鉤虫症

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鉤虫症とは?

鉤虫症は犬鉤虫という口に鈎を持った寄生虫で 1 〜 2 cmの白色の寄生虫が犬の小腸に鈎を引っかけて寄生することによって起こる病気です。国内でも0.2~6.0%の犬が保有しているとされ、決して稀な寄生虫ではありません。
犬鉤虫は小腸で吸血するので、寄生されると貧血を起こすことがあります。

鉤虫症の原因

犬鉤虫が小腸に寄生することによっておこります。

犬鉤虫に感染した犬は便中に卵を排泄し、その卵が犬の口に入ることによって感染します。また、環境中にいる鉤虫の幼虫が犬の皮膚に侵入して感染する場合もあります。口から入った鉤虫はそのまま腸内で成熟し、皮膚から入ったものはいったん肺に行き、咳で出たものがまた口から入ります。感染から3週後には多量の卵が便に出るので特に注意が必要です。

この他、母犬の乳汁や胎盤を介して母子感染することもあります。

これら以外に、ゴキブリやネズミによる感染ルートもあります。

鉤虫症の症状

鉤虫の感染が少数の場合はあまり表立った症状を現しませんが、多数寄生するにより食欲不振下痢を起こし、出血(血便)がみられることがあります。また、鉤虫は小腸で吸血を行うため、数多くの寄生を受けた場合は貧血(鉄欠乏性貧血)を起こすこともあります。
鉤虫が気管や肺に寄生した場合、気管支炎や肺炎の症状が見られることもありますし、多数皮膚から侵入した場合は皮膚炎が見られたという報告もあります。

鉤虫症の診断/検査

糞便検査により鉤虫卵を確認します。但し、感染時期によっては糞便検査で鉤虫卵が見られないこともありますので、注意が必要です。
また、プレパテントピリオドという期間(経口感染:15〜26日、乳汁感染:10〜14日、胎盤感染:10〜14日、経皮感染気管移行型:17〜21日)があり、この期間に糞便検査をしても虫卵は見つからないので何回か糞便検査を行うか、駆虫をすることが必要です。

鉤虫症の治療

駆虫薬を投与します。貧血や腸炎(下痢)などを起こしている場合には、輸血や下痢止など、その症状にあった対処療法も併せて行います。鉤虫に汚染された環境では、母親と子犬共に数回駆虫することもあり、さらにその後も追加の駆虫を行います。

鉤虫症の予防

定期的に検便を行い、早期発見・早期治療を心がけましょう。また、定期的にきちんと駆虫をすることも予防になります。
鉤虫は種類によっては人間に感染することもありますので、感染した犬の糞便の取り扱いには十分に注意しましょう。さらに、感染した犬と触れ合った後には、手洗い、消毒等をきちんと行い、十分注意しましょう。

鉤虫症の看護/その他

鉤虫の幼虫は暖かく(15℃以上)、湿潤な環境を好みますので環境の清掃も重要です。屋外飼育であれば、土の上での飼育を避けましょう。
仔犬の飼育を始めるときには糞便検査をし、獣医師の指示のもと定期的に駆虫薬を投与しましょう。また、駆虫後に虫卵が排出されていない(成虫が駆虫された)ことを確認することも大事です。

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参考文献・資料等


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この記事を書いた人

福山達也