うちの子のフシギ Vol.09:犬はどうして「ハアハア」するの?

暑い日に散歩から帰ってくると、
口を大きく開けて「ハアハア」。

犬と暮らしていると、よく目にする光景です。

「暑いから体を冷やしているんだよね?」

もちろん、それは大きな理由のひとつです。
でも実は、犬が「ハアハア」する理由は
暑さだけではありません。

いつもの「ハアハア」と、
病気や熱中症のサインかもしれない「ハアハア」。

今回は、犬のパンティング(panting)の仕組みと、
飼い主さんに知っておいてほしい見分け方を紹介します。

「ハアハア」は犬の大切な体温調節

人間は暑くなると、全身から汗をかきます。
汗が皮膚の表面から蒸発するときに熱を奪うことで、
体温を下げています。

一方、犬では人間のように全身から大量の汗をかいて
体温を調節することはできません。

そこで重要になるのが、
パンティング(panting)です。

犬は呼吸を速くすることで、
鼻腔や口腔、舌などの湿った表面を通る空気の量を増やします。

そこから水分が蒸発するときに熱が奪われ、
体内にたまった熱を外へ逃がすことができます。

つまり暑い日の「ハアハア」は、
犬にとって非常に重要な
“体を冷やす仕組み”なのです。

実は、ただ速く呼吸しているわけではありません

パンティングは単純に
「呼吸が速くなっている」だけではありません。

生理学的な研究では、
パンティング時には呼吸数を増やしながら、
1回に吸ったり吐いたりする空気の量を小さくすることで、
主に上部気道の換気を増やしていることが分かっています。

さらに犬は、必要な熱放散量に応じて、
鼻と口を通る空気の流れ方も変化させています。

一見すると単純な「ハアハア」ですが、
実はとてもよくできた体温調節システムなのです。

散歩のあとにハアハアするのはなぜ?

運動すると筋肉で熱がつくられ、
体温が上昇します。

そのため、散歩や運動のあとにパンティングが増えるのは
通常みられる生理的な反応です。

特に気温や湿度が高い日は、
同じ運動量でも体に熱がたまりやすくなります。

運動をやめて涼しい場所で休むと、
徐々に呼吸が落ち着いてくるのであれば、
多くの場合は正常な体温調節の範囲です。

「暑くないのにハアハア」することもあります

ここが大切なポイントです。

犬のパンティングは、
暑さや運動だけで起こるわけではありません。

例えば、興奮しているときや、
不安・恐怖・ストレスを感じているときにも
パンティングがみられることがあります。

動物病院の待合室や診察室で、
暑くないのに急に「ハアハア」し始める犬がいるのも、
こうした反応のひとつです。

パンティングは、犬の不安やストレスを評価するときの
行動サインのひとつとしても知られています。

痛みでハアハアすることも

さらに、
痛みや身体的な不快感によって
パンティングが増えることもあります。

特に、
暑くもなく運動もしていないのにパンティングが続き、
落ち着かない、何度も姿勢を変える、
食欲がない、動きたがらないなどの変化を伴う場合には
注意が必要です。

「ハアハアしている=暑い」と決めつけず、
そのときの環境や犬の様子を一緒に見る
ことが大切です。

「いつものハアハア」と違ったら?

飼い主さんにぜひ覚えておいてほしいのは、
パンティングそのものよりも
「いつもと違うかどうか」です。

例えば、

  • 涼しい場所で休んでも激しいパンティングが続く
  • 運動していないのに呼吸が明らかに速い
  • 呼吸するときに胸やお腹を大きく使っている
  • 苦しそうで横になれない、落ち着けない
  • 大量のよだれが出ている
  • ぐったりしている、ふらつく
  • 舌や歯ぐきの色がおかしい

といった変化があれば、
単なる体温調節ではない可能性があります。

夏に特に注意したい「熱中症」

夏に激しいパンティングがみられたとき、
特に注意しなければならないのが
熱中症(heatstroke)です。

熱中症では、激しいパンティングだけでなく、
多量のよだれ、嘔吐、元気消失、ふらつき、
意識状態の変化や虚脱などがみられることがあります。

これは「少し暑かった」という状態ではなく、
全身の臓器に障害を及ぼす可能性のある緊急疾患です。

暑い環境にいたあとにこうした症状がみられた場合は、
「しばらく様子を見よう」と待たず、
すぐに動物病院へ連絡してください。

特に暑さに注意したい犬は?

暑さへの耐性は、すべての犬で同じではありません。

特に、フレンチ・ブルドッグ、パグ、シー・ズーなどの
短頭種では、
気道の構造上、呼吸による熱放散が十分にできないことがあります。

また、高齢犬、肥満犬、心臓や呼吸器に病気がある犬などでも、
暑さによる負担が大きくなることがあります。

「去年は大丈夫だったから今年も大丈夫」と考えず、
その日の気温や湿度、体調に合わせて
散歩や運動量を調整してあげましょう。

大切なのは「ハアハア」だけを見ないこと

犬のパンティングは、
暑さから体を守るための正常で大切な仕組みです。

一方で、興奮、不安、ストレス、痛み、
そしてさまざまな病気でもみられることがあります。

だからこそ大切なのは、
「ハアハアしている」という一つの症状だけではなく、


いつ始まったのか。
何をしていたのか。
涼しい場所で休むと治まるのか。
ほかに変わった様子はないか。

を一緒に観察することです。

まとめ

暑い日に聞こえてくる、犬の「ハアハア」。

それは犬が自分の体を守るために行っている、
とても大切な体温調節の仕組みです。

でも、
すべての「ハアハア」が暑さのせいとは限りません。

いつもより激しい。
なかなか治まらない。
暑くないのに続いている。
ほかの症状もある。

そんなときは、
愛犬からの「いつもと違う」というサインかもしれません。

普段の呼吸の様子を知っておくことも、
愛犬の小さな変化に気づくための
大切な健康管理のひとつです。


参考文献

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    Heatstroke in Pets: Signs, Risks, and What to Do.
    Updated 2026.


※パンティングの程度には個体差があります。
本記事は一般的な情報を提供するものであり、
個々の犬の診断に代わるものではありません。
呼吸が苦しそう、意識がおかしい、ぐったりしているなどの
症状がある場合は、速やかに動物病院へご相談ください。

この記事を書いた人

福山達也