猫カリシウイルス感染症

※電話などでの各種病気に関するお問い合わせは、通常診療業務に支障をきたしますので、当院をご利用のペットオーナー以外はご遠慮ください。まずはご自身のかかりつけ獣医師にお問い合わせください。ご理解とご協力をお願いいたします!

猫カリシウイルス感染症とは?

 猫カリシウイルス感染症は、猫ヘルペスウイルス感染症とならび俗に「猫風邪」と呼ばれる猫ウイルス性呼吸器感染症の代表的なウイルスです。どの猫種やどの年齢の猫でも感染・発症しますが、特に抵抗力の低い猫で発症しやすい病気です。

猫カリシウイルス感染症の原因

 猫カリシウイルス感染症の原因は猫カリシウイルスの感染です。猫カリシウイルスは非常に感染力の強いウイルスで、感染は、感染している猫が排泄した分泌物中のウイルスが直接、口や鼻に付くことで起こります。また、このウイルスは厄介なことに感染症から回復して症状がない猫でも数週間から数か月ウイルスを排泄します(この個体をキャリアー猫と呼びます)。ときには生涯ウイルス排泄をし続ける猫もします。さらに厄介なことには、カリシウイルスは猫の体外に出ても生き残れる力が比較的強いウイルスで、人や食器などの物を介して間接的に病原体と接触することでも感染してしまいます。

猫カリシウイルス感染症の症状

カリシウイルス舌潰瘍
カリシウイルス舌潰瘍

 

 猫カリシウイルスの主な症状は、口の中や舌の水疱・潰瘍です。その他、発熱や涙、くしゃみ、鼻水など人の風邪のような症状を発症し、進行すると元気や食欲も消失します。重症になると肺炎を併発します。

 
  生後6〜12週齢以下の仔猫では、急性で一過性の多発性関節炎を発症し、跛行、全身のこわばりなどが見られることがあります。
 
 また、猫カリシウイルスの症状は猫ヘルペスウイルス感染症と類似しており、症状だけでは区別が難しかったり、同時にどちらにも感染(混合感染)していたりすることもあります。
 
 口内炎や歯肉炎から猫カリシウイルスが検出されることもあり、それらの原因や関連性が疑われています。
 

強毒全身性猫カリシウイルス感染症(virulent systemic feline calicivirus disease:VS-FCV)について
 猫カリシウイルス感染症ウイルスには、従来のものと1998年にアメリカで初めて報告された強毒全身性猫カリシウイルス感染症といわれるものがあります。これは、従来のウイルスに比べて、症状が非常に重篤で、呼吸困難や肺炎、重度な潰瘍などを起こし、致死率も50%以上と非常に怖いものです。また、なぜか子猫より成猫がかかった方が症状がより重篤になるといわれています。

猫カリシウイルス感染症の診断/検査

 通常はワクチン接種歴、症状、飼育環境などから仮診断します。確定診断は検査所に検体を送り行えば可能ですが、時間や費用の問題からあまり積極的には行われていません。
 その他、全身状態を把握するために、血液検査血液化学検査尿検査レントゲン検査超音波検査などを行う必要になることもあります。

▶猫カリシウイルス感染症の治療・予防・看護法などは次のページへ

この記事を書いた人

福山達也