貧血

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貧血とは?

 貧血(ひんけつ)とは血液中にある赤血球数や赤血球の中にあるヘモグロビンという色素が基準範囲以下になることをいいます。貧血は病気の名前ではなく症状の名前です。ヘモグロビンは赤血球の中にあり、体の各組織に酸素を運搬する役割を担っています。赤血球の数が少なくなったり、赤血球の数は十分にあっても、ひとつひとつの赤血球の中のヘモグロビンが少なくなったりすると貧血が起こり、様々な症状があらわれます。

貧血の原因

 貧血の原因には大きく分けて次のようなものが挙げられます。
1.赤血球の生産が何らかの原因で阻害される場合
非再生性貧血(ひさいせいせいひんけつ)と呼ばれ、赤血球を生産している骨髄が何らかの原因で生産を抑制されているため起こります。
2.赤血球の破壊が何らかの原因で進行している場合
溶血性貧血(ようけつせいひんけつ)とも呼ばれ、免疫疾患や中毒などが原因となり、通常より速く赤血球が破壊されるため起こります。
3.血管から赤血球が失われている場合
失血性貧血(しっけつせいひんけつ)とも呼ばれ、血管の外に血液が漏れ出ることにより赤血球が減少します。
事故・外傷などで体外へ出血したり、胃腸炎や腫瘍などで組織が損傷し、体内で出血している場合に起こります。

貧血の症状

 赤血球は酸素を運搬する役割を担うため、貧血がおこると体の各組織に酸素の運搬ができなくなり、様々な症状が起こります。食欲不振元気消失、疲れやすくなり動くと息切れをするなどの症状、結膜や口腔粘膜が白っぽく退色するなどの症状がみられ、重症の場合はショックを起こし、意識がなくなり失神することがあります。

貧血の診断/検査

 赤血球の数やヘモグロビンの量は血液検査でわかります。器械で計測するだけでなく血液塗抹検査を必ず行い、その性質や形、バベシアへモプラズマなどの寄生がないかなどを見ることも大切です。

健常な犬猫の赤血球像
単位
赤血球数 ✕104/μl 550~850 592~1,116
Hb g/dl 12.0~18.0 8.2~15.3
Ht 37~55 24~46
MCV fL 60~77 37~55
MCHC % 32~36 26~36
 問診(特にダニの予防歴)や身体検査の他、全身状態を把握するために血液化学検査尿検査が必要になるでしょうし、原因を特定するために、レントゲン検査超音波検査を行うこともあります。

貧血の治療

 貧血を起こしている原因を追究し、その原因に対する治療を行います。治療は原因により様々です。対症療法的に造血剤を投与したり、免疫が関係している場合は免疫抑制剤などを投与することもありますし、貧血が重度の場合は輸血などを必要もあります。

※申し訳ありません。現在、当院では輸血は行っておりません。

貧血の予防

 ネギ類やにら、にんにくなどは俗に「ネギ中毒」と呼ばれ、溶血性貧血を起こすことで知られています。これらを摂取にしないよう気をつけましょう。バベシア症は地域によって流行しています。この病気も重度の貧血を起こします。バベシアへモプラズマはマダニが運んできますので、動物病院で処方されるきちんとしたノミ・ダニ駆除剤を適切に用いることは間接的に予防になるでしょう。

 手作りのフードは栄養が偏ったり、足りないことがわかっています。きちんとしたペットフードを与えることも予防になると思います。

貧血の看護/その他

 血尿や血便などの症状や、その他上記のような症状がみられる場合、早期治療が重要となります。治療が遅れると重症になることもあるため、早めに当院に相談してください。

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参考文献・資料等
  1. 基礎から学べる 血液学テキスト
  2. 小動物臨床における診断推論; 169-179
  3. 伴侶動物治療指針Vol.11; 403-417:貧血の診断と治療
  4. 臨床家のための血液病学アトラス;59-80:貧血


<1>貧血を患う猫における血清心トロポニンI濃度 - 単一施設における予備的観察研究
<2>180頭の貧血の猫に関する回顧的研究: 徴候・病因および生存データ
<3>貧血の猫の血液中のMycoplasma haemofelis,’Candidatus Mycoplasma haemominutum’,Bartonella種,Ehrlichia種,Anaplasma phagocytophilumのDNA保有率
<4>猫の再生不良性貧血 – 臨床病理学的特徴と、関連する疾患 1996-2004
<5>入院中の犬および猫における院内貧血の発生率
<6>手作りの成犬維持食のレシピに対する評価
<7>重症の犬および猫における院内貧血:多施設研究
<8>貧血:原因の確定
<9>貧血および非貧血犬における抗赤血球抗体と疾患との関連性
<10>ネコの非再生性貧血
<11>猫の非再生性貧血
<12>猫の赤血球輸血:126例(1999年)
<13>輸血医学
<14>1) 論説:オキシグロビン:輸血剤?
<15>猫におけるヘモグロビンベースの酸素運搬液の使用:72例(1998-2000)

[WR21,VQ21:]

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この記事を書いた人

福山達也