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角膜潰瘍/糜爛とは?
角膜は透明で、表面から上皮、実質、デスメ膜、内皮という層から成る薄い組織で、傷や感染などが原因で眼球表面の角膜組織が欠損してしまう病変が角膜潰瘍(かくまくかいよう)といい、潰瘍性角膜炎(かいようせいかくまくえん)とも言われます。角膜の損傷が上皮のみの浅いものを表在性角膜潰瘍/糜爛(びらん)、角膜実質に及ぶ深いものを深部性角膜潰瘍といいます。
ウェルッシュ・コーギー、ゴールデン・レトリーバー、シー・ズー、パグ、フレンチ・ブルドッグ、ボクサー、ボストン・テリアなどで多く見られ、特に、ボクサー(ボクサー潰瘍)やとい・プードルでは上皮細胞が基底膜に接着できないことによる難治性潰瘍(自発性慢性角膜上皮欠損症:SCCEDs)が見られることがあります。
角膜潰瘍/糜爛の原因
犬の場合、多くは喧嘩、異物の混入、散歩中の草木との接触などの外傷が原因で起こります。特にパグ、シーズー、ペキニーズといった短頭種で目が飛び出した犬種は目の外傷を起こしやすかったり、乾性角結膜炎などの基礎疾患があると角膜潰瘍が起こりやすくなります。その他、犬ではまれだと言われていますが、細菌、ウイルス<11>、真菌<6>などが原因になることもあります。
また、老年性の角膜変性症は角膜潰瘍に進行しやすいことが知られていますので、注意が必要です。
猫ではヘルペスウイルス感染が原因<4>により起こることが多いと言われています。
角膜潰瘍/糜爛の症状
眼脂(目やに)、結膜の充血、羞明(しゅうめい=目をしょぼしょぼさせる)、角膜の浮腫や混濁、まぶたの痙攣、流涙などの症状がみられます。また、角膜は知覚神経が多く集まっているため、潰瘍があると強い痛みを伴いうため、目をこする、目を床や壁に擦り付けるなどの行動が見られることもあります。
潰瘍が深部(デスメ膜)にまで届き、デスメ膜が瘤のように突出した状態(デスメ膜瘤)になることもあります。最悪の場合には角膜穿孔といい、欠損が角膜の全層にまで及び角膜に穴があいて眼房水が流出してしまうこともあります。そうなると失明してしまいますので、注意が必要です。
角膜潰瘍/糜爛の診断/検査
視診や検眼鏡検査、スリット検査を行い、フルオレセインという特殊な染色液による染色検査(色素が衣服などにつくことがありますので、検査後しばらくはご注意ください)を行います。また、必要に応じて他の眼科検査やグラム染色検査、細菌培養検査などが必要になることもあります。
1週間程度の治療に反応しない場合、全身的な合併症(糖尿病[犬編・猫編]、甲状腺機能低下症、副腎皮質機能亢進症、脂質代謝異常、貧血、低アルブミン血症、腫瘍など)のチェックのために、血液検査、血液化学検査などが行われることもあります。
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