カンピロバクター症

カンピロバクター症とは?

 カンピロバクターは螺旋状またはS字状に湾曲した細菌で、回転運動を行いながらすばやく動きます。人では食中毒の原因となる代表的な菌で、細菌性腸炎を起こします。カンピロバクター菌に汚染されてしまった食べ物を食べたり、飲んだりして感染し、キャンピロバクター症とも言われます。

 カンピロバクター菌は自然界のあらゆるところに生息しており、人にも感染し(人と動物の共通感染症)、多頭飼育の場合は特に他の動物へも感染が起こりやすくなります。犬や猫の腸管に常在していますが、保菌率はそれほど高くない(1%前後)とされています。また、免疫力の低い子犬や子猫、ストレスの多い環境下や免疫力が低下しているときに発症することがあります。

カンピロバクター症の原因

カンピロバクター菌
カンピロバクター菌

カンピロバクター菌(Campylobacter.jejuniまたはC.coliC.upsaliensis)の感染が原因です。この菌は、酸素濃度3~15%を好むため、酸素濃度約21%の空気中では死滅し易く、運動性が低下します。

 感染は、カンピロバクター菌に汚染された食品や水、牛や豚や鶏の生肉、感染したどうぶつの排泄物等と接触することで起こります。特にニワトリでは感染率が高いと報告があり、この菌によって汚染された鶏肉を、よく加熱しないで食べることによって引き起こされる人の食中毒菌として知られています。通常、感染はしても症状をあらわさない(不顕性感染:ふけんせいかんせん)ことが多いのですが、子犬や子猫、ストレスの多い環境下や免疫力が低下しているときに発症することがあります。また、多頭飼育ではストレスの増加、頻繁な食事の変更、犬猫同士で病原菌の移し合いなどにより分離率はさらに高くなります。ある文献によると、多頭飼育の犬では87%、猫では75%がもっていると報告されています。

 ジアルジア、コクシジウム、サルモネラなどと混合感染すると症状はより重篤になる可能性があります。

カンピロバクター症の症状

 成犬、成猫はほとんどが感染しても無症状(不顕性感染:ふけんせいかんせん)です。免疫力が低下しているときや、抵抗力の低い子犬、子猫では症状が出ることがあります。子犬、子猫の場合は菌が腸管に感染することから、発熱食欲不振嘔吐や腹痛、下痢など腸炎の症状を主に現します。下痢は水様性で粘膜や血液が混ざる場合があり、頻繁に便意を示します。

 また下痢嘔吐で体液が失われることによって脱水症状を引き起こすこともあるため、注意が必要です。ただ、症状には個体差があり、無症状の場合もあれば長期化する場合もあります。
 Campylobacter upsaliensisは、犬猫でも多く見られるる菌種ですが、症状を示さないと言われています。ただし、人の腸管感染症の原因となることもあり、犬猫が人の感染源として重要なのではないかとも言われていますので注意が必要です。

カンピロバクター症の診断/検査

 糞便検査で確認します。カンピロバクターかどうかは特徴的な菌の動きで推測できます。糞便検査は新鮮な糞便を用いることが重要です。また、グラム染色などを行うこともあります。
 ただし、糞便検査では菌種までは特定できませんので、必要であれば検査所や保健所で特殊な検査を行います。

カンピロバクター症の治療

 自然に治癒することもありますが、状況にあわせて抗菌剤の投与のみで回復するケースも多く見られます。ただし、下痢嘔吐を伴い脱水症状がみられる時は輸液などで水分補給を行ったり、整腸剤等、栄養補給や保温など対症療法が中心となります。

 基礎疾患の影響や、混合感染などを引き起こしている場合は、それに合わせて治療を行います。

カンピロバクター症の予防

 感染動物との接触を防ぐために室内飼育にしたり、きちんとしたペットフードを与え、生肉(特に牛の生レバーや鶏肉)は与えないようにしましょう。もちろん、清潔な飼育環境(散歩中に拾い食いやゴミ漁りに注意し、便で汚れたり、食器類を使った後は、熱湯や消毒薬を使用するなど)を整えることが予防策です。また、定期的に動物病院で糞便検査(検便)を行い、早期発見・早期治療を心がけましょう。

 人への感染源になることがあるため、特に乳幼児や老人、病気で加療中の人がいる家庭で子犬・子猫を飼い始める場合には、動物病院での早急な糞便検査が必要です。常日頃から動物と接触した後は、手洗いを十分に行いましょう。
 カンピロバクター菌は熱や湿気に弱く、比較的病原性も低い細菌ですが、低温で長期間生存することが可能です。

カンピロバクター症の看護/その他

 カンピロバクター症は動物から人への感染も起こり得るため注意してください。
 人が感染した場合、平均2~5日の潜伏期間を経て、下痢、腹痛、発熱等が見られます。小児の場合は血便をすることもあります。  ごくまれにですが、カンピロバクター症に感染したことがきっかけとなって運動神経が障害され、手足が麻痺するギラン・バレー症候群を発症する人がいることが明らかとなっています(米国の統計ではギラン・バレー症候群患者の10~30%がカンピロバクター既感染者と報告されています)ので、人の場合、多くは鶏肉の生食からですが注意は必要です。
 感染の可能性のある動物の糞便は速やかに片付け、手洗い、消毒はしっかり行い、使い捨ての手袋を使うようにしましょう。

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参考文献・資料等
  1. 猫の診療指針 Part3; 53-54:カンピロバクター症


<1>イギリスの動物病院に来院した犬を用いた横断研究での Campylobacter spp.の有病率および菌の排出に関する危険指標
<2>そりレース犬における下痢の罹患率および腸管病原菌
<3>ロニダゾールを投与した4頭の猫における神経毒性
<4>下痢をしている犬に対する一般的な診断的糞便検査の評価

[WR2106,VQ2106:カンピロバクター]

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この記事を書いた人

福山達也