ノミアレルギー性皮膚炎

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ノミアレルギー性皮膚炎とは?

 ノミアレルギー性皮膚炎(のみあれるぎーせいひふえん)は、ノミの唾液成分に対するアレルギーによって、皮膚のかゆみや炎症などの症状が現れる病気です。好発性犬種や性差(オス、メスによる違い)はなく、ノミのみられる地域の犬では非常に多くみられる皮膚病です。動物病院で処方されるような薬剤によるきちんとしたノミ予防をしていなければ、夏場の皮膚病(痒み)の8割に関与しているという報告があるほどです。ただ、最近は暖房設備の普及によって、春〜秋だけでなく、冬にもノミの発生がみられるため、季節を問わず注意が必要です。
 特にアトピーの犬はノミに対してもアレルギーを持つことが多いと言われています。

ノミアレルギー性皮膚炎の原因

 ノミアレルギー性皮膚炎は、動物の体表上に寄生したノミの唾液や体の一部に対して、アレルギー反応を起こすことで発症します。
 ノミに何度も刺されたりすることで発症しやすくなりますが、特にアトピー体質や食事アレルギーを持つ場合は、ノミアレルギー性皮膚炎を生じやすい傾向があります。一度、アレルギーを発症したら、その多くが生涯にわたり、ノミに寄生されるたびにアレルギー性皮膚炎を生じるようになります。
 アレルギーの状態におちいった犬や猫は、たとえ1匹のノミに咬まれただけでもアレルギー性の皮膚炎を発症する可能性があります。したがって、徹底したノミ駆除対策が必要です。

ノミアレルギー性皮膚炎の症状

 6カ月齢以下で発症することはまれで、多くは3〜5歳で痒みがはじまります。痒みをともなう皮膚炎は、痂皮をかぶった丘疹(上にかさぶたのような皮をかぶった小さなふくらみで粟粒性皮膚炎とも呼ばれる)として,犬では尻尾の付け根から背中にかけて脱毛を伴った皮膚炎が多く見られますが、猫では頸部から背中全域に進行する粟粒性皮膚炎が多発します。
 激しい痒みのため、体を始終かきむしったり、かんだりして皮膚をさらに傷つけ、膿皮症を起こしたりすることがあります。また、一晩中眠れないくらいかゆみが強いこともあります。こうした症状が慢性化すると、脱毛や色素沈着、皮膚の肥厚が見られるようになります。
 ノミ寄生が重症の場合は皮膚病だけでなく、削痩(痩せたり)、貧血などを起こします。

ノミアレルギー性皮膚炎の診断/検査

 通常は特徴的な症状やノミ寄生、ノミ予防の有無などから仮診断し、診断的治療を行います。どしてもノミアレルギーであることを特定するにはアレルギー検査(特異的IgE)などを行う必要がりますが、外注検査でそれなりの費用がかかりますので、診断的治療を行っても効果が見られない場合はアレルゲン(アレルギーの原因)を特定するために考慮してもいいかもしれません。

ノミアレルギー性皮膚炎の治療

 基本はまず動物病院で処方されるようなきちんとした薬剤によりノミを駆除・予防することです。それと共に、痒みや皮膚炎に対しては痒み止めやステロイド剤などで治療します。二次感染がひどい場合は抗生物質なども必要になるでしょう。

ノミアレルギー性皮膚炎の予防

 ノミアレルギー性皮膚炎は、ノミの予防・駆除薬を定期的に投与することで、かなり予防することができます。また予防・駆除薬は、犬の体表にいるノミの成虫を退治するだけでなく、ノミの卵や孵化した幼虫、サナギにも効果のあるものを選ぶようにすると、周囲環境中の幼虫やサナギを減らすことができます。予防・駆除薬には月に1回など有効期間があるため、定期的に投与して効果が途切れないようにすることが大切です。ノミ予防に関して詳しくは、ノミ・ダニ予防(犬編)ノミ・ダニ予防(猫編)を参照してください。
 使用しているタオルやマットなどは、ノミの卵が付いている可能性があるため、沸騰した湯に入れてよく洗うようにしましょう。

ノミアレルギー性皮膚炎の看護/その他

 ノミは周囲環境中に卵を産みおとし、そこで幼虫がふ化してサナギになり、成長していくため、室内の卵や幼虫、サナギも駆除する必要があります。動物病院で処方されるようなノミ駆除には、幼虫やサナギの成長を阻害するものもあるので、これを投与しておくことも、周囲環境中の幼虫、サナギの駆除につながります。
 多頭飼育の場合は、同居している犬や猫にも寄生している可能性もあり、そこからノミがうつることもあるため、発症した犬と同時にノミの駆除&予防を行います。
 ノミアレルギーは人にも起こります。ノミの唾液に接触するとアレルギーにより、10分程度あるいは48時間前後で強いかゆみが生じます。
※犬や猫の体に、小さな黒い粒子が落ちている場合、それはノミの糞の場合があります。このような場合、その黒い粒子をティッシュに乗っけて、少し水を垂らします。ゴミなどなら変化はありませんが、もしも写真のように周囲が赤く滲むようであればノミの糞の可能性が高いです。なぜならノミは動物の血を吸うため、糞にも血の成分が含まれるからです。

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参考文献・資料等


<1>オーストラリア(クイーンズランド)の飼育犬におけるノミおよびノミアレルギー性皮膚炎の臨床症状消失に対する局所インドキサカルブ製剤の有効性に関するオープン自己対照研究
<2>臨床における病理学 ノミアレルギーと甲状腺機能低下症の併発
<3>実験的にノミを感染させた犬猫のノミアレルギ―性皮膚炎に対する治療および臨床徴候の抑制におけるセラメクチンの効果

この記事を書いた人

福山達也