急性腎不全(急性腎障害)

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急性腎不全(急性腎障害)とは?

 急性腎不全(きゅうせいじんふぜん)とは、腎臓機能の急激な低下によって発症し、腎臓が正常に働かなくなった状態です。ですから病気の名前というよりは症候群の名前です。
 この急性腎不全は急激に状態が進行し、数日で命を落とすこともあるので非常に注意しなければなりません
※急性腎不全と急性腎障害は厳密には定義が違うのですが、一般の方には分かりづらいでしょうから、ここでは同じ様に扱っていますのでご了承ください。

急性腎不全(急性腎障害)の原因

 急性腎不全になりやすい要因というのはさまざまなものが挙げられますが、主に、腎臓に対して毒性のある中毒性物質の摂取、腎臓での血液の流れが著しく低下すること、排尿ができなくなることなどで起こります。
 腎臓は心臓から全身へ送られる血液の約20%が送られるといわれています。ですから、血液中の中毒性物質が腎臓に集まりやすく、さらに腎臓でのろ過や再吸収の過程で高濃度な中毒性物質にさらされることとなります。腎毒性のある主な物質としては、ブドウやレーズン(ぶどう中毒)、ユリ(ユリ中毒)、不凍液(エチレングリコール中毒)、イブプロフェンやアセトアミノフェン(アセトアミノフェン中毒)などの消炎鎮痛剤、造影剤、農薬、除草剤、鉛などがあります。
 その他の原因としては、人と動物の共通感染症であるレプトスピラ症、敗血症、細菌性腎盂腎炎、免疫疾患、ショック、心臓病、熱中症、低体温、出血、輸血、尿道閉塞などの尿路閉塞、尿路結石(尿管結石、尿道結石)、腫瘍などなど様々なことにより起こります。
 但し、原因がはっきり特定できないこともあります。

急性腎不全(急性腎障害)の症状

 症状は、頻繁に嘔吐を繰り返したり、食欲不振元気消失、口内炎、下痢、高血圧ど、一見すると他の疾患でもみられるようなものです。
 また、初期には一時的に多飲多尿がみられることもありますが、症状が進むと逆に尿量が少なくなる、あるいは無尿と言って全くオシッコが出なくなります(まったくオシッコが出ないのは非常に危険な状態です)。さらに、進行すれば最終的に尿毒症とよばれる状態になり、本来腎臓から尿中に排出され、体外に出されるはずの老廃物が血液中に残ってしまいます。これらの老廃物は脳や神経などにも毒性があり、痙攣発作などの神経症状が現れることもあります。

急性腎不全(急性腎障害)の診断/検査

 問診、身体検査はもちろん、血液検査血液化学検査尿検査が必要です。また、腎臓の状態を見るために、レントゲン検査超音波検査などを行うこともあります。
 急性腎不全の場合、原因が分かればそれに越したことはありませんが、それよりも今現在の状態やこれからの治療を考える上での検査が主体になります。
 できれば合併症の発見のために、血圧測定も行うと良いでしょう。

IRIS急性腎障害グレード分類

グレード 血液Cre濃度
 グレードI  <1.6mg/dl
 グレードII  1.7〜2.5 mg/dl
 グレードIII  2.6〜5.0 mg/dl
 グレードIV  5.1〜10.0 mg/dl
 グレードV  >10.0 mg/dl

急性腎不全(急性腎障害)の治療

 急性腎不全は、短時間で命を落とすこともある状態で、直ちに治療が必要です。
 基本的には入院して集中的に治療する必要があります。状態にもよりますが、一般ん的には点滴(輸液療法)や利尿剤(マンニトール、フロセミド)の投与などが中心となり、その他、制吐剤(マロピタント)、胃液分泌抑制剤(ファモチジン、オメプラゾール)、胃粘膜保護剤(スクラルファート)で嘔吐などの症状を緩和する治療も行います。
 尿路閉塞なおでオシッコが出ない場合は、まず閉塞の原因を取り除きます。 そのため、必要なときには尿道カテーテルという細い管を尿道から膀胱内に入れたりします。
 また、急性腎不全では、ナトリウム、カリウムなどの電解質のバランスが崩れていたり、アシドーシスという血液中のpH(酸性度)が異常になっていたりすることが多くみられますので、これらの調整も行います。
 治療に反応しない場合(点滴などをしても尿が出ない場合)、救命するには透析治療が必要になりますが、設備や費用の問題から、大学病院などに限られ、どこの動物病院でも行えるわけではありません。

急性腎不全(急性腎障害)の予防

 予防方としては、腎毒性のある食物や植物、化学物質、薬などを誤って摂取しないようにすることです。特に散歩などのときの拾い食いには注意しましょう。
 原因のひとつである犬のレプトスピラ症ワクチン接種で予防できます。

急性腎不全(急性腎障害)の看護/その他

 猫での生存率は原因にもよりますが、約50%と報告されています。また、急性腎不全は腎臓機能が元通りに回復することもあれば、腎臓への障害が大きく慢性腎臓病[犬編猫編]へと移行(猫では、生存した半数)することもあります。
 中毒で腎障害が現れる量はそれぞれの動物で個人差があります。もしも疑わしい物質を誤食した可能性がある場合は、残存物(そのものや吐いたもの、パッケージなど)がある場合はそれを持参してください。診断治療の助けになることがあります。

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参考文献・資料等
  1. IRIS Grading of Acute Kidney Injury (AKI)
  2. 動物病院の輸液療法; 58-69:
  3. 猫の臨床Part1; 159-165:急性腎不全
  4. 犬の内科診療 Part1; 232-240:急性腎不全
  5. 伴侶動物治療指針 Vol.10; 135-146:急性腎障害の病態および治療
  6. 伴侶動物治療指針 Vol.10; 147-161:腎瘻チューブ・腹膜透析 ~急性腎障害への緊急対応~
  7. Hypertension, retinopathy, and acute kidney injury in dogs: A prospective study


<1>レーズンとブドウ: 犬を死に至らしめる可能性
<2>ネコの急性腎不全における連続性腎置換治療法の有効性
<3>4頭の犬に認められたレーズンまたはブドウの摂食に関連した急性腎不全
<4>犬、猫、フェレットのイブプロフェン中毒
<5>猫のユリ中毒の回顧的研究
<6>2013年から2015年の間にヒドロキシエチルデンプン130/0.4を用いて治療した犬における血清クレアチニン濃度と急性腎傷害(AKI)グレードの変化
<7>血液透析で治療された急性腎障害罹患犬における転帰予測のための臨床スコアリングシステムの検証
<8>ゲンタマイシン誘発性腎障害罹患犬における急性腎傷害、および急性腎傷害からの回復を検出するためのマーカーとしての尿中好中球ゲラチナーゼ関連リポカイン
<9>犬の急性腎傷害の実験モデルにおける犬膵特異的リパーゼ活性と、リパーゼ活性、およびトリプシン様免疫活性の評価
<10>ユリを誤食したことが判明している猫における消化管内汚染除去処置および静脈内輸液による利尿後の結果:25例(2001-2010)
<11>犬の急性腎傷害における糸球体濾過率、尿産生、電解質分画クリアランス、およびそれらと生存との関連性
<12>間欠的な血液透析により治療を行った、急性腎傷害の犬猫の長期的結果:135例(1997-2010)
<13>臨床における病理学 猫のエチレングリコール中毒
<14>猫における腎障害分子-1の特徴
<15>あなたの診断は何ですか? 犬において後腹膜の滲出液に関連した、エチレングリコール中毒に対する治療
<16>自然発生性腎疾患罹患犬における好中球ゼラチナーゼ関連リポカリン
<17>急性腎障害あるいは慢性腎疾患の犬における血漿および尿中好中球ゼラチナーゼ関連リポカイン(NGAL)
<18>犬の腎障害マーカーとしての好中球ゼラチナーゼ-関連性リポカインの評価
<19>犬の急性腎障害の尿中バイオマーカー
<20>猫における急性腎障害の回顧的研究と血液透析で管理される猫の転帰を予測する新規の臨床的スコアリングシステム
<21>臨床における病理学 急性尿細管変性および末期腎障害を伴う水腎症および骨盤腔内血液腎結石
<22>糸球体疾患が疑われる犬の診断的検査に対してコンセンサスの得られた推奨事項
<23>犬と猫の死亡の予測因子としての急性高窒素血症
<24>あなたの診断は何ですか? メラミンシアヌレートに関連した腎毒症
<25>腎不全の犬2頭におけるアルミニウム系リン吸着剤投与後のアルミニウム中毒
<26>急性腎傷害を血液透析で管理した犬の転帰を予測するための新規の臨床スコアリング法
<27>急性腎不全の犬猫における腎周囲滲出液
<28>猫のユリ(オニユリ)中毒による急性腎障害の解決
<30>急性腎後性高窒素血症:病因、臨床病理、そして病態生理学
<31>急性腎障害の猫における腹膜透析:22例(2001-2006)
<32>猫の急性腎性腎不全:32例(1997-2004)
<33>持続的腎代替療法
<34>急性腎不全の原因
<35>ブドウまたは干しぶどう摂取後に起きた犬の急性腎不全:犬43頭に関する回顧的評価(1992-2002)
<36>犬のプロトセカ症による尿路での徴候
<37>輸液療法を越える治療:急性腎不全の治療法
<38>猫におけるユリの腎毒性
<39>犬および猫の血液透析
<40>6頭の猫におけるユリの摂食によって引き起こされた急性腎不全

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この記事を書いた人

福山達也