甲状腺機能低下症

甲状腺機能低下症とは?

甲状腺機能低下症は、特に高齢の犬で多く見られる病気で、猫での発生は稀だとされています。のど元の気管の左右に張り付くように存在する豆粒ほどの小さな臓器(内分泌腺)である甲状腺から、体の代謝を活発にする役割をもつ甲状腺ホルモンが分泌されますが、そのホルモンが減少することで起こります。甲状腺の機能が低下して甲状腺ホルモンが十分に分泌されなくなくなると、代謝が悪くなり、全身にさまざまな影響を及ぼします。
病気になると、元気がなくなる、体重が増える(肥満傾向)、毛が抜ける、皮膚が黒ずむなどの様々な症状が起こります。急に老け込んだ・・・歳のせい?と思われる時には、歳ではなく「甲状腺機能低下症」が原因のことも多いものです。
ちなみに猫で甲状腺機能低下症が起こることは稀で、逆に甲状腺機能亢進症が多く起こります。

甲状腺機能低下症の原因

甲状腺機能低下症は多くの場合は免疫介在性疾患(免疫機能の異常により自身の免疫システムが自らの甲状腺を破壊してしまう病気)で、本来は外部からの有害な物質に対して体を守る免疫システムに不具合が生じ、甲状腺を有害なものとみなして攻撃する自己抗体がつくられることで起こります。他には原因がわからない特発性甲状腺萎縮や、一部には遺伝的要因による甲状腺機能不全が考えられていますが、詳細は明らかではありません。
また、副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)、糖尿病など他の病気が甲状腺ホルモンのはたらきを阻害し、甲状腺機能低下症同様の症状を引き起こすことがあります。

甲状腺機能低下症の症状

犬の甲状腺機能低下症の罹患率の年齢推移
出展:家庭どうぶつ白書2012

一般的に、中年齢以降の犬に見られ、様々な症状が見られますが、「なんとなく元気がない」、「寝てばかりいる」、「散歩を嫌がる」、「動きが鈍くなる」、「周囲の環境への関心低下」、「寒がりになる」など一見すると老化現象に似ているため、年齢のせいかな?と間違われやすく、飼主さんが「年のせい」と思い込み、病気の発見が遅れるケースが多いといわれています。
また、「毛が薄くなる」、「左右対称に毛が抜ける(対称性脱毛)」、「毛並みや毛づやが悪い」、「シッポの毛が抜ける」、「皮膚が乾燥してフケが多くなる」、「皮膚が黒ずむ(色素沈着)」、「皮膚が厚くなる(肥厚)」、「外耳炎や皮膚病などが治り難い」、「皮膚感染症を繰り返す」など様々な皮膚病の症状も見られます。
この他、「食欲は変わらないのに体重が増える(肥満傾向)」、「心拍数が遅くなる」、「発情が止まる」、重篤になると、「昏睡」に陥ったり、「意識障害」を起こしたりする場合もあります。
いくつかの研究で、甲状線機能低下症は、犬の攻撃行動と関連があると指摘されています[1][4]。しかし、通常の甲状腺の検査では判断できないようです[2][3]
どんな犬種にも起こる病気ですが、特にゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリバー、シベリアン・ハスキー、アイリッシュ・セッター、ポインター、シェルティ(シェットランド・シープドッグ)、ビーグル、柴犬、ドーベルマン、ミニチュア・シュナウザー、プードル、ボクサーなどの中・大型犬に多く見られ、以前は小型犬ではあまり見られないとされていましたが、最近ではミニチュア・ダックスフントやポメラニアンなどにも比較的多く見られるという報告もあります。

甲状腺機能低下症の診断/検査

甲状腺機能低下症の症状は様々で、他の病気との判別も難しいため、血液検査やホルモン検査が不可欠です。ただ、甲状腺ホルモン量が限界まで低下しないと具体的な症状が現れないため、気づいたときにはかなり進行していることもあります。
具体的には、外部検査機関に依頼して総血清サイロキシン(T4)や遊離サイロキシン(fT4)、甲状腺刺激ホルモン(TSH)の血液中のホルモン濃度を測定します。最近では病院内でT4やTSHが測定できるところも増えて、発見率も上がっています。(壱岐動物病院でも院内で甲状腺機能検査が可能です)
また、甲状腺機能低下症にかかっているとコレステロール値の上昇や軽い貧血などが見られることもあり、他の病気によって甲状腺ホルモンが低下することもあるので、症状と他の血液検査の結果も合わせて総合的に判断します。
甲状腺の超音波検査を行うこともあります。

※ご家庭でできるセルフチェック(高齢になったら定期的に以下のチェックシートをチェックして早期発見に役立てて下さい。以下のPDFはチェックするだけで、自動で採点してくれます。
注:自動採点はダウンロードしないと機能しないことがあります。その場合は以下の書類を右クリックでダウンロードしてください。
●甲状腺機能低下症自己診断チェックリスト

甲状腺機能低下症の治療

甲状腺ホルモンが低下しているので、甲状腺ホルモン製剤を投与します。甲状腺ホルモン製剤の投与にあたっては、投薬前後で甲状腺ホルモンの血液検査を行ないます。また、投与量が少なすぎても効果が得られず、投与量が多い場合には甲状腺機能亢進症を引き起こす可能性があるため、定期的に血液検査をするなどの必要があります。
一度壊れてしまった甲状腺の機能を元に戻すことはできないので完治はしませんが、きちんと薬で管理すれば元気に長生きできる病気で、予後良好です。
治療を行わなければ、徐々に症状が悪化して体のあちこちに負担がかかり、確実に寿命が縮まります。
他の病気が原因で起こるものを除いては、生涯にわたって治療を続けなくてはいけません。

甲状腺機能低下症の予防

甲状腺機能低下症の予防法はありません。早期発見・早期治療を心がけることが大切です。特に中高齢で上記のように気になる症状が見られる場合は、動物病院の診察を受けるようにしましょう。
また、自覚症状を伝えられない動物にとって定期健診は重要です。10歳までは最低年に1回、老化によってさまざまな病気にかかりやすくなる10歳以上は年2回は血液検査やホルモン検査を行い、甲状腺ホルモンの状態を確認することが重要です。

甲状腺機能低下症の看護/その他

動物病院で処方されたお薬はきちんと飲ませましょう。またこの病気は投与する薬の投与量や回数などが症状や甲状腺ホルモン濃度により異なるため、定期検診も非常に重要です。決められたスケジュールできちんと受けましょう。
この病気はきちんとしたご家庭での対応さえあれば十分に愛犬の寿命を全うできます。

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参考文献
  1. 攻撃性と甲状腺機能低下症
  2. 身近な人物に対する攻撃性のある犬と攻撃的ではない犬とでの甲状腺分析値の比較
  3. 行動学的な問題が存在する犬の、血清総サイロキシン濃度および甲状腺刺激ホルモン濃度
  4. 甲状腺機能低下症に関連する犬の行動について