FLUTD:猫下部尿路疾患

FLUTD:猫下部尿路疾患の治療

 猫下部尿路疾患の治療は、尿道が尿道結石や尿道栓子で閉塞している場合には緊急処置が必要となります。必要であれば麻酔あるいは鎮静をかけた状態でカテーテルを用いて尿道の閉塞を解除し、膀胱内を洗浄します。
 尿道閉塞を起こしてから時間がたって急性腎不全に陥っているようであれば、輸液(点滴)その治療も並行して行っていきます。尿道閉塞を何度も繰り返しているケースでは、尿道を広げる手術が行われることもあります。
 膀胱内に尿結石がある場合は、結石の種類によっては外科手術による摘出手術が行われたり、食事療法や輸液療法などの内科的治療で結石を溶解させたりします。細菌感染によるものでは、抗生剤による治療が行われます。
 

▲上記の猫下部尿路疾患用療法食は当院でも処方可能です。当院での診察・診断・処方後オンラインでのご購入となります。詳しくは当院にお尋ね下さい。

特発性FLUTDの場合は、現在確実に有効と言える治療法は見つかっていませんが、炎症や痛みを緩和するための投薬が行われることがあります。特発性FLUTDは自然に治ることもありますが、治ってもすぐに再発を繰り返すため、上記の投薬のほか、ストレス対策としての環境修正などが推奨されています。

FLUTD:猫下部尿路疾患の予防

 尿石症の管理には、食事管理がとても重要です。尿石症の管理用に作られたフードを与え、おやつや食事の残りなどは与えないようにしましょう。
 水分を多くとると尿量が増え、尿が薄められ排尿の回数が増加します。缶詰のフードは無理することなく水分摂取の増加に役立ちます。また、猫の飲水量を増加させるための経口補水液ハイドラケアも2020年に発売になりました。これを日頃から用いることも予防になるでしょう。ご希望の方は当院にお問い合わせください。

 また、運動量が少ないと、水分摂取量が少なくなりがちです。適切な運動をさせましょう。トイレが汚れていると、排尿をがまんすることがあり、膀胱に尿が溜まる時間が長くなり、尿石のできるリスクが高くなります。トイレを清潔にしておきましょう。

オメガ3脂肪酸が発症率を軽減したという報告がありますが、その詳細は不明のようです。あまり再発するようなら試してみるのもいいかもしれません。

猫のカリシウイルス感染症は下部尿路疾患の原因になる可能性があるという報告があります<8>ので、きちんと予防注射を定期的に受けることは重要です。

FLUTD:猫下部尿路疾患の看護/その他

 猫下部尿路疾患の予防は、膀胱や尿道の疾患を防止するために、トイレを清潔にする、複数飼育の場合は猫の数+1のトイレを設置する、いつでも水を飲める環境(あまり水を飲まない猫には流れる給水器なども効果的です)を整えるほか、猫が3次元で遊べるように家具の配置を変えたり、キャットツリーなどを導入したり、遊ぶ時間を増やしたりといった対策が効果的です。

 尿石症では、尿結石の種類に応じた食事を与えることが推奨されます。食事中に尿石の構成成分であるマグネシウム、リン、カルシウムなどが過剰に含まれていると、尿中に結晶や結石が形成される機会が増加します。また食事によっては尿pHのバランスを崩し、リスクを高めることもあります。ドライフードよりウエットフードが適切であったり、少量、頻回に与えることが効果的だったりします。詳しくは当院にご相談ください。肥満はFLUTDの再発を高めるため、適正体重を保つように心がけてあげましょう。

猫下部尿路疾患:FLUTDはオシッコが詰まって出なくなると、処置、検査、治療に費用がそれなりにかかる病気です。出来るだけそうならないように日頃からの対策が重要です。特に冬場は猫があまり水を飲まなくなり、この病気が増える季節です。また、他院で処置できなくて回ってくる場合に、かなり尿道が損傷してしまっていて処置が困難な猫が増えています。できればそうなる前にご来院ください。

また、結石が原因の場合、処方食を食べてもらうことがあるのですが、ちょっと良くなるとやめてしまって再発を繰り返す人がいます。処方食は一般食よりは高めかもしれませんが、再発して病院で治療費を払ったりする方が最終的な負担は多くなります。よく考えて

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参考文献・資料等
  1. Feline lower urinary tract disease
  2. 伴侶動物治療指針Vol5; 350-367:猫下部尿路疾患における管理の進歩
  3. Diagnosing and Managing Feline Lower Urinary Tract Disease
  4. 犬と猫の日常診療のための抗菌薬治療ハンドブック;71-81:尿路感染症


<1>.尿道閉塞の雄猫の来院時の体温および高窒素血症の重症度と入院期間との関連性に関する回顧的評価: 猫243頭(2006-2009)
<2>猫の尿路感染症治療に対するセフォベシンの有効性および安全性
<3>猫下部尿路疾患に罹患した猫の細菌尿: ノルウェーにおける134症例の臨床研究
<4>ヨーロッパの猫の下部尿路疾患の臨床症状と病因の評価
<5>猫の難治性特発性下部尿路疾患
<6>猫の特発性下部尿路疾患に対するアミトリプチリンの短期間の臨床効果: 比較臨床試験
<7>ESFM(ヨーロッパ猫医学会)会議プロシーディング、ストックホルム、2002年9月: 猫の下部尿路疾患
<8>特発性下部尿路疾患の猫から分離された新規の猫カリシウイルス2種が持つ遺伝的特徴

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この記事を書いた人

福山達也