そもそもワクチンって何?
ワクチンとは病原菌やウイルスによる感染症を予防するために、病原体を無毒化または弱毒化したものを注射したり飲ませたりし、感染症への抗体(感染症という敵に対して防御する体の働き)を作ることで、感染症に対する免疫力をつけるためのものです。人だとインフルエンザワクチンなどが有名ですね。病気になってから治療するのではなく、病気にならないようにしたり、仮に病気になっても症状を軽くする効果があります。
※壱岐島では2017-18年、2022-23年に猫パルボウイルス感染症(猫汎白血球減少症)が大流行し、多くの猫が亡くなりました。これらはキャットオーナーがきちんとワクチン接種を受けていれば防げる病気です。今どきワクチンを打たないで猫を飼育しているなど昭和の飼い方です。
混合ワクチンは任意ですが、すべての猫ちゃんに接種するよう推奨されているコアワクチン(「死に至る怖い病気である」「広く流行している」「人と動物の共通感染症であり人の健康を脅かす」などの理由)とノンコアワクチン(地域や飼育環境に合わせて接種するワクチン)の組み合わせで構成されており、単体、3種、5種、7種、など予防できる病気の組み合わせで様々なものがあります。
ワクチンの種類やメーカー、飼育環境などにもよりますが、子猫の場合は、生後2ヶ月頃から数回接種する必要があり、その後1年から数年ごとに追加接種が必要です。
コアワクチン | ノンコアワクチン |
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猫パルボウイルス感染症(猫汎白血球減少症)、猫ウイルス性呼吸器感染症(猫ウイルス性鼻気管炎、猫カリシウイルス感染症) | 猫白血病ウイルス感染症、猫免疫不全ウイルス感染症(猫エイズ)、クラミドフィラ・フェリス感染症※1 |
※1:人と動物の共通感染症、クラミドフィラ・フェリス感染症に関しては意見が分かれている。
壱岐動物病院併設ペット美容室・ペットホテルBOW-MEOWでは店内感染防止の為、コアワクチン(3種混合)未接種の猫ちゃんをペットホテル、ペット美容室で受け入れることはありません。
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日本の混合ワクチン接種率はどれくらいですか?
日本のワクチン接種率は欧米に比べ非常に低いのが現状です。実は、まだまだ動物の健康に対して発展途上国と言ったレベルなのです。壱岐はこのデータよりまだ低い状況です。一旦どこかから入り込まれると一挙に伝染病が広がります。2017-18年の猫パルボウイルス感染症の大流行がいい例です。
※当院では2019年より紙の証明書だけでなく、デジタル混合ワクチン予防注射証明書も無料発行しております。当院で混合ワクチン予防注射を接種された方はマイページからログインしていつでも最新の混合ワクチン予防注射接種日や次回接種予定日をご確認いただけます。詳しくは当院受付にてお尋ね下さい。
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ワクチン接種後の注意事項
□ワクチンを接種してから2〜3日は安静を心がけ、激しい運動やシャンプーなどは避けてください。
□接種後、元気や食欲がなくなったり、軽い発熱があったり、便が柔らかくなることがありますが、数日で回復します。
□まれに高熱、嘔吐、下痢、けいれん、唇や眼の腫れ、かゆみ、じんましん、などの副反応が見られることがあります。このような場合はすぐに当院にご連絡ください。
□非常に稀ですが、アナフィラキシーが起こることがあります。これは接種後30分以内に起こることが多いものです。ご心配であれば院内もしくは駐車場で接種後30分ほどお待ちください。
□過去にワクチン接種や他の注射、食餌などで、アナフィラキシーを起こしたことがある場合は必ず事前にお申し出ください。予防的処置を事前に行いワクチン接種を致します。
□当院は24時間対応病院ではありませんので、ワクチン接種はできるだけ午前中にされることをお勧めします。
□特に生後1年目でワクチン接種がきちんと終わっていない段階で、ワクチン未摂取や病気の猫ちゃんに近づいたり(人間のご家族も)、多くの動物が集まるような場所、ペット美容室へは連れて行かない方が無難です。また長距離移動も避けましょう。
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ワクチンの副反応はどれくらいの確率ですか?
海外のデータですが、猫のワクチンの副反応(非特異的ワクチン反応、アレルギー反応、じんましん、またはアナフィラキシー)発現率は1万回中51.6回(0.52%)と報告されています[1]。ちなみに日本で人が1年間で交通事故にあう確率は0.9%ほどです
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猫のワクチンが腎臓病を誘発しますか?
ワクチン製造過程でCRFK(猫腎継代)細胞が使用されているため、抗体ができて猫の腎臓病誘発に関与しているのではないかというはなしがありますが、確かにいくつかの論文で猫の腎細胞に対する抗体が産生されたという報告がありますが、この抗体が猫の腎臓病の誘発に関与しているという報告はこれまであがっていません[2]。猫の慢性腎臓病の発症には様々な要因が関与しています。
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なぜ、子猫や最初の年はワクチンを何回か接種するのですか?産まれたばかりの子猫は、母猫の母乳を飲むことで、病気と戦う抗体をもらいます。これにより、数週間~数カ月の間は病気から守られます。ただし、子猫に母乳からの抗体が多く残っている間にワクチンを接種しても、ワクチンによる予防効果はうまく発揮されません。厄介なことに抗体の残り具合はそれぞれの子猫で違います。その子猫の抗体がどの程度まで減ったかどうか予測することができないので、最初はほとんどの子猫が切れ始める時期から何回かの接種が必要なのです。
また、最初の年は1回ではなく2回以上接種することで、ブースターといって2段ロケットのようにより高く確実なワクチン抗体を得ることができます。現在初年度は、生後2ヶ月目、3ヶ月目、4ヶ月目以降の3回接種が推奨されています。
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成猫の追加接種はいつすればいいですか?様々なガイドラインがありますが、伝染病への感染リスクの低い猫は3年に1回、高い猫は毎年が推奨されています。感染リスクが高い猫とは、
- 外飼や家の内と外を行き来する猫
- 多頭飼育
- 腎臓病や糖尿病で頻繁に動物病院に通院している
- ペットホテルを利用する
- キャットオーナーが猫と接触する機会が多い(保護猫活動をしている、友達が飼っている猫と接触する、動物病院やペットショップのスタッフなど)
などです。壱岐などの田舎は猫のワクチン接種率が非常に低い、地域猫も多いことから考えると多くの猫は感染リスクが高いと判断されます。1頭の完全室内飼育でキャットオーナーも他の猫に接触する機会がなければ3年に1回。それ以外は毎年接種を推奨します。
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参考文献・資料等
- Adverse events after vaccine administration in cats: 2,560 Cases (2002-2005)
- ワクチンウイルス培養に使用するCRFK 細胞は猫の腎臓病を誘発するか?
- 伴侶動物治療指針 Vol.9; 430-434:ワクチン接種後アレルギー反応
- 猫の臨床指針Part1; 56-62:猫の予防医学と定期検診
- 犬と猫のエマージェンシー対応
[WR21,VQ21:]