膀胱炎(猫編)

膀胱炎とは?

猫下部尿路疾患

膀胱炎とはオシッコを貯める働きをする臓器である膀胱に様々な理由(ストレス、細菌、結晶・結石など)から炎症が起こる病気です。特に猫では最も罹りやすい病気のうちの一つであることが知られています。
元々砂漠の生き物であった猫は、水を飲む量が少なくても生きていけるように、オシッコを濃縮して残った水分を体内で再利用し、体内にある水分を効率よく使えるようにできています。ですから、人や犬に比べてオシッコが臭いのは濃縮されていることも一つの理由です。猫に泌尿器系の病気(腎臓病や結石など)が多いのは、このようなことも関係しています。
また、一般に膀胱炎は人では女性に多いのですが、猫ではオスに多い病気です。時期は水をあまり飲まなくなる冬場に多かったり、肥満の猫、純血種の猫(特にペルシャ)に多かったりしますので要注意です[6]

膀胱炎の原因

猫に下部尿路症状を引き起こす可能性のある原因

膀胱炎にはいくつかの原因があります。細菌性の場合、膀胱内に侵入したブドウ球菌や大腸菌等の細菌が原因となって膀胱に炎症がおきます。また、膀胱内に生じた結晶や結石によって膀胱が傷つけられ、そこに細菌が感染することで引き起こされることもあります。このような場合、通常は感染が起こらないように働く身体のバリア機能がなんらかの原因で衰えてしまっていることが関与していると考えられます。細菌性膀胱炎は比較的高齢の猫に多いと言われます[3]
結晶や結石は、リンやマグネシウム、カルシウムといったミネラルがバランスよく適切に摂取できていない場合や、食餌の影響で尿pHが酸性やアルカリ性に傾きすぎている場合にできます。
また、猫では環境が変わった、トイレの掃除ができていない、新しい同居人や動物が増えたなどちょっとしたストレスでも膀胱炎を発症することもあります。人や犬では「細菌性膀胱炎」が多いのに対し、猫では原因の分からない「特発性(原因が特定できない、あるいは原因不明)膀胱炎」が多く見られます。「特発性膀胱炎」はストレスが発症要因の一つだと言われており、比較的若い猫に多く、治っても再発しやすいという特徴があります。

膀胱炎の症状

 血尿が見られたり、頻尿(少量しか尿がでないが、トイレに頻繁に行く症状)などがみられます。その他、不適切な場所での排尿、排尿時の痛み、頻繁に水を飲む、尿臭が臭い、症状が悪化すると食欲不振、元気消失などの症状が見られることもあります。
特発性膀胱炎では、ストレスを強く感じるような状況下での発症や症状の悪化が見られることがありますので注意して観察してください。
尿道が細いオス猫では、膀胱炎の影響で尿中に大量に出てきた炎症細胞や膀胱粘膜の細胞が固まりとなり、細くなっているペニスの先の尿道部分を塞いでしまい尿が出ない尿閉(にょうへい)になってしまうことがあります。また、膀胱に激しい炎症が起こると、膀胱の筋肉が緊張して尿が出せなくなり、尿閉になってしまうこともあります。尿を出せない状態が続くと、膀胱内の尿が腎臓に逆流し、腎不全や尿毒症を引き起こし、嘔吐や体温の低下といった症状が見られ、生命にかかわります。

膀胱炎の診断/検査

尿検査や超音波検査、必要に応じてレントゲン検査などを行い診断します。また、全身状態や腎機能を確認するために血液検査・血液化学検査などが必要になります。

膀胱炎の治療

細菌性膀胱炎の場合は、抗生剤の投薬で細菌感染を抑えていきます。なかなか改善が見られないときには尿中の細菌培養検査等を行い、投薬する抗生剤の種類を再検討することもあります。
また、膀胱内の結晶や結石が原因となって引き起こされてる場合には、膀胱炎の治療と併行して、その原因となる結晶や結石の治療や食事療法を行うことがあります。
特発性膀胱炎はいろいろな検査をしても特定の原因が見当たらない場合です。通常9割の猫は、無治療でも5〜10日週間以内に自然治癒すると言われます。但し、治療しなければその間猫は「痛い」思いをしますので、治療は必要です。中には数週間から数ヶ月症状が続く猫もいます。ですから、できるだけ原因になりそうなストレスを排除(トイレ環境、多頭飼育、引っ越し、生活パターンの変化、食事の変更、家族の変化など)しながら、痛みが強い時に鎮痛剤を使用したり、炎症による筋肉の強い緊張により排尿が上手くいかない時には排尿を助ける薬物を使用するなどの対症療法を行います。
重度な再発を繰り返す場合は三環系抗抗うつ剤が長期管理に用いられます。

膀胱炎の予防

原因にかかわらず膀胱炎の予防としては、「できるだけストレスを与えないこと」、「トイレを我慢させないように排尿しやすい環境を作ること(トイレを清潔に保つなど)」「水分をたくさん摂らせること」が重要です。また、膀胱炎は「早期発見・早期治療」が重要ですので、日頃から水の飲む量やトイレの回数、尿色や量などをきちんと確認しておき、変わった様子が見られるときには早めに動物病院を受診するようにしましょう。定期的な尿検査は早期発見に役立つかもしれません。

膀胱炎の看護/その他

1日でもオシッコが出なければすぐに動物病院を受診すべきです
膀胱炎を再発させないため、さらに予防するために何より大切なのが、きちんとしたキャット・フードを日頃から与えること、また、猫のストレスを軽減させることです。ストレス軽減に猫のフェロモンも有効かもしれない[5]といわれています(研究でのエビデンスはまだ不十分[11])ので、詳しくは当院にご相談下さい。
膀胱炎の予防のため猫に水を多く飲ませることも工夫が必要です。猫は新鮮な水を好みますので、水はこまめに新しいものに取り替えてあげましょう。猫がいつでも水を飲めるよう、部屋のあちこちに水を置く、流れる水の給水器(但し、猫の飲水量は増加しなかったという研究もあり[2])や自動給水器を設置するなどを試してみて下さい。特に冬場は寒さ対策も重要です。寒いところにトイレがあると猫はあまり行きたがらず、おしっこを我慢してしまいます。冬場はトイレをなるべく温かい場所に置くようにしましょう。
普通の水をなかなか飲んでくれない場合には、缶詰やドライフードを少量加えた水、飲み水に混ぜて嗜好性を上げるための液体サプリメントをためしたり、ドライフードをウェット(缶詰・パウチ)に変えたり、ドライフードをぬるま湯でふやかしたりするといいでしょう。

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参考文献
  1. Association between passive smoking and atopic dermatitis in dogs.
  2. 健康な猫の水分摂取および尿濃度に対する給水器の影響
  3. 猫下部尿路疾患に罹患した猫の細菌尿: ノルウェーにおける134症例の臨床研究
  4. 特発性膀胱炎を呈する猫の管理における多様な環境的変化の臨床評価(MEMO)
  5. 猫の特発性膀胱炎の治療に合成猫フェイシャルフェロモンを用いた試験的研究
  6. 猫の特発性膀胱炎に関連している可能性がある環境因子および行動学的因子に関する研究
  7. 猫の難治性特発性下部尿路疾患
  8. ESFM(ヨーロッパ猫医学会)会議プロシーディング、ストックホルム、2002年9月: 猫の下部尿路疾患
  9. 猫の再発性特発性膀胱炎に対する可能性ある治療法
  10. 猫の閉塞性特発性下部尿路疾患の治療におけるリドカインと重炭酸ナトリウムの膀胱内への適用
  11. 犬猫における望ましくない行動の治療に対するフェロモンの使用に関するシステマティックレビュー
  12. イエネコの特発性膀胱炎—下部尿路を越えて
  13. 特発性膀胱炎の猫における猫カリシウイルスのウイルス尿症、口腔内保菌状態、および血清中和抗体に関するネスティド症例対照研究
  14. “猫の手 借りよう!” 猫医療臨床セミナー シリーズセミナー 第1回 下部尿路疾患:代謝とストレス
  15. 瀬戸口 明日香先生の「明日から役立つ」シリーズ 第8回 猫の尿石症 vol.04
  16. FELINE LOWER URINARY TRACT HEALTH – METABOLISM AND STRESS
  17. FROM FUS TO PANDORA SYNDROME