膀胱炎の治療
細菌性膀胱炎の場合は、抗生剤の投薬で細菌感染を抑えていきます。なかなか改善が見られないときには尿中の細菌培養検査等を行い、投薬する抗生剤の種類を再検討することもあります。また、膀胱内の結晶や結石が原因となって引き起こされてる場合には、膀胱炎の治療と併行して、その原因となる結晶や結石の治療や食事療法を行うことがあります。
▼尿路感染症原因菌と抗菌薬の治療ガイダンス
細菌の種類 | グラム染色 | 第1選択薬 | 第2選択薬 |
---|---|---|---|
大腸菌 | グラム陰性桿菌 | CEX/AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
ブドウ球菌 | グラム陽性球菌 | CEX/AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
腸球菌 | グラム陽性球菌 | AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
クレブシェラ | グラム陰性桿菌 | CEX/AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
プロテウス | グラム陰性桿菌 | CEX/AMPC他 | フルオロキノロン系他 |
緑膿菌 | グラム陰性桿菌 | フルオロキノロン系他 | アミノグリコシド系他 |
▲上記の猫下部尿路疾患用療法食は当院でも処方可能です。当院での診察・診断・処方後オンラインでのご購入となります。詳しくは当院にお尋ね下さい。
▲上記の特発性膀胱炎用療法食は当院でも処方可能です。当院での診察・診断・処方後のご購入となります。詳しくは当院にお尋ね下さい。
膀胱炎の予防
原因にかかわらず膀胱炎の予防としては、「できるだけストレスを与えないこと」、「トイレを我慢させないように排尿しやすい環境を作ること(トイレを清潔に保つなど)」「水分をたくさん摂らせること」が重要です。また、膀胱炎は「早期発見・早期治療」が重要ですので、日頃から水の飲む量やトイレの回数、尿色や量などをきちんと確認しておき、変わった様子が見られるときには早めに動物病院を受診するようにしましょう。定期的な尿検査は早期発見に役立つかもしれません。また、室内飼育、肥満、ストレス、頻繁な食餌内容の変更がリスクとなると報告されています。
膀胱炎の看護/その他
1日でもオシッコが出なければすぐに動物病院を受診すべきです。膀胱炎を再発させないため、さらに予防するために何より大切なのが、きちんとしたキャット・フードを日頃から与えること、また、猫のストレスを軽減させることです。ストレス軽減に猫のフェロモンも有効かもしれない<4>といわれています(研究でのエビデンスはまだ不十分[11])ので、詳しくは当院にご相談下さい。当院では猫の診察室で猫ちゃんがリラックでるように耐えずこのフェロモンを拡散しています。
猫の膀胱炎の一つの症状として「血尿」がありますが、それを早期に発見するために、ご自宅のトイレに混ぜることにより血尿があると色が変わるという「尿中ヘモグロビンチェッカー」というものが発売されました。当院でも販売しておりますのでご相談下さい。また、オンラインの「ベッツホームデリバリー」でもご購入いただけますが、登録には病院IDが必要ですので、受付でお申し出下さい。
オメガ3脂肪酸が発症率を軽減したという報告がありますが、その詳細は不明のようです。あまり再発するようなら試してみるのもいいかもしれません。 また、α-カソゼピン製剤(ジルケーン)がストレス緩和に役立つという報告もありますので、こちらも試してみるといいかもしれませんし、それらが入った療法食もありますので、詳しくは当院にご相談下さい。
膀胱炎の予防のため猫に水を多く飲ませることも工夫が必要です。猫は新鮮な水を好みますので、水はこまめに新しいものに取り替えてあげましょう。猫がいつでも水を飲めるよう、部屋のあちこちに水を置く、流れる水の給水器(但し、猫の飲水量は増加しなかったという研究もあり<1>)や自動給水器を設置するなどを試してみて下さい。特に冬場は寒さ対策も重要です。寒いところにトイレがあると猫はあまり行きたがらず、おしっこを我慢してしまいます。冬場はトイレをなるべく温かい場所に置くようにしましょう。
普通の水をなかなか飲んでくれない場合には、缶詰やドライフードを少量加えた水、飲み水に混ぜて嗜好性を上げるための液体サプリメントをためしたり、ドライフードをウェット(缶詰・パウチ)に変えたり、ドライフードをぬるま湯でふやかしたりするといいでしょう。特に猫の特発性膀胱炎ではウエットフードの摂取が必要です[2]。
飼育環境がストレスになっていることもあります。高いところに登れるようにするキャットタワーを設置したり、ベランダや庭に出られるようにする、静かな隠れ家になるような場所を用意する、食事場所やトイレを静かなばしょにするなどを試してみてください。
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参考文献
- Association between passive smoking and atopic dermatitis in dogs.
- Evidence-based management of feline lower urinary tract disease.
- FELINE LOWER URINARY TRACT HEALTH – METABOLISM AND STRESS
- FROM FUS TO PANDORA SYNDROME
- EARLY SCREENING FOR FELINE HEMATURIA
- HOW I APPROACH… FELINE IDIOPATHIC CYSTITIS
- FRONT LINE ULTRASOUND IMAGING OF THE FELINE URINARY TRACT
- 伴侶動物治療指針Vol5; 350-367:猫下部尿路疾患における管理の進歩
- Pandora Syndrome in Cats: Diagnosis and Treatment
- International Society for Companion Animal Infectious Diseases (ISCAID) guidelines for the diagnosis and management of bacterial urinary tract infections in dogs and cats
- 犬と猫の日常診療のための抗菌薬治療ハンドブック;71-81:尿路感染症
- Characterization of α-casozepine, a tryptic peptide from bovine αs1-casein with benzodiazepine-like activity
- 2023 ACVIM Forum Abstract NU12: Low-Dose Radiation Therapy: A Novel Treatment for Feline Idiopathic/Interstitial Cystitis
- Ettinger’s Textbook of Veterinary Internal Medicine 9ed Chapter 311: Feline Idiopathic/Interstitial Cystitis
<1>健康な猫の水分摂取および尿濃度に対する給水器の影響
<2>猫下部尿路疾患に罹患した猫の細菌尿: ノルウェーにおける134症例の臨床研究
<3>特発性膀胱炎を呈する猫の管理における多様な環境的変化の臨床評価(MEMO)
<4>猫の特発性膀胱炎の治療に合成猫フェイシャルフェロモンを用いた試験的研究
<5>猫の特発性膀胱炎に関連している可能性がある環境因子および行動学的因子に関する研究
<6>猫の難治性特発性下部尿路疾患
<7>ESFM(ヨーロッパ猫医学会)会議プロシーディング、ストックホルム、2002年9月: 猫の下部尿路疾患
<8>猫の再発性特発性膀胱炎に対する可能性ある治療法
<9>猫の閉塞性特発性下部尿路疾患の治療におけるリドカインと重炭酸ナトリウムの膀胱内への適用
<10>犬猫における望ましくない行動の治療に対するフェロモンの使用に関するシステマティックレビュー
<11>イエネコの特発性膀胱炎—下部尿路を越えて
<12>特発性膀胱炎の猫における猫カリシウイルスのウイルス尿症、口腔内保菌状態、および血清中和抗体に関するネスティド症例対照研究
<13>特発性下部尿路疾患の猫から分離された新規の猫カリシウイルス2種が持つ遺伝的特徴
[2012WR,2012VQ]
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