長します。予防薬や予防注射はこの時期の感染仔虫を駆虫する薬です。つまり、予防薬は感染仔虫が犬の「体内に侵入することを予防する薬ではなく」、 感染仔虫が「血管内に侵入するのを予防する薬」であることを理解すべきです。
 また、予防薬の投与期間は蚊の発生期間が地域によって異なるため注意が必要です。さらに、フィラリア感染時の投薬による副作用が知られておりますので、予防薬を投与する前に、フィラリア感染の有無を検査することが重要です。フィラリア予防を始める際には、予防期間や検査などについてお気軽に当院にご相談ください。
 現在フィラリア症状予防薬には、錠剤、チュアブル、スポットオン(滴下型)、注射など様々なタイプがあります。お薬が飲ませられなくても滴下型や注射などもありますので、それぞれのワンちゃんに合わせてきちんと予防してあげましょう。
 時々「うちは室内飼育だから大丈夫」なんてことを言う人がいますが、残念ながら報告では室内飼育も室外飼育もフィラリアの感染率は大きく変わらないとされています。あなたでも室内で蚊に刺されるでしょう? それに散歩や外出に行かないワンちゃんもいないでしょいうし、高層マンションから一歩も出ないワンちゃんならまだしも、それは単なる希望的観測や思い込みです。。。その思い込みで泣きを見た人を見てきました。。。ただ、本当に泣きたいのはワンちゃんのほうでしょうけど。。。

犬フィラリア症の看護/その他

 この病気は予防薬で100%予防可能です。しかし、昨今の温暖化やヒートアイランド現象によって気温の高い日が続き、蚊体内で仔虫の発育・成長が投薬期間以上に継続した場合は、投薬終了後に感染能力のある仔虫が蚊によって伝播される可能性があります。また、投薬をしたつもりで実は後で犬が吐き出してしまっている可能性はないでしょうか? これらの状況では、「予防薬を飲ませていたのにフィラリアになっている」かもしれません。できるだけ早く感染を知ることは今後の予防薬を決定するためにも重要な情報です。前年のフィラリア予防が確実にできたかどうかを判定するためにも、毎年一度は必ず血液(抗原)検査を行いましょう。
 フィラリアは心臓に寄生する寄生虫です。ですから寄生する全身の様々な臓器や器官に影響を与えます。また、フィラリアに寄生されると全身麻酔鎮静のリスクが高くなったり、様々な病気の治療に影響や制限が出ます。
 正直犬フィラリア症は昭和の病気です。もう都会ではほとんど見ない病気ですが、壱岐のような田舎ではまだまだドッグオーナーでも意識の低い人がいて、未だにフィラリア症で苦しむ犬を見かけます。フィラリア症はフィラリアに感染している犬の血を蚊が吸って、他の犬に感染させていきます。ですから、みんなが予防をすればうつす元がいなくなるのです。犬を飼育したらフィラリア予防をすることはドッグオーナーの最低限の常識だし、義務です
 ここ数年、壱岐でもフィラリア症を診断する機会がまた増えてきました。どうせ大丈夫だろうと予防しないう人が増えてきたのだと思います。ですが、フィラリア症は無くなっていません。感染リスクは再び増加していることを知っておいてください。
※また、せっかく採血するのですから、フィラリアの検査と一緒に血液検査を行い、年に一度内臓などのチェックを一緒に行うことをお勧めします。フィラリア検査と一緒に行えば、採血料などがかかりませんし、割安で検査できます。詳しくは当院にご相談下さい。

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参考文献・資料等
  1. Heartworm Guidelines -AHS-
  2. 犬の内科診療 Part2; 286-293:犬糸状虫症
  3. Effect of sildenafil and pimobendan on intracardiac heartworm infections in four dogs
  4. Heartworm Testing: A Yearly Necessity?
  5. Canine Heartworm
  6. Feline Heartworm in Clinical Settings in a High Canine Prevalence Area


<1>猫の糸状虫症: ABCDによる予防と治療・管理に関するヨーロッパのガイドライン
<2>Dirofilaria immitis(犬糸状虫)を実験感染させた犬におけるミクロフィラリア血症の季節性および日内変動
<3>ヨーロッパでフェレットに認められた幼虫の異所性体内移行を伴う原地性犬糸状虫感染
<4>リアルタイム蛍光共鳴エネルギー移動PCR法と融解温度曲線分析法を用いたベクターとなる蚊および犬における犬糸状虫の迅速な検出
<5>ハンガリーの人フィラリア症: 中央ヨーロッパにおける新しいズーノーシス
<6>猫の犬糸状虫症: 臨床再評価
<7>犬糸状虫の流行地域における家庭内猫への蚊の誘引
<8>超音波検査法を用いた猫における 犬糸状虫症の診断:43症例 (1985-1997)
<9>カナダにおける犬糸状虫検査について: それは有効なのか?
<10>犬糸状虫感染症から防御するため雑種犬に予防的に投与した持続放出型モキシデクチン注射薬の活性
<11>4頭のフェレットに対する心糸状虫成虫駆除を目的としたモキシデクチン(ProHeart 6)の使用
<12>猫の犬糸状虫感染症: 北イタリアで生活する無徴候の猫における血清学的調査
<13>犬糸状虫を実験的に感染させた犬における腎臓の超微細構造の変化
<14>中央イタリアの犬におけるDirofilaria (Nochtiella) repensのミクロフィラリアに関連した皮膚病
<15>フィラリア幼若虫の感染犬における月一回のフィラリア予防薬の効果
<16>イベルメクチンによる犬疥癬症治療における推奨される新しい治療プロトコール
<17>Dirofilaria immitis感染後に様々な間隔でイベルメクチンまたはミルベマイシンによる治療を開始した犬の反応について
<18>犬糸状虫(Dirofilaria immitis)の成虫感染が認められ、ミクロフィラリア血症の犬にミルベマイシンオキシムとスピノサドを経口的に併用投与した場合の効果
<19>致死的な犬糸状虫症に罹患した猫1頭における肺のマルチスライスコンピュータ断層撮影血管造影
<20>アメリカ合衆国とカナダにおける猫の犬糸状虫感染の血清陽性率、血清陽性に対する危険因子、および犬糸状虫予防薬の処方頻度
<21>臨床における病理学 猫の突然死の原因となったD immitisによる肺血栓塞栓症
<22>肺葉切除術を受けた、犬糸状虫感染犬におけるアナフィラキシー様反応
<23>全国狩猟犬クラブの会員における犬糸状虫症の予防の失敗に関連した危険因子
<24>犬の犬糸状虫予防の失敗が疑われる症例の発生に診断検査の精度と治療の効果が与える影響
<25>犬糸状虫が重度に寄生している犬52頭における2種類の犬糸状虫釣り出し装置の比較
<26>実験モデルおよび犬糸状虫感染犬での肺塞栓症の評価を目的としたコンピュータ断層血管造影
<27>実験的に犬糸状虫症に感染させた犬の発症前の時期および発症早期に関連したコンピュータ断層撮影上の変化
<28>5頭の犬における犬糸状虫による血性の喀痰-犬の糸状虫症におけるまれな症状
<29>ガラパゴス諸島のイサベラ島における犬猫の感染症
<30>犬の糸状虫性大静脈症候群に対する低侵襲外科治療の結果:42例(1999-2007)
<31>犬糸状虫症におけるボルバキア属菌の新しい役割
<33>犬糸状虫(Dirofilaria immitis)の成虫を実験的に感染させた犬におけるイベルメクチンとミルベマイシンオキシム
<34>猫2頭におけるDirofilaria immitis成虫の除去に対するニチノール・グースネック・スネアー(nitinol gooseneck snare)カテーテルの使用
<35>猫の犬糸状虫症:診断および管理
<36>猫の犬糸状虫症:病気の構造
<37>ハリケーン被災地域であるGulf Coastから輸出された犬猫における犬糸状虫、猫白血病ウイルス、および猫免疫不全ウイルスの血清陽性率
<38>犬および猫のイヌ糸状虫症:予防、治療、そして治療の合併症
<39>犬および猫のイヌ糸状虫症:生活環、病態生理学、そして診断
<40>犬糸状虫陽性猫における肺血栓塞栓症
<41>犬糸状虫症が流行している地域において飼育されている非在来種猫における自然発生性のDirofilaria immitis感染率
<42>少数の犬糸状虫が寄生した犬における、3種の犬糸状虫抗原検査キット製品の結果に関する比較
<43>犬および猫のフィラリア検査の最新情報

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この記事を書いた人

福山達也