※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!
犬ブルセラ症とは?
犬ブルセラ症はブルセラ・カニス(Brucella canis)という細菌による人と動物の共通感染症(Zoonosis)です。ブルセラ症には他にもBurucell.abortus(主に牛) 、Burucell.suis(主に豚) 、Burucell.melitensis(主に山羊、羊) などもありますが、日本では1970年代にほぼ撲滅されています。別名でマルタ熱、波状熱、ジブラルタル熱と言われることもあります。
国内では2003年の静岡の繁殖施設の51頭、2005年の沖縄の繁殖施設の16頭、2006年の大阪の繁殖施設の139頭、2008年の愛知のペットショップ兼繁殖施設の15頭、2008年の東京などのドッグレンタル店の18頭など時々集団感染も見受けられます。また、1999年4月から四類感染症に感染症法によって指定されています。
犬ブルセラ症の原因
犬ブルセラ症は細菌であるBrucella canisの感染により起こります。
感染経路は、犬の場合、感染した犬の流産時の汚物や血液、尿、乳汁等を介して経口感染します。また、交尾感染でも感染します。
ブルセラ菌の感染力は弱く、通常の生活では人への感染はまれだといわれていますが、感染犬の死体や流産時の汚物などに接触することで感染します。特にブルーダーや獣医師、愛玩動物看護師が感染することが多いといわれています。また、人から人へ感染することはないといわれています。
犬ブルセラ症の症状
犬ブルセラ症は、一般症状がほとんどありません。ただ、雌犬の場合は早産や流産を引き起こし、雄犬の場合は精巣炎や不妊などの症状を起こします。仔犬の場合は、数日で死亡することもあります。
人が感染すると、潜伏期間は通常1〜3週間で、発熱や悪寒、倦怠感、筋肉痛など風邪様症状を起こすことが知られていますので、注意が必要です。
犬ブルセラ症の診断/検査
疑わしい場合は外部検査期間に依頼して抗体検査を行います。この抗体検査は何度か行う必要があります。
犬ブルセラ症の治療
現在、有効な治療法がなく、この病気は人と動物の共通感染症(ズーノーシス:Zoonosis)でもあるので、疑った時点で抗生剤長期的な抗生物質(テトラサイクリン系薬などが有効)の投与を行います。
また、隔離して治療を行なう必要があります。
犬ブルセラ症の予防
現在のところ、犬ブルセラ症に対するワクチンはありませんので、犬の繁殖をする際には事前にブルセラ症の検査を受けさせることが重要です。また人への感染を防止するためにも、下記のことに注意することが感染予防につながります。
・犬と触れ合った後は、石鹸等で手洗いをし、うがいを行う。
・流産した場合は、必ず獣医師の検診を受け、流産時の汚物や尿などへの接触を極力避ける。
(汚物を触る場合は、ゴム手袋やマスクを装着し、汚物等が付着した場所は、消毒剤などで消毒する。)
・感染が判明した場合は他の犬と隔離する。
・口移しで犬に食べ物を与えたり、キスをしたりするなどしない。
・流産した場合は、必ず獣医師の検診を受け、流産時の汚物や尿などへの接触を極力避ける。
(汚物を触る場合は、ゴム手袋やマスクを装着し、汚物等が付着した場所は、消毒剤などで消毒する。)
・感染が判明した場合は他の犬と隔離する。
・口移しで犬に食べ物を与えたり、キスをしたりするなどしない。
犬ブルセラ症の看護/その他
海外では、地中海地域・アラビア湾・アフリカ・インド・西アジア・中央および南アメリカが犬ブルセラ症の好発地域です。旅行時には野良犬との接触などせず、むやみに手を出したりしないようにしましょう。
ブルセラ菌はホコリの中で6週間、土や水の中では10週間生き続けるとされていますので注意が必要です。
当然ですが、感染陽性の犬を繁殖に使用してはいけません。
※なお、当院ではブルセラ感染が疑われた場合、スタッフの感染防止のため、診察時必要に応じてマスク、グローブ、ゴーグルなどを着用させて頂く場合がありますのでご了承ください。
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参考文献・資料等
- 犬の内科診療 Part2; 185-188:ブルセラ症
・
<1>3頭の犬でのBrucella canis眼内炎: 臨床症状、診断、治療
<2>Brucella canisに起因するブルセラ症の血清学的診断
<3>2007年から2016年におけるミシガン州での大流行の際のペット犬におけるBrucella canis感染および関連する人への曝露に関する調査と特性評価
<4>Brucella canis:人獣共通感染の可能性
<5>合衆国におけるバイオテロリズムの危険性に関する州の公衆衛生職員、及び獣医師の認識