アレルギー性皮膚炎

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

アレルギー性皮膚炎とは?

 アレルギー性皮膚炎とは、アレルギー症状を起こす原因物質であるアレルゲンによって、体内の免疫機構が過剰に反応するため生じる皮膚炎のことをいいます。そもそも「アレルギー」とは、動物の体を守るために備わっている体内に侵入した異物を除去しようとする働き・反応(免疫)が強すぎるために、自分自身を傷つけてしまうことをにより起こります。
 動物の周囲でアレルゲンの原因物質になるものには、ハウスダスト、花粉、カビ、ノミ、ダニ、食器、食べ物などなど様々なものがあります。その種類は数千から数万あるとさえ言われます。

アレルギー性皮膚炎の原因

アレルギー性皮膚炎には、原因によって主に次のような種類が挙げられます。
(1)吸引性アレルギー
ハウスダストや花粉、カビ、ダニなどが原因(アレルゲン)となり、これらの原因物質を吸引することによって発症します。
(2)食事性アレルギー
原因(アレルゲン)となる食物(ペットフード、人間食、おやつなど)を摂取することによって発症します。
主にタンパク質が原因となることが多く、牛乳、肉類、小麦などが挙げられます。
(3)接触性アレルギー
食器や絨毯(じゅうたん)など身の回りにあるあらゆるものが原因(アレルゲン)となり、そのアレルゲンに触れることによって発症します。
(4)ノミアレルギー
ノミの唾液中にあるタンパク質が原因(アレルゲン)となり、ノミが動物の皮膚に寄生して吸血することでアレルギー症状を発症します。夏場のかゆみの多くがこのノミアレルギーが原因とさえ言われます。

 アレルギーには「コップ説」というものがあります。同居動物がいて、「同じ環境、食事をしているのにアレルギーが出る動物と出ない動物がいるのは、なぜだろう?」 と思ったことはありませんか? それを説明するのがこの「コップ説」です。コップの大きさをアレルギーの許容量とし、注がれる水をアレルゲンとします。コップの大きさ(アレルギーの許容量)は動物により違います。アレルゲン物質が蓄積し、コップから溢れるときに症状として現れるという考え方です。ですから大きなコップの動物もいれば、小さなコップの動物もいるので、同じ環境や食事でも出る動物と出ない動物がいるという訳です。

アレルギー性皮膚炎の症状

 アレルギー性皮膚炎の一番の症状は皮膚の痒みです。痒みは動物にとってもとてもストレスになります。特に痒みがでる部分は耳、脇、股、足先、口や目の周りなどが多く、1日中体をしきりに舐めたり噛んだり、顔をカーペットに擦り付けたり、耳を掻いたりします。症状が進行すると皮膚に発赤(皮膚が赤くなる)や脱毛、発疹などが見られます。また、細菌の二次感染によって症状が悪化することがあります。
 食事性アレルギーでは皮膚症状と同時に外耳炎下痢などの消化器症状が見られる場合もあります。フードを変えて下痢になる。特定の食べ物を食べると下痢になるなどの症状が見られる時は要注意です。
 接触性アレルギーでは、原因になるアレルゲンと接触した部分に皮膚炎がみられます。例えば絨毯などであればお腹側、食器であれば口の周辺などです。絨毯や敷物を変えてお腹側が赤くなるとか、食器を変えたら口の周りが赤くなる、痒がるとなると接触性アレルギーが疑われます。
 ノミアレルギーには、アレルギー性皮膚炎の多くを占めるとさえ言われますので、「ノミアレルギー性皮膚炎」として単独別項目でご説明します。

アレルギー性皮膚炎の診断/検査

 アレルギー検査を行うことで、アレルゲンを特定できることがありますが、まずは、症状や問診などからアレルゲンを予測し、アレルゲンと思われる物や食べ物を除去して経過観察をしていきます。経過がおもわしくない、アレルゲンをきちんと特定したい場合はアレルギー検査を行います。

アレルギー性皮膚炎の治療

 アレルギー性皮膚炎の治療は、まず、痒みをコントロールが主になります。まず原因となるもの、可能性のあるもの特定を行い、それらを除去していくとともに、抗ヒスタミン剤や副腎皮質ホルモン剤、免疫抑制剤などを単独または併用して投与します。食事性アレルギーが疑われる場合は、動物病院で処方されるアレルギー用の処方食を用いるといいでしょう。この場合、おやつを含め数週間はこの処方食のみを与えることが重要になります。

他に減感作療法という治療法もあります。この方法は、アレルゲンを少量体に入れ、アレルゲンにだんだん体を慣れさせてしまうという治療法です。この方法は、アレルギーの体質自体を改善し、完治することができる可能性もありますが、費用や治療期間も長期となります。

皮膚は表面にある脂質バリアで、 皮膚の健康を維持します。その脂質バリアの機能を維持するためにPCSO- 524含有サプリメントを用いるのも補助治療の一つです。

▲上記の療法食は当院でも購入可能です(注文の場合もあります)し、オンラインでのご購入可能です。必要な方は専用の病院コードを発行致しますので、当院受付でお申し出ください。
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アレルギー性皮膚炎の予防

 ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミ駆虫剤を定期的に使用することで予防することが出来ます。ただし、市販薬ではなく動物病院で処方される予防薬を使ってください。
 ハウスダストはこまめな掃除、空気清浄機の使用などで減らすことはできますが、完全に除去することは難しいでしょう。。。それ以外の原因では、体質が関与するため予防は難しくなってきます。定期的なシャンプーは体に付着したアレルゲンを洗い流してくれるかもしれません。
 ​​​​​​​痒がるという症状の原因はたくさんあります。日々の観察が、原因の早期発見につながます。

アレルギー性皮膚炎の看護/その他

 いつから症状が出たか? どんな環境で生活しているか? 普段どんな食事内容(主食、おやつ)か? 等を正確に獣医師へ伝えることで的確な診断、治療が可能となります。また、特に子犬や子猫の時期の食事は十分に注意してください。安価粗悪なペットフードを体を作るこの時期に用いることはアレルギーを招く可能性もあります。

アレルギーというのは症状や重症度が動物ごとに違います。そして1回や2回の診察で治るような病気ではなく、一生付き合っていかないといけない可能性が高い病気です。いかにしてアレルゲンを除去するか? 少なくするか? いかに症状を軽くしてあげられるか? が重要となります。また、治療の効果もその動物、動物で大きく違うことを知っておいて下さい。その子に効果的な治療法を見つけるには、時間と忍耐がかかることがあります。

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この記事を書いた人

福山達也