上皮小体機能亢進症:Hyperparathyroidism

上皮小体機能亢進症の治療

 腫瘍性の病気なので、可能であれば外科手術による摘出です。他には超音波で見ながら薬剤(エタノール)を注入したり、熱で焼いたりする治療法もあります[2][3]
 手術などがうまくいけば、3日ほどまでにカルシウム値は正常になると言われていますが、これらの手術や処置の合併症としては、逆にカルシウム値が下がり過ぎることがあります(報告では処置や手術をした10%程度)。この場合緊急の対処が必要ですので、手術後1日1〜2回1週間くらいは血液検査でカルシウムを測る方がいいでしょう。
 手術前にこれらが予測できればいいのですが、手術前にカルシウムが高いと手術後の低カルシウムになりやすいとという報告もあれば、そうでもないという報告してもあり、今のところ難しいみたいです[4][5]
 また、術後の低カルシウムを予防するために、あらかじめビタミンD製剤を飲ませるという試みをされている場合もありますが、飲ませても飲ませなくてもカルシウム値に差はないという報告もあり。効果は定かではありませんが、一般に手術前にカルシウム値が高い場合は、念のため処方される場合が多いようです[6]
 症状を軽減するために内科療法(ビスフォスフォネート)によるカルシウムのコントロールを選択することもあります。

上皮小体機能亢進症の予防

 基本的にありません。

上皮小体機能亢進症の看護/その他

 上皮小体亢進症が疑われた場合、動物病院によっては「高カルシウム血症を放置すると、腎臓が悪くなるので治療しましょう」と言われることがあるのですが(確かに私の学生時代はそんなこと言われてました)、報告ではそういうことはありません[1]。むしろ長期間放置された場合でも腎臓機能は低下していないことが分かっています。ですから「腎臓が悪くなるから治療しましょう」は間違いです。もしも腎臓が悪くなっているなら、腎臓病が疑われますので、そちらを調べた方がいいでしょう。
 ただし、上皮小体亢進症を治療しないで放置した場合、シュウ酸カルシウム結石がきたり(30〜50%)、細菌性膀胱炎(30%)のリスクがあります。

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参考文献・資料等
  1. Pretreatment clinical and laboratory findings in dogs with primary hyperparathyroidism: 210 cases (1987–2004)
  2. Retrospective Evaluation of Three Treatment Methods for Primary Hyperparathyroidism in Dogs
  3. Outcomes for dogs with primary hyperparathyroidism following treatment with percutaneous ultrasound-guided ethanol ablation of presumed functional parathyroid nodules: 27 cases (2008–2011)
  4. Association of Hypercalcemia Before Treatment With Hypocalcemia After Treatment in Dogs With Primary Hyperparathyroidism
  5. Preoperative factors associated with postoperative hypocalcemia in dogs with primary hyperparathyroidism that underwent parathyroidectomy: 62 cases (2004–2009)
  6. Effect of prophylactic calcitriol administration on serum ionized calcium concentrations after parathyroidectomy: 78 cases (2005–2015)
  7. Guidelines for the management of asymptomatic primary hyperparathyroidism: summary statement from the Fourth International Workshop
  8. What Animal Models Have Taught Us About the Safety and Efficacy of Bisphosphonates in Chronic Kidney Disease


<1>猫の副甲状腺(上皮小体)機能亢進症: 原発性および続発性疾患としての病態生理学、診断および治療 
<2>犬猫の原発性上皮小体機能亢進症
<3>犬の原発性上皮小体機能低下症: 17症例の回顧的研究
<4>原発性上皮小体機能亢進症の犬に対する3種類の治療法の回顧的評価 
<5>食物中のカルシウムとビタミンD欠乏に関連した珍しい成犬の骨減少症症例  
<6>犬29頭における原発性上皮小体機能亢進症: 診断、治療、予後、および関連した腎不全 
<7>猫の嚢胞性甲状腺・上皮小体病変 
<8>猫の触知可能な甲状腺および上皮小体の結節
<9>無症候性の猫における触知可能な甲状腺と上皮小体の結節 
<10>犬の骨の構造的および力学的特性に対する慢性腎臓病の影響 
<11>原発性上皮小体機能亢進症のために副甲状腺摘出術を実施した犬47頭における、副甲状腺病変の特定に対する超音波検査と手術の合致性、および術後低カルシウム血症の予測指標に関する両方向コホート研究
<12>原発性上皮小体機能亢進症罹患犬における治療後の低カルシウム血症と治療前の高カルシウム血症との関連性 
<13>上皮小体切除術を受けた原発性上皮小体機能亢進症に罹患した犬における術後の低カルシウム血症に関連した術前因子:62例(2004-2009) 
<14>犬の原発性上皮小体機能亢進症における超音波ガイド下高周波熱アブレーションの転帰に影響する因子の分析 
<15>高カルシウム血症を伴う犬の超音波検査における偶発的甲状腺結節の有病率 
<16>様々な程度の腎機能の高齢猫における上皮小体ホルモン濃度 
<17>原発性上皮小体機能亢進症に罹患した犬における上皮小体切除術後の低カルシウム血症の予測因子としてのイオン化カルシウムおよび上皮小体ホルモンの術前血清濃度の評価:17例(2001-2009年) 
<18>犬における高イオン化カルシウム血症:109症例の後向き研究(1998年~2003年) 
<19>あなたの診断は何ですか? メラミンシアヌレートに関連した腎毒症 
<20>犬における原発性上皮小体機能亢進症および単クローン性高ガンマグロブリン血症 
<21>猫におけるビタミンD依存性遺伝性くる病Ⅰ型   
<22>自然発生性良性原発性上皮小体機能亢進症の犬における、簡易上皮小体ホルモンアッセイの検証と上皮小体ホルモンの術中測定 
<23>キースホンドの原発性上皮小体機能亢進症における遺伝的形質、遺伝様式、および候補遺伝子
<24>カルシトリオールの連日および間欠的投与が健康な猫および慢性腎不全の猫の血清上皮小体ホルモンおよびイオン化カルシウムに及ぼす効果の比較 
<25>犬の原発性上皮小体機能亢進症 
<26>腎性続発性上皮小体機能亢進症
<27>あなたの診断は何ですか? 大動脈への転移性石灰化をもたらす腎臓病  
<28>原発性上皮小体機能亢進症の犬における治療前の臨床的および臨床検査所見:210症例(1987~2004年) 
<29>あなたの診断は何ですか?
<30>あなたの診断は何ですか?
<31>高カルシウム血症、高リン酸血症、および軟部組織の石灰沈着 

[WR2302,VQ22:]

この記事を書いた人

福山達也