※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!
甲状腺機能低下症とは?
ちなみに猫で甲状腺機能低下症が起こることは非常に稀で、一般に甲状腺機能亢進症の猫で外科手術により摘出を受けた猫や先天的異常により雑種やアビシニアンに起こることが報告されています[8]。逆に猫ではどちらかというと甲状腺機能亢進症が多く起こります。
甲状腺機能低下症の原因
犬の場合、甲状腺機能低下症の95%は原発性甲状腺機能低下症で、多くの場合は免疫介在性疾患(免疫機能の異常により自身の免疫システムが自らの甲状腺を破壊してしまう病気)で、本来は外部からの有害な物質に対して体を守る免疫システムに不具合が生じ、甲状腺を有害なものとみなして攻撃する自己抗体がつくられることで起こります。他には原因がわからない特発性甲状腺萎縮や、一部には遺伝的要因による甲状腺機能不全が考えられていますが、詳細は明らかではありません。
甲状腺機能低下症の症状
まれですが、低体温や『粘液水腫性昏睡』とよばれる重篤な状態になると、命に関わることもあります。
甲状腺機能低下症の診断/検査
具体的には、外部検査機関に依頼して総血清サイロキシン(T4)や遊離サイロキシン(fT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血液中のホルモン濃度を測定します。最近では病院内でT4やTSHが測定できるところも増えて、発見率も上がっています。(壱岐動物病院でも院内で甲状腺機能検査が可能です)
※他院でステロイド、てんかんの薬(フェノバルビタール<20>)、アスピリン、痛み止め、抗がん剤(トレエラニブ<19>)など何らかの薬剤を処方されている方は検査前にお申し出ください。薬剤が検査の結果に影響することがあります。<11><12>
※若いグレイハウンド(90%)<15><17>、バセンジー(75%)<16>、サルーキー(50%)<18>などは甲状腺ホルモン値が低く出るので、検査結果は注意して判断する必要があります。
※他の病気がある場合(中〜重度)は甲状腺ホルモン(T4)の数値が低くなることがありますが、関節炎、アトピー性皮膚炎、膿皮症では影響しないとされています<13>。
※ご家庭でできるセルフチェック(高齢になったら定期的に以下のチェックシートをチェックして早期発見に役立てて下さい。以下のPDFはチェックするだけで、自動で採点してくれます。
注:自動採点はダウンロードしないと機能しないことがあります。その場合は以下の書類を右クリックでダウンロードしてください。
●甲状腺機能低下症自己診断チェックリスト
甲状腺機能低下症の治療
甲状腺ホルモンが低下しているので、甲状腺ホルモン製剤を投与します。甲状腺ホルモン製剤の投与にあたっては、投薬前後で甲状腺ホルモンの血液検査を行ないます。また、投与量が少なすぎても効果が得られず、投与量が多い場合には甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性があるため(ただし、犬ではかなりの高用量が必要ですので、通常ではありません)、定期的に血液検査、血液化学検査、ホルモン検査をするなどの必要があります。
甲状腺機能低下症の予防
甲状腺機能低下症の予防法はありません。早期発見・早期治療を心がけることが大切です。特に中高齢で上記のように気になる症状が見られる場合は、動物病院の診察を受けるようにしましょう。
甲状腺機能低下症の看護/その他
動物病院で処方されたお薬はきちんと飲ませましょう。甲状腺のお薬は可能ならそれだけで与え、どうしても飲ませられない場合は食餌と一緒に与え、できるだけ同じ時間に与えましょう。
初期症状によってはなんとなく元気がない、歳のせいかな?くらいしか見られないことがあります。そのような場合は早期に発見してあげるために、甲状腺ホルモンを何度か測定してみるのもいいでしょう。ただし、他の病気や、お薬などの影響を受けやすい検査なので、甲状腺ホルモンの検査結果だけでは確定診断できません。総合的に判断します。
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参考文献・資料等
- 猫の臨床指針 Part2. 171-173
- 犬と猫の品種好発性疾患.
- ネコとイヌの身体診察. 314-315
- 伴侶動物臨床指針 Vol3; 213-225:犬の甲状腺機能低下症
- 犬の内科診療 Part1; 299-302:甲状腺機能低下症
- 【内分泌疾患セミナー①】イヌの甲状腺機能低下症の診断と治療
- 犬と猫のベーシック画像診断学 骨と関節/頭部/脊柱/内分泌器官編; 287-288:犬の甲状腺機能低下症
- Congenital hypothyroidism in a kitten resulting in decreased IGF-I concentration and abnormal liver function tests
- Spontaneous primary hypothyroidism in 7 adult cats
- Treatment and therapeutic monitoring of canine hypothyroidism
- Central Hypothyroidism in Miniature Schnauzers
- Congenital hypothyroidism of dogs and cats: A review
- Canine hypothyroidism: A review of aetiology and diagnosis
- Evaluation of serum free thyroxine and thyrotropin concentrations in the diagnosis of canine hypothyroidism
- Thyroid hormone concentrations in young, healthy, pretraining greyhounds
- Dynamic thyroid testing, thyroid histology and thyroxine replacement therapy in Basenji dogs
- Thyroid function testing in Greyhounds
- Assessment of criteria used by veterinary practitioners to diagnose hypothyroidism in sighthounds and investigation of serum thyroid hormone concentrations in healthy Salukis
- Investigation of thyroid function in dogs treated with the tyrosine kinase inhibitor toceranib
- Changes in serum thyroxine and thyroid-stimulating hormone concentrations in epileptic dogs receiving phenobarbital for one year
- Effects of Levothyroxine Administration and Withdrawal on the Hypothalamic-Pituitary-Thyroid Axis in Euthyroid Dogs
- Risk factors for low plasma thyroxine and high plasma thyroid-stimulating hormone concentrations in dogs with non-thyroidal diseases
- Ettinger’s Textbook of Veterinary Internal Medicine 9ed Chapter 285: Hypothyroidism in Dogs
<1>攻撃性と甲状腺機能低下症
<2>身近な人物に対する攻撃性のある犬と攻撃的ではない犬とでの甲状腺分析値の比較
<3>行動学的な問題が存在する犬の、血清総サイロキシン濃度および甲状腺刺激ホルモン濃度
<4>甲状腺機能低下症に関連する犬の行動について
<5>犬の甲状腺機能および形態に対する抗痙攣量の臭化カリウムの作用
<6>甲状腺機能低下症の犬における甲状腺ホルモンモニタリングに及ぼす抗炎症量のプレドニゾロン投与の効果
<7>身近な人物に対する攻撃性のある犬と攻撃的ではない犬とでの甲状腺分析値の比較
<8>犬の非炎症性脱毛症: 一般的および確定的な組織学的特徴に関する包括的評価
<9>甲状腺機能低下症および動脈血栓塞栓症に罹患した犬におけるレボチロキシン投与後の心房細動の変調
<10>犬の甲状腺機能低下症に関連するコンディション
<11>甲状腺機能試験におけるアスピリンおよびケトプロフェンの影響
<12>エトドラクが甲状腺機能に及ぼす影響について
<13>中程度から重度の変形性関節炎が犬の甲状腺機能に及ぼす影響
<14>2頭のグレート・デーンにおける甲状腺機能低下症および心筋機能不全
<15>犬の甲状腺機能低下症の治療および治療モニタリング
<16>落ち着きのない高齢犬の鑑別診断の進め方
<17>甲状腺機能低下症の犬における総ホモシステインと葉酸、および甲状腺ホルモンとの関連性
<18>臨床における病理学
<19>ミニチュア・シュナウザーの中枢性甲状腺機能低下症
<20>ドーベルマン・ピンシェルの拡張型心筋症の病因と進行における甲状腺機能低下症の役割
<21>甲状腺機能低下症の犬に対するレボサイロキシン液剤の反復経口投与後の総サイロキシンの薬物動態およびその臨床的効果
<22>成猫における原発性甲状腺機能低下症と甲状腺腫
<23>犬の慢性甲状腺機能低下症の影響に対する末梢神経系の抵抗性
<24>犬の甲状腺機能低下症に係わる神経症状
<25>ティンターフィールド・テリアにおける甲状腺腫を伴う先天性甲状腺機能低下症
<26>犬の糸球体濾過率および血漿クレアチニン濃度に対する実験的甲状腺機能低下症の影響
<27>獣医領域における遺伝子組み換え型ヒト甲状腺刺激ホルモン:現在の使用と将来の展望
<28>画像診断―トリメトプリム・スルファメトキサゾール投与後の後天性甲状腺腫性甲状腺機能低下症
<29>健康犬および甲状腺機能低下症を疑う犬の甲状腺機能検査に対する遺伝子組換えヒト甲状腺刺激ホルモンの2つの用量の比較
<30>甲状腺機能低下症の犬においてチロキシン補給が糸球体濾過率に与える影響
<31>雌犬において実験的に誘発させた長期的な甲状腺機能低下症の繁殖への影響
<32>原発性甲状腺機能低下症が疑われるグレイハウンドにおける定量的甲状腺シンチグラフィー
<33>原発性甲状腺機能低下症および非甲状腺性疾患の犬における腺下垂体機能
<34>甲状腺機能低下症の犬における新しいL-チロキシン液状製剤による1日1回投与の治療の臨床評価
<33>サイトハウンドの甲状腺機能低下症を診断するために臨床獣医師が利用する診断基準の評価、および健康なサルーキーの血清甲状腺ホルモン濃度の調査
<34>スルーギにおける甲状腺検査
<35>甲状腺機能低下症,高脂血症のラブラドールレトリバーにおける神経学的機能障害
<36>犬の甲状腺に対する画像検査:現状と将来の動向
<37>甲状腺機能低下症の犬における治療前後のエコー画像
<38>血漿サイロキシン濃度の低値を示した犬における甲状腺機能の評価
<39>甲状腺機能低下症に関連した中枢性前庭疾患の犬10頭:1999-2005
<40>あなたの神経学的診断は何ですか? 血清総サイロキシン濃度が低値で、かつ重度な高コレステロール血症と高トリグリセライド血症(絶食後に測定)が検出された場合は原発性甲状腺機能低下症が強く示唆された
<41>若齢犬におけるトリメトプリム-スルファメトキサゾールによる治療に関連した甲状腺腫を伴う甲状腺機能低下症
<42>溶解したリコンビナントヒト甲状腺刺激ホルモン(rhTSH)の保存が甲状腺機能の正常な犬の甲状腺刺激ホルモン(TSH)反応試験に与える影響
<43>抗痙攣薬で治療する前の特発性てんかんの犬に認められたeuthyroid sick症候群
<44>甲状腺機能低下症および粘液水腫性昏睡
<45>レボサイロキシンの静脈内投与により治療した甲状腺機能低下症の犬
<46>犬猫の血清総サイロキシン濃度の様々な測定方法
<47>健康、甲状腺機能低下症、甲状腺機能は正常だが非甲状腺疾患に罹患したゴールデンレトリバーにおける甲状腺の超音波検査による評価
<48>甲状腺機能が正常な疾患犬と甲状腺機能低下の犬を識別するための甲状腺の超音波検査法
<50>参照ポイント 犬の成長ホルモン反応性脱毛
<51>スルファメトキサゾール-トリメトプリムが犬の甲状腺機能に及ぼす影響
<52>甲状腺機能低下症の9歳の雑種犬におけるコレステロール・ベースの心嚢液貯留と動脈血栓栓塞症
<53>標準平衡透析法、改良平衡透析法、および5種のラジオイムノアッセイによって決定された犬の血清遊離サイロキシン濃度の比較
<54>レースとトレーニング休止がそり犬の血漿甲状腺ホルモン濃度に与える影響
<55>犬の糖尿病、甲状腺機能低下症または副腎皮質機能亢進症とアテローム性動脈硬化症との関連性
<56>犬の甲状腺機能に薬物が与える影響
<57>イヌの甲状腺機能検査に対するクロミプラミンの影響についての評価
<58>トイフォックステリアにおける甲状腺腫を伴う先天性甲状腺機能低下症
<59>犬の甲状腺機能に対して様々な薬物が与える影響
<60>甲状腺機能低下症の臨床症状が見られる犬の血清中における甲状腺ホルモン自己抗体の保有率
[WR2106,VQ2106:甲状腺機能低下症]
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