攻撃行動

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

攻撃行動とは?

 攻撃行動(こうげきこうどう)とは、犬や猫が人(家族や家族以外)や他の生物(他の犬や猫など)あるいは非生物(家具などの物品)に対して、威嚇するもしくは危害を加えることです。
 家族への攻撃性が高い犬種として、ウエルシュ・コーギー・ペンブローク、柴犬、チワワ、パピヨン、ミニチュア・ピンシャー、ヨークシャー・テリアなどがあります。
 また、性格にもよりますが、去勢していない雄は攻撃的なことが多く、雌は妊娠や偽妊娠時に攻撃的になることがあります。
 海外の報告ですが、ペットショップで入手した犬は、ブリーダーから入手した犬より家族に対する攻撃が約3倍多く、見知らぬ犬に対する攻撃性も約2倍多いというものがあります。但し、日本では必ずしもこのような傾向にないという意見もあります。

攻撃行動の原因

 攻撃行動は原因、葛藤、恐怖、縄張り欲、所有欲、食物関連、遊び関連、母性、疼痛(関節炎[]など)、などなどその犬や猫により様々です。また、脳(てんかん水頭症、脳腫瘍など)や行動に影響を与える病気、甲状腺機能亢進症副腎皮質機能亢進症、糖尿病[]などの内分泌の病気、門脈体循環シャントが原因で攻撃的になることもあるのできちんとした見極めが必要です。
 また、社会化期(犬:生後4~14週齢、猫:生後2~7週齢)における経験や接触の不足の結果で人や他の動物に恐怖心を抱き、攻撃的になることも原因の一つであるとされています。

攻撃行動の症状

 唸る、歯を見せる、咬もうとする、咬む、飛かかるなどです。

攻撃行動の診断/検査

 まず、診断では医学的攻撃行動を除外する必要があります。病気が原因で攻撃行動が発生していないかを調べるということです。それには必要に応じて、問診や身体検査はもちろん、血液検査血液化学検査尿検査ホルモン検査、神経学的検査、レントゲン検査超音波検査、CT検査やMRI検査などが行われます。但し、攻撃性のある動物の場合、これらの検査を行うためには、鎮静全身麻酔が必要になることがあります。
※問題行動の診察・診断・カウンセリングには通常の診察と違い、非常に時間がかかります。最低でも30分から1時間は必要になりますので、必ず受診前に電話でご予約ください。また、事前に以下の獣医動物行動研究会が推奨している、一般質問用紙をダウンロードし、ご家族皆さんでご記入の上でご持参ください。
獣医動物行動研究会統一質問用紙:犬用
獣医動物行動研究会統一質問用紙:猫用

攻撃行動の治療

 日常的に「不安」や「恐怖」に対する行動が見られるのであれば、薬剤による治療を試みることも必要です。一般に、抗うつ剤(クロミプラミン)や選択的セロトニン取込抑制剤などが用いられます。
 また、原因に応じての行動療法も必要です。薬のみでは治療困難ですので注意してください。
 日本人は動物の精神的疾患に薬剤治療を行うことを嫌う傾向がありますが、必要であればきちんと用いたほうが動物も人も幸せになれます。また、これたらの薬剤は効果が出るまで4〜8週間の時間が必要ですので、知っておいてください。副作用としては眠気と食欲不振が一般的です。

攻撃行動の予防

 原因にもよりますが、仔犬、仔猫の時期における生活環境や社会化は非常に重要です。正しいパピークラスやキトンクラス(仔犬や仔猫の幼稚園)に参加するのは予防になるかもしれません。
 攻撃行動の原因にもよりますが、雄犬や雄猫の場合、去勢手術は一つの予防になる可能性はありますが、去勢手術をすることで攻撃行動が改善するのは1/3だと言われています。
 攻撃行動の兆候がみられるようであえば、抗不安効果のあるサプリメントであるジルケーン(小型犬・猫用中型犬用)を用いるのも一つの方法かと思います。 

攻撃行動の看護/その他

 以前は特に家族への攻撃行動は、犬が家族の上に位置するためであるという「権勢症候群」とか「アルファーシンドローム」ということが言われていましたが、現在はそれらは家族の攻撃行動に対する考え方としては当てはまらないとされていますので、知っておいてください。
 攻撃行動に対する診断で最も重要なものの一つに家族による観察があります。攻撃行動は、誰がいて、どのようなことがあったときに起こるか? など気づいたことをメモしておいてたり、可能であればスマホなどでビデオ撮影して見せてもらえると診断や治療の参考になることがあります。
 仔犬が咬んで来る場合に、「口の中に手を突っこむ」「マズル(鼻先)をつかんでキャインと鳴くまで押さえつける」などとアドバイスする人がいますが、これは体罰になり、家族に恐怖心や不信感を持ってしまいますので、絶対にやってはいけません。
アボガド

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参考文献・資料等
  1. 伴侶動物治療指針Vol1; 328-331:犬の「家族に対する攻撃行動」の薬物療法
  2. 猫の診療指針Part3; 415-418:攻撃行動
  3. 犬の内科診療Part2; 467-473:攻撃行動
  4. 伴侶動物治療指針Vol.11; 432-439:子犬の攻撃行動
  5. Feline Aggression



<1>動物オーナーの報告によるペットショップで購入した犬の方が身近な人々に対してより顕著な攻撃的行動を起こす可能性について
<2>疼痛に関連した犬の攻撃性: 臨床症例12例
<3>身近な人物に対する攻撃性のある犬と攻撃的ではない犬とでの甲状腺分析値の比較
<4>気質の検査,子犬から成犬まで
<5>犬の不安に関連した障害に対する、フルオキセチン、ジアゼパム、行動調節療法の利用
<6>猫咬傷の発生率および危険因子: 猫の攻撃行動の予防および治療における最初のステップ
<7>攻撃性と甲状腺機能低下症 
<8>クロミプラミン-分離不安症以外の効用
<9>支配攻撃性、なわばり攻撃性および活動過剰の犬に対する食事中の蛋白質含有量とトリプトファン添加の効果
<10>飼い主に咬みつく: 非定型的行動 vs 支配性攻撃行動
<11>犬猫の自主行動
<12>自傷および過剰グルーミングを起こしたシャムネコの1例 
<13>攻撃的傾向を持つ犬の指標となる新しい刺激物
<14>甲状腺機能低下症に関連する犬の行動について
<15>犬の攻撃および忌避行動と生後6ヶ月齢までの体験との関係
<16>クロミプラミン-分離不安症以外の効用
<17>今月の動物行動学症例 犬における飼い主への葛藤性攻撃行動
<18>今月の動物行動科症例 愛撫不耐性
<19>ペットショップから仔犬で入手した犬と非営利のブリーダーから入手した犬との間の行動学的特質の差異
<20>今月の動物行動科症例 音恐怖症、認知機能障害、分離不安、関心を求める行動、および獣医学的原因
<21>今月の動物行動学症例 攻撃的な犬における潜在性不安障害
<22>今月の動物行動学症例
<23>犬における過剰な3,5,3′-トリヨードサイロニンが誘因となった甲状腺中毒症
<24>入院中の犬におけるストレスの行動兆候に対するトラゾドンの効果
<25>ブルテリアにおける強迫性尾追い行動の特徴および関連する危険因子
<26>家庭内での犬同士の攻撃行動:38例(2006-2007年)
<27>今月の動物行動学症例 序列性攻撃行動
<28>今月の動物行動学症例 診断:なわばりによる攻撃行動、恐怖による行動、および全般性不安症
<29>今月の動物行動学 クモ膜嚢胞により引き起こされた犬の攻撃行動
<30>不安に関連した問題行動を起こす犬におけるジアゼパムの効果に関する回顧的評価
<31>子供に対する犬の攻撃性に関して、性別や親である状況が犬の飼い主の知識と態度に及ぼす影響
<32>犬の不安あるいは攻撃性と掻痒症との関連性
<33>猫における転嫁型攻撃性に関連した誘因、代替となる標的、および危険因子の評価
<34>同居猫同士での攻撃性
<35>人の足はネズミではない:人に対する猫の攻撃性をどのように治療するか
<36>犬の訓練での支配vs指導
<37>白衣症候群:予防および治療
<38>猫の行動学的診断におけるシグナルメント要素、併存疾患、および傾向:736例(1991-2001)
<39>犬の行動学的診断におけるシグナルメント要素、併存疾患、および傾向:1,644例(1991-2001) 
<40>動物はどのように学ぶのか:オペラント条件付け
<41>猫の問題行動の予防 
<42>動物シェルターに放棄された犬の問題行動の特徴付けに使用する行動評価アンケートに関する評価
<43>イングリッシュ・スプリンガー・スパニエルにおける飼い主への攻撃に関する全国調査
<44>今月の動物行動学症例
<45>犬が獣医師を咬んだとき:法的問題 
<46>動物愛護団体から里子に出されてからの1年間における子猫の不適切な排泄および攻撃行動の発生率
<47>今月の動物行動学の症例
<48>今月の動物行動学症例
<49>2頭のフェレット間の攻撃行動に関連する要因
<50>今月の動物行動学の症例

この記事を書いた人

福山達也