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膀胱炎とは?

膀胱炎の原因

膀胱炎にはいくつかの原因があります。細菌性の場合、膀胱内に侵入したブドウ球菌や大腸菌等の細菌が原因となって膀胱に炎症がおきます。また、膀胱内に生じた結晶や結石によって膀胱が傷つけられ、そこに細菌が感染することで引き起こされることもあります。このような場合、通常は感染が起こらないように働く身体のバリア機能がなんらかの原因で衰えてしまっていることが関与していると考えられます。細菌性膀胱炎は比較的高齢の猫に多いと言われます[4]。
結晶や結石は、リンやマグネシウム、カルシウムといったミネラルがバランスよく適切に摂取できていない場合や、食餌の影響で尿pHが酸性やアルカリ性に傾きすぎている場合にできます。
膀胱炎の症状
血尿が見られたり、頻尿(少量しか尿がでないが、トイレに頻繁に行く症状)などがみられます。その他、不適切な場所での排尿、排尿時の痛み、頻繁に水を飲む、尿臭が臭い、症状が悪化すると食欲不振、元気消失などの症状が見られることもあります。特発性膀胱炎では、ストレスを強く感じるような状況下での発症や症状の悪化が見られることがありますので注意して観察してください。
尿道が細いオス猫では、膀胱炎の影響で尿中に大量に出てきた炎症細胞や膀胱粘膜の細胞が固まりとなり、細くなっているペニスの先の尿道部分を塞いでしまい尿が出ない尿道閉塞(にょうどうへいそく)/尿閉(にょうへい)になってしまうことがあります。また、膀胱に激しい炎症が起こると、膀胱の筋肉が緊張して尿が出せなくなり、尿閉になってしまうこともあります。尿を出せない状態が続くと、膀胱内の尿が腎臓に逆流し、腎不全や尿毒症を引き起こし、嘔吐や体温の低下といった症状が見られ、生命にかかわります。
膀胱炎の診断/検査
膀胱炎の治療
細菌性膀胱炎の場合は、抗生剤の投薬で細菌感染を抑えていきます。なかなか改善が見られないときには尿中の細菌培養検査等を行い、投薬する抗生剤の種類を再検討することもあります。また、膀胱内の結晶や結石が原因となって引き起こされてる場合には、膀胱炎の治療と併行して、その原因となる結晶や結石の治療や食事療法を行うことがあります。
▼尿路感染症原因菌と抗菌薬の治療ガイダンス
細菌の種類 | グラム染色 | 第1選択薬 | 第2選択薬 |
---|---|---|---|
大腸菌 | グラム陰性桿菌 | CEX/AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
ブドウ球菌 | グラム陽性球菌 | CEX/AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
腸球菌 | グラム陽性球菌 | AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
クレブシェラ | グラム陰性桿菌 | CEX/AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
プロテウス | グラム陰性桿菌 | CEX/AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
緑膿菌 | グラム陰性桿菌 | フルオロキノロン系他 | アミノグリコシド系他 |
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▲上記の猫下部尿路疾患用療法食は当院でも処方可能です。当院での診察・診断・処方後オンラインでのご購入となります。詳しくは当院にお尋ね下さい。
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膀胱炎の予防
原因にかかわらず膀胱炎の予防としては、「できるだけストレスを与えないこと」、「トイレを我慢させないように排尿しやすい環境を作ること(トイレを清潔に保つなど)」「水分をたくさん摂らせること」が重要です。また、膀胱炎は「早期発見・早期治療」が重要ですので、日頃から水の飲む量やトイレの回数、尿色や量などをきちんと確認しておき、変わった様子が見られるときには早めに動物病院を受診するようにしましょう。定期的な尿検査は早期発見に役立つかもしれません。また、室内飼育、肥満、ストレス、頻繁な食餌内容の変更がリスクとなると報告されています。
膀胱炎の看護/その他
1日でもオシッコが出なければすぐに動物病院を受診すべきです。膀胱炎を再発させないため、さらに予防するために何より大切なのが、きちんとしたキャット・フードを日頃から与えること、また、猫のストレスを軽減させることです。ストレス軽減に猫のフェロモンも有効かもしれない<4>といわれています(研究でのエビデンスはまだ不十分[11])ので、詳しくは当院にご相談下さい。当院では猫の診察室で猫ちゃんがリラックでるように耐えずこのフェロモンを拡散しています。
オメガ3脂肪酸が発症率を軽減したという報告がありますが、その詳細は不明のようです。あまり再発するようなら試してみるのもいいかもしれません。
アンチノールは、PCSO-524を含むニュージーランドのきれいな海で育ったモエギイガイから新鮮な状態で熱をかけずにオイル抽出した脂肪酸(DHAやEPAなどのオメガ-3脂肪酸を含む91種に及ぶ脂肪酸が含まれています)の製品で、熱をかけていないので、脂肪酸の働きを十分発揮できるとされています。実は我が家の愛犬も飲んでおります。
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膀胱炎の予防のため猫に水を多く飲ませることも工夫が必要です。猫は新鮮な水を好みますので、水はこまめに新しいものに取り替えてあげましょう。猫がいつでも水を飲めるよう、部屋のあちこちに水を置く、流れる水の給水器(但し、猫の飲水量は増加しなかったという研究もあり<1>)や自動給水器を設置するなどを試してみて下さい。特に冬場は寒さ対策も重要です。寒いところにトイレがあると猫はあまり行きたがらず、おしっこを我慢してしまいます。冬場はトイレをなるべく温かい場所に置くようにしましょう。
普通の水をなかなか飲んでくれない場合には、缶詰やドライフードを少量加えた水、飲み水に混ぜて嗜好性を上げるための液体サプリメントをためしたり、ドライフードをウェット(缶詰・パウチ)に変えたり、ドライフードをぬるま湯でふやかしたりするといいでしょう。特に猫の特発性膀胱炎ではウエットフードの摂取が必要です[2]。
飼育環境がストレスになっていることもあります。高いところに登れるようにするキャットタワーを設置したり、ベランダや庭に出られるようにする、静かな隠れ家になるような場所を用意する、食事場所やトイレを静かなばしょにするなどを試してみてください。
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参考文献
- Association between passive smoking and atopic dermatitis in dogs.
- Evidence-based management of feline lower urinary tract disease.
- FELINE LOWER URINARY TRACT HEALTH – METABOLISM AND STRESS
- FROM FUS TO PANDORA SYNDROME
- EARLY SCREENING FOR FELINE HEMATURIA
- HOW I APPROACH… FELINE IDIOPATHIC CYSTITIS
- FRONT LINE ULTRASOUND IMAGING OF THE FELINE URINARY TRACT
- 伴侶動物治療指針Vol5; 350-367:猫下部尿路疾患における管理の進歩
<1>健康な猫の水分摂取および尿濃度に対する給水器の影響
<2>猫下部尿路疾患に罹患した猫の細菌尿: ノルウェーにおける134症例の臨床研究
<3>特発性膀胱炎を呈する猫の管理における多様な環境的変化の臨床評価(MEMO)
<4>猫の特発性膀胱炎の治療に合成猫フェイシャルフェロモンを用いた試験的研究
<5>猫の特発性膀胱炎に関連している可能性がある環境因子および行動学的因子に関する研究
<6>猫の難治性特発性下部尿路疾患
<7>ESFM(ヨーロッパ猫医学会)会議プロシーディング、ストックホルム、2002年9月: 猫の下部尿路疾患
<8>猫の再発性特発性膀胱炎に対する可能性ある治療法
<9>猫の閉塞性特発性下部尿路疾患の治療におけるリドカインと重炭酸ナトリウムの膀胱内への適用
<10>犬猫における望ましくない行動の治療に対するフェロモンの使用に関するシステマティックレビュー
<11>イエネコの特発性膀胱炎—下部尿路を越えて
<12>特発性膀胱炎の猫における猫カリシウイルスのウイルス尿症、口腔内保菌状態、および血清中和抗体に関するネスティド症例対照研究
<13>特発性下部尿路疾患の猫から分離された新規の猫カリシウイルス2種が持つ遺伝的特徴
[2012WR,2012VQ]