多食:Polyphagia

多食とは?

 多食とは、食事を必要以上に欲しがる、いつもより食べる量が増える、食べてもすぐに欲しがる、食べ物への執着が強くなる状態を指します。

 成長期、妊娠中、授乳中、運動量の増加、寒い環境などでは、生理的に食欲が増えることがあります。一方で、糖尿病、甲状腺機能亢進症、クッシング症候群、消化吸収不良、寄生虫症、膵外分泌不全、脳や神経の異常など、病気のサインとして多食がみられることもあります。

 特に「よく食べるのに痩せる」場合は、病気が隠れている可能性が高く、注意が必要です。

体調不良の原因

 多食の原因は大きく、生理的なもの、食事や環境によるもの、薬剤によるもの、病気によるものに分けられます。

 生理的な原因としては、成長期、妊娠、授乳、運動量の増加、寒冷環境などがあります。食事による原因としては、フードの量が不足している、カロリーが低いフードに変更した、食事内容が合っていない、他の動物との競争で十分に食べられていないなどがあります。

 薬剤では、ステロイド剤などの影響で食欲が増えることがあります。病気としては、糖尿病、犬のクッシング症候群、猫の甲状腺機能亢進症、寄生虫症、膵外分泌不全、慢性腸疾患、肝疾患、門脈体循環シャント、巨人症、インスリノーマ、脳の病変などが原因となることがあります。

体調不良の症状

 多食では、食事を急いで食べる、食後すぐにまた欲しがる、ゴミ箱や人の食べ物をあさる、盗み食いをする、食べ物への執着が強くなるなどの変化がみられます。

 同時に、体重が増える場合もあれば、反対にたくさん食べているのに体重が減る場合もあります。多飲、多尿、下痢、軟便、悪臭の強い便、嘔吐、吐出、腹部膨満、パンティング、皮膚や被毛の変化、活動性の変化、落ち着きのなさ、性格の変化、視覚異常、ふらつきなどを伴うこともあります。

 特に、食欲が増えているのに痩せる、水をよく飲む、尿量が増える、下痢が続く、急に性格や行動が変わった場合は、早めの診察をおすすめします。

体調不良の診断/検査

 多食の診断では、まず年齢、成長段階、避妊・去勢の有無、妊娠の可能性、食事内容、給与量、フード変更の有無、体重変化、飲水量、排尿量、便の状態、投薬歴、サプリメント使用歴、生活環境、ストレス要因などを確認します。

 特に重要なのは、体重の変化です。食欲が増えて体重も増えているのか、食欲が増えているのに体重が減っているのかで、疑う病気が変わります。

 検査としては、身体検査、体重測定、血液検査、血液化学検査、尿検査、糞便検査を基本に行います。猫では甲状腺ホルモン検査を検討します。必要に応じて、レントゲン検査、腹部超音波検査、ホルモン検査、副腎機能検査、膵外分泌機能検査、消化管の精査、CTやMRIなどの画像検査を行うこともあります。

 来院時には、現在のフード名、1日の給与量、おやつの量、体重の推移、飲水量、便の写真、服用中の薬やサプリメントの情報をお持ちいただくと診断の助けになります。

体調不良の治療

 多食の治療は、原因によって異なります。

 成長期、妊娠、授乳、運動量の増加など生理的な原因であれば、栄養バランスを確認しながら食事量を調整します。フードのカロリー不足や給与量不足が原因であれば、適切なフードや給与量を見直します。

 薬剤が原因の場合は、薬の必要性を確認したうえで、可能であれば減量や変更を検討します。ただし、自己判断で薬を中止すると危険な場合がありますので、必ず獣医師にご相談ください。

 糖尿病、クッシング症候群、甲状腺機能亢進症、寄生虫症、膵外分泌不全、消化管疾患、肝疾患などが原因の場合は、それぞれの病気に応じた治療を行います。基礎疾患が改善すると、多食も軽減することがあります。ただし、病気がコントロールされても食欲の強さが残る場合もあります。

体調不良の予防

 多食そのものをすべて予防することはできませんが、日頃の体重管理と健康チェックが早期発見につながります。

 毎日の食事量を目分量ではなく計量し、おやつの量も含めて管理してください。定期的に体重を測定し、急な増減がないか確認しましょう。多頭飼育の場合は、他の犬猫の食事を食べていないか、逆に食事を奪われていないかも確認が必要です。

 また、定期的な健康診断、尿検査、血液検査、糞便検査、寄生虫予防を行うことで、糖尿病、甲状腺疾患、消化吸収不良、寄生虫症などの早期発見につながります。

体調不良の看護/その他

 ご自宅では、食事量、飲水量、尿量、便の状態、体重の変化を記録してください。特に「食べているのに痩せる」「水をよく飲む」「尿が多い」「下痢や軟便が続く」場合は重要な情報になります。

 食欲が強いからといって、急に食事量を大きく増やすと、肥満、下痢、嘔吐、膵炎などのリスクにつながることがあります。反対に、急激な食事制限もストレスや栄養不足につながることがあります。食事量やフードの変更は、体重、年齢、病気の有無に応じて調整することが大切です。

 盗み食い、ゴミあさり、誤食を防ぐため、食べ物や薬、サプリメント、キッチン周囲の管理にも注意してください。

 多食は「元気でよく食べている」だけに見えることもありますが、病気のサインである場合があります。特に体重減少、多飲多尿、下痢、嘔吐、行動の変化を伴う場合は、早めに当院へご相談ください。

pets
動物医療保険をお持ちの方は診察前に保険証を提示してください!

library_books
参考文献・資料等
  1. Ettinger’s Textbook of Veterinary Internal Medicine 9ed CHAPTER 19: Polyphagia [壱岐動物病院訳]


<1>

[WR21,VQ21:]

■VMN Live

この記事を書いた人

福山達也