変性性脊髄症(DM)

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

変性性脊髄症(DM)とは?

 変性性脊髄症(へんせいせいせきずいしょう)は、1973年にジャーマン・シェパードで初めて報告された病気です[01]。英語の頭文字を取ってDMなどと呼ばれることもあります。この病気は、脊髄の神経細胞が変性することで機能障害があらわれる病気で、まずは後肢にはじまり、前肢、さらには呼吸障害へと進行していきます。この病気は痛みを伴わないのが特徴です。

 一般に、ジャーマン・シェパードで発生が多いことで知られていますが、シベリアン・ハスキー、チェサピークベイ・レトリバー、ボクサーなど他の犬種でも多く報告されていて、近年、ウェルシュ・コーギーでも発生頻度が増加していることが分かっています。

変性性脊髄症(DM)の原因

 発生原因は不明な点が多く、免疫複合体の関与、代謝産物の蓄積などが疑われてきましたが、最近になって発症した犬では特定の遺伝子(SOD1遺伝子:抗酸化作用のあるタンパク質を作る機能を有する遺伝子)に変異があることが分かってきました。発症の確率と遺伝子の関連等、詳細についてはまだ分かっていないところも多く、変異したSOD1遺伝子を持った犬で、何らかの原因が引き金となり免疫複合体などを形成した結果、引き起こされると言われています。

変性性脊髄症(DM)の症状

 はじめは、後ろ肢の感覚の低下から、歩行時、肢をすって歩くなどの変化が見られます。初期症状は椎間板ヘルニアやその他の神経疾患と類似していることが多くあります。また、腰がふらついたり、肢がもつれるなどの症状が見られるようになり、さらに進行すると後ろ足をそろえて歩いたり(ウサギ跳び)、後ろ肢を引きずって歩くようになります。

 症状は1年から3年ほどで徐々に進行していきます。その後、次第に前肢へと症状が進行して、起立困難や排便・排尿が困難になることがあります。最終的に脳にまで病気が進行すると呼吸障害を呈し、死に至ります。

変性性脊髄症(DM)の診断/検査

 現在のところ、変性性脊髄症に対する特異的な生前診断法は確立されていません。

 診断において重要になるのは、犬種と疼痛を伴わない慢性進行性の両後肢不全麻痺という特徴的な症状です。これらが見られた場合、血液検査血液化学検査尿検査レントゲン検査(脊髄造影検査が行われることもあります)やCT、MRI検査などで他の病気を否定します。

 遺伝子検査でSOD1遺伝子を行うこともできますが、臨床症状がDMと合致する場合は、DMに罹っている可能性が高いと考えられます。

変性性脊髄症(DM)の治療

 残念ながら、現時点で有効な治療法は報告がされていませんが、症状が似ている他の神経疾患等を除外するためにも精密検査を行い、適切に管理することが重要です。

 椎間板ヘルニアや他の神経疾患では、運動をさせることでかえって症状を悪化させてしまう場合がありますが、変性性脊髄症では、「動ける状態には、運動させること(リハビリ)」が推奨されています。また、抗酸化作用を持つビタミン剤やサプリメント(ニューロアクトなど)も補助的な効果が期待されています。ニューロアクトは当院でもお取り寄せ致しますので、ご希望の方は受付にお申し出ください。

変性性脊髄症(DM)の予防

 発症の原因がはっきりわからないので、予防することが難しい病気です。

 他の疾患でも類似した症状が見られる場合があることから、歩き方の異常など疑わしい症状に気がついたら早めに動物病院を受診しましょう。また、適切な体重管理や適度な運動をすることも大切です。

変性性脊髄症(DM)の看護/その他

 初期の動ける間は運動量が多いので、看護の中心は肢端の保護です。アスファルトやセメントなど硬い地面を散歩させることは控えましょう。散歩時の肢端の保護のためにはPAWZ Natural Rubber Dog Bootsなどを用いると良いかもしれません。

 また、リハビリ(理学療法)も重要です。ある報告では、積極的にリハビリを行った犬の平均生存日数が、255日なのに対して、中程度に受けた犬で、130日、全くリハビリを受けなかった場合は55日と大きく差があります[2]。ですので、変性性脊椎症は積極的に運動をしたほうが良いとされています。但し、リハビリを行う場合は、CCRPなどきちんとした専門資格を持つ獣医師や愛玩動物看護師、PTの指導を受けて行いましょう。

 体重管理も重要です。健康時と比較するとどうしても運動量は減少するため、体重増加を招く可能性があります。肥満になるとさらに負担が増加しますでの、体重管理はとても重要です。
 その他、症状が進み、後肢での起立・歩行が困難になると、ハーネスや補助カート(犬用車椅子)を用いるのも一つです。

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参考文献・資料等
  1. Averill, D. R., Jr. 1973. Degenerative myelopathy in the aging German Shepherd dog: clinical and pathologic findings. J Am Vet Med Assoc. 162: 1045-1051.
  2. Daily Controlled Physiotherapy Increases Survival Time in Dogs with Suspected Degenerative Myelopathy


<1>犬の炎症性、腫瘍性、血管性硬膜内脊髄疾患の鑑別における磁気共鳴画像の評価
<2>過去に犬の変性性脊髄症と関連したSOD1対立遺伝子の品種分布
<3>ウェルシュ・コーギー・ペンブロークにおける家族性変性脊髄症の臨床的特徴

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この記事を書いた人

福山達也