門脈体循環シャント

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

門脈体循環シャントとは?

門脈体循環シャントは、「門脈体循環短絡症」、「門脈シャント」、「PSS」などと呼ばれこともある病気で、肝臓に入るはずの門脈という血管に余分な血管(シャント)ができて、肝臓を迂回してしまう血管奇形です。

通常、栄養やアンモニアなどの毒素は腸管から吸収され、門脈と呼ばれる血管を通って肝臓に運ばれ、利用されたり、無毒化されます。しかし、この門脈と全身の静脈の間をつなぐシャント(バイパス血管)があると、肝臓を通るはずの栄養や無毒化されるべき有害物質が肝臓を通らないで全身を回ってしまい、さまざまな障害や症状が引き起こされ、最悪の場合死に至ることもあります。

以前は、非常に珍しい疾患として考えられていましたが、現在増加傾向にあります。特に犬に多く見られ、猫では稀な病気です。

門脈体循環シャントの原因

門脈体循環シャントには先天性と後天性の要因がありますが、犬では、多くが先天性で遺伝がその要因として上げられます。後天性の要因として、持続的な門脈高血圧症(門脈の血圧が高くなった状態)や、重篤な肝炎、肝硬変などの肝臓の病気などがあげられます。

門脈体循環シャントは、シェットランド・シープ・ドッグ、ヨークシャー・テリア、ミニチュア・シュナウザー、シー・ズー、ラブラドール・レトリーバーなどで多く見られ、その多くは1歳未満で発症します。

門脈体循環シャントの症状

一般的に門脈体循環シャントの場合、発育が悪く、兄弟姉妹に比べて小さいことが多いものです。多くの場合生後3ヶ月頃を過ぎてから、症状が発現するため、ペットショップやブリーダーで気がつくのは困難な場合があります。

軽症では、主に食欲不振下痢嘔吐などの消化器症状がみられることもあり、重症

になると、アンモニアなどの毒素により、中枢神経症状を特徴とした「肝性脳症」と呼ばれる症状を起こし、ヨダレやふらつき、元気消失などの軽度の症状から、体重減少、徘徊行動、旋回行動、痙攣発作、昏睡、盲目、腹水といった重篤な症状を起こすこともあります。これらの症状は食後1〜2時間ほどで悪化する傾向にあり、特に肉を食べると、大量のタンパク質が分解されることにより、血液中のアンモニア濃度が上がり、症状が悪化することがあります。また、食後よく寝るという症状が見られることもあります。

また、アンモニアと尿酸が多量に腎臓から排泄されるため、尿酸アンモニウム結石が出来やすくなり、膀胱炎や血尿、頻尿、尿道閉塞などの泌尿器症状もみられることがあります。

猫では、これらの症状に加え、特に流涎、失明、興奮や狂騒などが見られるともされています。また、銅色の虹彩は先天性門脈体循環シャントの可能性を示す一つの特徴と言われています。

この病気を放置すると、肝臓の機能障害を起こし、死に至る場合もあるので、早期発見が重要です。

門脈体循環シャントの診断/検査

血液検査血液化学検査尿検査を行います。特にアンモニア(NH3)や食前食後のTBA(総胆汁酸)測定は門脈体循環シャントを疑う場合重要な検査項目です。

確定診断を行うには、造影を含むレントゲン検査超音波検査、CTなどの画像診断が必要になります。

門脈体循環シャントの治療

症状の程度や状態、飼い主の希望などによっても治療法は異なりますが、大きく分けて内科的治療と外科的治療があり、基本的にはシャント血管が原因となるので、このシャントを閉鎖しない限り完治することがなく、根本的な治療には外科的治療が必要となります。

●内科的治療
薬や食事療法により、症状を安定、緩和させます。症状が軽度の場合や外科的治療の前後や外科的治療が困難な場合に内科的治療が選択されます。アンモニアの産生をできるだけ抑制するために、低タンパク質の食事を与え、アンモニアの産生や吸収を防ぐ薬剤の投与、その他、さまざまな症状に応じて症状を抑える薬を投与します。

●外科的治療
症状が重篤な場合や根治を目的とする場合などは外科手術をによりシャント血管を閉鎖します。手術方法は、開腹手術と腹腔鏡手術があります。但し、シャント血管の位置や状態、動物の健康状態によっては手術が難しい場合もあります。診断がつき次第できるだけ早期に手術を実施することをお薦めします。

門脈体循環シャントの予防

多くが先天的な要因で発生する病気であるため、予防することはできません。状態によっては、手術が困難になることがあるため、早期発見・早期治療が大切です。特に他の兄弟姉妹より小さい、食が細いなどの場合には早期に当院にご相談下さい。

門脈体循環シャントの看護/その他

成長の程度、食後の状態などのチェックを行ないましょう。また、上記に記載の症状が見られる場合は、早めに当院にご相談下さい。

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参考文献・資料等
  1. 猫の臨床指針 Part2; 135-139
  2. 伴侶動物医療指針 Vol.7; 91-99:門脈体循環シャント(PSS)を見逃さない診断法と治療の選択肢
  3. 伴侶動物治療指針 Vol.7; 100-112:結紮による門脈体循環シャント(PSS)の外科的治療
  4. 伴侶動物画像診断 No.1; 63-68
  5. 犬と猫のベーシック画像診断学 腹部編; 69-71:門脈体循環シャント(PSS)


<1>門脈シャントに罹患した犬におけるレンズ核のMRI画像診断
<2>犬および猫における左結腸静脈と吻合した先天性門脈体循環シャントの形態学
<3>犬および猫における先天性の脾-後大静脈門脈体循環シャントに関する形態学
<4>マルチーズ犬における肝外門脈シャントおよび胆汁酸濃度上昇の遺伝
<5>原発性肝炎に罹患した犬における全血中マンガン濃度
<6>犬および猫における左胃静脈由来の先天性門脈体循環シャントの形態学
<7>犬の先天性門脈体循環シャント減衰後の転帰に関連した肝臓の遺伝子発現および血漿アルブミン濃度
<8>先天性門脈体循環シャントが存在する犬の血清ヒアルロン酸
<9>犬の先天性肝外門脈体循環シャント – エビデンス・ベースは?
<10>猫に認められた異常な大静脈の特徴を伴う複雑な肝外門脈体循環シャント: コンピュータ断層撮影法による特徴
<11>ビション・フリーゼの子犬に認められた門脈体循環シャントに関連すると思われる掻痒症
<12>門脈シャントの超音波検査
<13>2頭の犬における腹腔鏡による門脈体循環シャントの閉鎖
<14>犬の先天性門脈体循環シャントに関連する肝病変における組織病理学および免疫組織化学調査
<15>犬に認められた肝内門脈体循環シャントと大動脈弁狭窄症を伴った先天性肝動静脈瘻
<16>臓器の機能不全をもつ患者の鎮静および麻酔
<17>困難な症例: 急性神経症状を示したコリー
<18>ヨークシャー・テリアの先天性単一門脈体循環シャントの遺伝に関する調査
<19>門脈体循環シャント: 64症例の診断、予後、および治療(1993-2001)
<20>犬猫における門脈体循環シャントの診断と治療
<21>2頭の猫に認められた後天性門脈体循環シャント
<22>造影超音波検査は先天性肝外門脈体循環シャントを持つ犬において肝臓の微小血管灌流を定量化するために実施可能な技術である
<23>雑種犬と純血種犬における遺伝性疾患の罹患率:27,254例(1995-2010)
<24>胸部に終止する門脈奇静脈シャント減衰のための経横隔膜アプローチ
<25>血管造影下コンピューター断層撮影による犬の門脈奇静脈シャント解剖の判定
<26>犬の肝内血管構造:これは犬に適切な機能的解剖モデルだろうか?
<27>犬の続発性門脈圧亢進症を伴う高流量肝臓動静脈奇形の血管内治療
<28>犬の重複後大静脈のマルチスライスコンピュータ断層撮影法および超音波画像診断検査での特徴
<29>小動物の閉塞した門脈における海綿状変化のコンピュータ断層撮影と超音波検査上の特徴
<30>画像診断――ピットブルテリアの腹腔腸間膜動脈幹および門脈低形成
<31>犬の門脈体循環シャントの検出と特徴付けにおけるコンピューター断層撮影血管造影と超音波画像の比較
<32>今月の麻酔症例
<33>犬における先天性門脈体循環シャントの外科的減衰と関連する血管新生のマーカー
<34>後天性および先天性門脈体循環シャントに罹患した若齢犬における臨床的および臨床病理学的異常所見:93例(2003-2008)
<35>先天性門脈体循環シャント罹患犬における肝臓のヘプシジン遺伝子発現
<36>先天性肝外門脈体循環シャントが存在する犬における、コンピュータ断層撮影法を用いたアメロイド・リング・コンストリクターのin vivoでの挙動の評価
<37>超音波ガイド下経皮脾臓注射後の正常犬における撹拌生理食塩水の血管内移行の超音波画像所見
<38>先天性門脈体循環シャントに対して外科的減衰術を行った犬における肝臓の病理組織的病変と臨床所見との間の関連性:38例(2000-2004)
<39>急性期の患者の生理学的評価および臨床検査評価(APPLE)スコア:入院犬の疾患重症度層別化システム
<40>先天的門脈体循環シャントの犬のトロンボエラストグラフィによる(血栓弾性描写法)評価
<41>日本におけるアメリカン・コッカー・スパニエルの慢性肝炎
<42>エビデンスには何がありますか? 犬の門脈体循環シャントの内科治療
<43>経脾門脈シンチグラフィーを用いた複数の後天性門脈体循環シャントの特徴決定
<44>肝性脳症:病因、発症機序、そして臨床徴候
<45>犬10頭の門脈体循環シャント診断のための造影磁気共鳴血管造影
<46>犬および猫の後天性門脈側副循環
<47>先天性肝外門脈体循環シャントを有する犬の外科的緩和前後の肝容積測定
<48>先天性門脈体循環シャントを有する犬の全血中マンガン濃度
<49>セロハンバンド法による先天性肝外門脈体循環シャントの外科的減衰術を受けた猫の結果:9例(2000-2007年)
<50>犬の肝内シャントのステント支援コイル塞栓術の成功を妨げる肝内静脈側枝
<51>アイリッシュ・ウルフハウンドにおける肝内門脈体循環シャントの遺伝を示す証拠
<52>先天性門脈体循環シャントを有する犬に対する大豆蛋白分離物と肉ベースの低蛋白食との比較
<53>犬での単一の肝外門脈体循環シャント治療を目的とした外科的なアメロイド・リング・コンストリクター装着後の長期的転帰
<54>画像診断:門脈大静脈シャント形成を伴う、または伴わない後大静脈の奇静脈連結
<55>先天性門脈体循環シャントがある犬における外科的治療後と内科的治療後の生存期間の比較
<56>あなたの診断は何ですか? 門脈大静脈シャント
<57>犬の血清胆汁酸刺激における食後とセルレチドの比較
<58>単一性先天性門脈体静脈シャントの外科的減衰前後での犬の副腎皮質刺激ホルモンに対する副腎の反応
<59>門脈血栓症の猫6例(2001~2006)
<60>CT血管造影検査によって確認された犬の肝外門脈体循環シャントの解剖学
<61>画像診断――犬の複合型肝内門脈体循環シャント
<62>定量的コンピュータ断層撮影法による門脈体循環シャントの犬の肝容積の評価
<63>画像診断—3頭の犬における門脈形成不全および後大静脈の途絶
<64>先天性門脈血管異常が疑われる犬におけるコントラスト増強門脈磁気共鳴血管造影検査
<65>先天性肝外性門脈体循環シャントの犬における肝臓の大きさ、体重、急速な完全閉鎖に対する耐容性
<66>アイリッシュウルフハウンドの尿素回路酵素欠損による一過性高アンモニア血症
<67>門脈高血圧症:病態生理学、診断、および治療
<68>犬の先天性門脈体循環シャントの外科的減衰前後における血液凝固プロフィール
<69>犬の肉眼的門脈体循環シャントに対する超音波診断のための撹拌生理食塩水およびヘパリン化血液の経脾注入の利用
<70>単一性先天性門脈体循環シャントに対する外科的治療を受けた猫における腸間膜門脈造影検査の所見と結果との関連性
<71>先天性門脈体循環シャントを外科的に整復した犬における予後指標としての肝臓のバイオプシーサンプルの組織学的検査:64例(1997-2005)
<72>犬の門脈体循環シャント診断における99mTcO4ー経脾門脈シンチグラフィーと経直腸門脈シンチグラフィーの比較
<73>5歳齢およびそれ以上の年齢の犬における先天性肝外門脈体循環シャント減衰の臨床結果:17例(1992-2005)
<74>肝動静脈瘻の犬における外科的および画像診断技術を用いた介入治療
<75>犬の肝内門脈体循環シャントの解剖学的部位に関連した疫学的因子
<76>左区分の肝内門脈体循環シャントの外科的治療:28頭の犬における左肝静脈の部分結紮又はアメロイドリング・コンストリクター設置の転帰(1995-2005)
<77>犬の肝外門脈シャントの評価に対する3次元マルチスライスヘリカルCTテクニック
<78>犬の肝胆道系疾患および門脈体循環シャントの検出のための血漿中プロテインC活性の評価
<79>肝内門脈体循環シャントの犬の治療として経皮的にコントロールする水硬性閉塞物質を使用した結果
<80>単一性先天性門脈体循環シャントの外科的治療を受けた犬における門脈静脈造影検査所見と結果との関連性:45症例(2000~2004)
<81>9頭の犬と1頭の猫においてアメロイド・コンストリクターで閉塞した肝内門脈体循環シャントの転帰
<82>先天性門脈体循環シャントに罹患した犬猫の脳の磁気共鳴画像における特徴
<83>犬における先天性肝外門脈体循環シャントの治療としてセロハン・バンドを用い術中減衰を実施した場合と実施しなかった場合に関する評価
<84>犬の門脈体静脈シャントを診断する際の絶食時の血漿アンモニア及び胆汁酸濃度の診断的価値
<85>犬の肝内門脈体循環シャントに関連した下大静脈後尿管
<86>猫2頭において先天性肝線維症に続発した後天性門脈体循環シャント
<89>犬28頭における門脈体循環シャント診断のための過テクネチウム酸(99mTCO4(-))経脾臓門脈シンチグラフィの利用
<90>犬の門脈体循環シャントに対するヘリカルコンピューター断層撮影による血管造影検査
<91>ケアンテリアにおける遺伝性先天性肝外門脈体循環シャント
<92>犬猫における門脈体循環シャントの超音波診断
<93>犬の先天性門脈体循環シャントの治療における段階的血管閉塞法およびその応用:再評価
<94>犬の肝内門脈体循環シャントの急性完全閉塞に対する経皮的な心房中隔閉鎖器具の使用
<95>犬の単一性肝外門脈体循環シャントの治療に対するアメロイドコンストリクターの評価:168症例(1995-2001)
<96>犬においてアメロイド・コンストリクター設置後の静脈閉塞に関する特徴の評価
<97>犬における肝内門脈大静脈シャント閉塞後の門脈高血圧の管理法としてアメロイド・コンストリクターを用いない門脈大静脈の静脈移植の再評価
<98>小動物医療における磁気共鳴画像診断装置:臨床応用
<99>右側の肝内門脈体循環シャントにアプローチするための新しい切開法:解剖学的研究と犬3頭における臨床使用
<100>先天性門脈体循環シャントの犬106頭および猫5頭におけるセロハン絞扼術の結果
<101>先天性門脈体循環シャントの犬におけるシャントの閉鎖程度および門脈直径と予後との密接な関係
<102>高アンモニア血症を示した犬の超音波検査所見:90症例(2000~2002年)
<103>犬において門脈系を超音波検査するための標準断面
<104>犬の先天性肝外門脈体循環シャントの外科的減衰術中における門脈の血流力学的変化に関する超音波学的評価
<105>犬における先天性門脈体循環シャントの診断と犬種との関連性;2,400症例(1980-2002)
<106>先天性門脈体循環シャント手術における術中腸間膜門脈造影検査の利用
<107>正常犬10頭と門脈体循環シャントの犬10頭におけるヘリカルCT門脈造影法
<108>犬2頭における、先天性および後天性肝外門脈体循環シャントの同時発生
<109>犬3頭において先天性門脈シャントの診断に使用したコントラスト倍音超音波
<110>ヘリカルCT血管造影を使った門脈-奇静脈シャントの診断
<111>2頭の犬における同時性の先天性及び後天性肝外門脈シャント
<112>犬の門脈体循環シャントにおける経静脈コイル塞栓術
<113>犬の肝内門脈大静脈シャント減衰時における門脈に対する術中超音波検査機の使用
<114>肝葉内門脈大静脈シャントの犬4頭に対する治療としての、アメロイドコンストリクター設置及び肝葉切除術と併用した門脈大静脈移植の利用
<115>犬における門脈体循環シャントの確認と特徴付けに対する経静脈逆行性門脈造影法
<116>肝内門脈シャントの犬に対する生存ならびに予後指標:32症例(1990-2000)
<117>猫の肝内性門脈体循環シャントに対し、経頚静脈コイル塞栓術を用いた一例
<118>門脈体循環シャントが疑われる犬における画像診断
<119>猫の単一肝外門脈体循環シャントの管理に対するアメロイドリングコンストリクターの評価:23例(1996-2001)
<120>猫の単一性先天性肝外門脈体循環シャントに対するアメロイドコンストリクター閉塞法の結果:12例(1993-2000)

この記事を書いた人

福山達也