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犬回虫症とは?
回虫は線虫類に属する寄生虫で、長さ10~15cmくらいのそうめんのような形をした寄生虫です。人や犬、猫をはじめ、多くの哺乳類の腸(主に小腸)に寄生します。犬科の動物には犬回虫、猫科の動物には猫回虫、人には人回虫というように、それぞれのどうぶつに固有の回虫が存在し感染します。
回虫は感染した犬や猫の糞便中に排出された虫卵が何らかの経緯で口から入った場合、成虫になれずに体内を移行して内臓や眼に入る幼虫移行症の原因となります。公園の砂場が虫卵に汚染されているとして以前話題になった感染症がこの回虫症です。また、ニワトリなどのレバーの生食(肝臓に回虫の幼虫が潜んでいる可能性がある)して感染するリスクもあります。
犬回虫症の原因
犬回虫(Toxocara canis)の感染が原因です。
感染している犬が排泄した直後の糞便内の犬回虫卵には感染能力がありませんが、体外で7~10日かけて幼虫包蔵卵となり、さらに2~3週間すると感染能力を獲得します。この段階の幼虫包蔵卵を経口的に摂取することにより感染が起こります。回虫卵は、環境中での抵抗力が非常に強く、砂や土の中に混じって長期間生き続け、感染の機会を待っています。
また、妊娠している母犬の胎盤を介しての胎子への感染(胎盤感染)や乳汁を介する仔犬への感染(経乳感染)といった母子感染も起こります。生後2~3ヶ月の仔犬が犬回虫に感染することが多いのですが、成犬へ感染しても幼虫が全身の筋肉内などで発育せず、休眠状態となることが多くみられます。
犬回虫症の症状
成犬が感染しても多くの場合、症状が現れない「不顕性感染(ふけんせいかんせん)」がほとんどで、感染に気付きません。しかし、仔犬が感染すると、食欲不振、嘔吐や下痢、腹痛、便秘などの消化器症状、太鼓腹、脱水、やせる(削痩)、被毛不良、栄養失調、体重低下、異嗜(いし:食べ物ではないものを食べること)、貧血、皮膚のたるみ(皮膚弛緩)、などの症状を起こします。
体内に幼虫が寄生している雌犬が妊娠すると、胎盤や乳汁などを通して子犬にも感染します(母子感染)。
犬回虫症の診断/検査
犬の場合、糞便検査により虫卵を探します。ただし、犬回虫卵が検出されるのは、60~90日齢以下の幼犬がほとんどです。
また、プレパテントピリオドという期間(経口感染:28〜35日、乳汁感染:35〜42日、胎盤感染:21〜28日)があり、この期間に糞便検査をしても虫卵は見つからないので何回か糞便検査を行うか、駆虫をすることが必要です。
犬回虫症の治療
有効な駆虫薬(抗線虫薬)を投与します。駆虫薬は腸管内にいる虫体には効果がありますが、通常、体内移行中の幼虫や虫卵には効果がありません。そのため、一般的には2週間以上の間隔をあけて、複数回の投薬が必要です。そして、駆虫後に虫卵が排出されていない(成虫が駆虫された)ことを必ず糞便検査で確認する必要があります。
犬回虫症の予防
母子感染の可能性があるため、とくに幼犬・幼猫期の駆虫が重要となります。
母子感染(特に胎盤感染)した場合は、生後3週目から糞便中に虫卵が排泄されるので、すべての犬に対して生後3週齢までに駆虫薬投与を開始し、3ヵ月までは2週間おきに再投与を行い、3~6ヵ月齢では毎月、その後も定期的に駆虫するのが望ましいとされています。
犬回虫症の看護/その他
動物との接触後や砂場で遊んだ後、ガーデンニング後などは石鹸でよく手洗いし、虫卵の経口摂取を避けることが大切です。
仔犬の飼育を始めるときには糞便検査をし、獣医師の指示のもと定期的に駆虫薬を投与しましょう。また、駆虫後に虫卵が排出されていない(成虫が駆虫された)ことを確認することも大事です。
人に犬や猫の回虫が誤って侵入した場合、どうぶつ種が異なるので回虫は成虫にまで発育することができないといわれています。しかし、幼虫のまま体内のさまざまな臓器や器官にまで到達し、何ヶ月も生き続けてさまざまな障害を起こすことがあります。このことを「トキソカラ症」と言います。人への感染は犬や猫と同様に、虫卵を経口的に摂取することで起こります。感染しているペットの糞便やそれが付着した被毛、環境中に落ちた虫卵などから感染したり、公園の砂場の砂にまぎれた虫卵を摂取してしまったりすることなどが原因となり、免疫力のある大人の体内に入っても問題がないことがほとんどですが、乳幼児や高齢者、免疫力の低下している人は注意が必要です。
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